第35回 女装ゲイ息子が母と語るカミングアウト(中編)

ブル ゲイじゃないかなーと思ったのは、自分が東京の大学行ってからだって言ってたけど、実家にいた頃は思わなかったんだ? オトコオンナとか呼ばれてたくらい、ナヨナヨした子だったのに~。

ユキ うーん。確かに男らしいほうだとは思ってなかったけど。こっちにいた頃ってさ、お母さんは(スナック仕事で)夜はいなかったし、あんまり話をすることってなかったやん。長いことケンカしてた時期もあったしね。

ブル えっ。自分にも反抗期あったんだ。積み木崩し!

ユキ 一時期、全く会話しなかったよ。それに、見るからにナヨッとしてて分かりやすい、まこと(同居人)やサセコちゃん(女装友達)みたいなタイプならともかく、そこまでのかんじやないやん。

ブル 二人に割と失礼よ…。

ユキ 優しくて大人しい子だとは思ってたけどね。だから、いじめられっ子にならへんかって小学生の時は心配やったもん。何度か引越ししとったし、母子家庭やしね。けど、ゲイとかは思ってなかった。

ブル 一人っ子だから、男らしい子との比較もしにくいしねぇ。

ユキ それにあんたさ、小学生の頃とかに学級写真を一緒に観て、「どの子が好きなのー」って言うと、「この子」ってちゃんと女の子を指してたよ。あれはわざと言ってたの?

ブル あー。小学生くらいの好き嫌いなんて、友だちに毛が生えたようなもんで、気が合う女子を指してたんだと思うよ。思春期以降の生々しい恋愛感情は全然違うから。

ユキ そういえば、中学生くらいになったら、「お母さん、僕が好きな子のこと、みんなブスって言うからもう教えない!」って言われたんだよね。今思えば、女の子が好きだってウソをつくのがイヤになってきたってことなんやろか。

ブル それはそういう感情もあったかもしれないね。でも、そもそも女の子を見る目線が、個性とかおもしろみとかに向かってたから、ウソも言ってないの。SPEEDでいったらヒトエちゃんが好きって言っちゃうもん。

ユキ それにさ、榊原郁恵ちゃんとか、あんたが子供の頃から好きっていう女はみんな胸が大きかったんやて。だから、むしろ性的な目線で見てるのかと思ったりしてたよ。

ブル 郁恵ちゃんて年がバレるわ……。まあそれもね、胸自体を気に入ってたわけじゃないと思う。その後、MEGUMIちゃんみたいな子とお仕事で仲良く話せるようになってつくづく思ったんだけど、セクシー売りだったりの、男目線を受けてる女たちって、逆にサバサバしてて、ゲイ好きするキャラが多いから。女を売りにする仕事を覚悟してやれてる子って、ブリブリしてる女よりも、性的なことに対して開き直りがあるんだよね。

ユキ 男前、みたいに言う性格なんやね。

ブル そうそう。それってゲイと仲良くなりやすい要素だと思うんだよ。ある意味、性的な偏見を受けている人だからこそ、ほかの性的な偏見にも理解があるタイプが多いというか。

ユキ そっかー。また、隠すためにわざと胸の大きい女を選んで好きって言ってたのかと思っちゃった。

ブル そこまで必死にカムフラージュしないよぉ。ところで、自分がゲイだって聞いて「ふーん」くらいに思ったってことは、一般的な話としても、同性愛ってものにはとくに嫌悪感とかはなかったんだ?

ユキ なかったね。お母さん、酔っ払うと、よく女の子とチューしたりしとったし。

ブル 高校時代に女子からラブレターもらってたとか言ってたっけ。

185_1

女子にもモテたとおっしゃるユキママの若い頃

ユキ ああ、年下の子からね。自分は本気にはならなかったけど。でも、全然、気持ち悪いとか思ったことないんだよね。

ブル じゃあ本質的にニュートラルな人だったんだ。でも、世の中には、気持ち悪いって言う人もいっぱいいるでしょ。

ユキ いっぱいいるよねぇ。とくに男には多いよね。だから、Uくんはエラいわと思って。(ブル注:Uさんは、25年近くユキママが付き合っている事実婚のお相手) お母さんが、あんたが出とるでってテレビ観るんなら、しゃあないで一緒に観るのは分かるけどね、こないだUくんが病院に入院しとる時に、今日あんたの出演があるんやよって伝えたら、夜一人で病室で観てたっていうから、本当に嫌悪感とかないんやなーと思ったよ。

ブル ありがたいねぇ。Uさん、イイ男!

ユキ 男の理解といえばさ、こないだ、お兄ちゃんとJちゃん(ユキママの兄の奥さん)とご飯食べてた時にさ、お兄ちゃんが「ヤスキは嫁さんとかどうなんや」っていうもんで、適当にごまかしとったんやって。そしたら、後からJちゃんから怒られたらしい。そんなこと、ユキさんに聞くもんやないって。お兄ちゃんが「Jに叱られたわー。悪かったねぇ」ってわざわざ電話くれてさ。

ブル なんで叱ってくれたの?

ユキ Jちゃんさ、テレビであんたを観てて、すぐに分かったらしいよ。

ブル えーッ! 化けっぷりにはバレない自信があったのに。Jおばさんには見抜かれてたんだ……。

ユキ 「化粧したユキさんにそっくりやったで、すぐ分かったわ」って言ってたよ。

ブル ギャハー! ってお母さん、女装メイク扱い。 でも、っていうことは、Jおばさんからおじさんに自動カミングアウトされたのかねぇ。

ユキ まあ全部を聞いたのか、息子が結婚していないことについてユキさんに聞くのはかわいそう、みたいに叱っただけなのか、どっちかはわからんけどね。

ブル 別に自分はいいんだけどね。

ユキ どうやろねぇ、あのおじちゃんは否定派かもしれんね。いわゆる普通のおじさんだからね。

ブル まあね、自分も年に1回も会わない親戚に、そこをわざわざ伝えて、もしその後ギクシャクするくらいだったら、言わなくてもなって思うんだよね。

ユキ そうやね。お母さんが逆の立場だったら、なんて返すべきかって気を遣わせるんじゃないかと思ってさ。下手に言えんわって。

ブル どっちでもいいよー。でも、自分がゲイだって事実を受け入れるつらさ、みたいな感情はホントにお母さん自身にはなかったわけね。

ユキ てかさぁ、ダメだと思っても、そんなものどうしようもないもんねぇ。

ブル まあそうなんだけどね。そのどうしようもなさを分かってくれる人ばかりじゃないんだよね。当事者の親御さんとかでも認めないって人はいっぱいいる。

ユキ そっちのほうが分からんわ。

ブル 自分の聞いた最悪な話だと、親がすごい厳しい人で、精神病院に治療に連れていかれたらしいよ。20年以上前の話だけど、男の裸を観て股間に反応があったら電気ショック流されるみたいな、とんでもない治療だったって。

ユキ そんなことする親も理解できんわ。子供の本質がそうなら仕方ないやんって思うやろ、普通は。違うんやろか。

ブル 自分は、お母さんがそう思ってくれる人で良かったけど、仕方ないと思わない人もいるんじゃないの。子供をこう育てたいって想いが強すぎる親からしたら、そこから外れられることってイヤでしょ。

ユキ それはあるさ、誰だって。

ブル 自分だって、ストレートで子供を作れる息子だったら、孫も見れてたわけじゃん。

ユキ まあねぇ。健康ランドに行くと、孫連れて来とる人たくさん観るから、「ああ、自分くらいの年になると孫がいるもんやな」とはチラッと思ったりするけど。

ブル それはちょっと寂しいの?

ユキ まあでも別に…深く寂しいとかは思わんよ。

ブル うちの猫たちの写真でも送っとけばいい?

ユキ そうそう。フフ。

ブル まあ、孫と交流できないかわりに、女装の友だちとか、自分の周りのおもしろい人たちを紹介していくよ。あ、周りの人といえば、ネンゴロ(ブルボンヌのマネージャー)のところも、すごく理解があるお母さんだったみたいでね。彼が20代後半くらいの時にカミングアウトしたら、第一声が「あんたの人生において、そんな大事な事柄を今まで言えなかったなんて、タイヘンだったろう」って逆に心配してくれたんだって。

ユキ へー、すごいねえ。お母さんはそこまでいい人じゃないよ!

ブル すごいよね。彼の、どこでも平気で手をつなげる伸び伸びしたとこは、自分も眩しかったんだけど、そういうお母さんだから、そういう子に育ったのもあるかも。虐待された子が、親になると子を虐待してしまったりなんて悲しい話も聞くけど、リベラルさみたいなものも、親子で連鎖するのかもね。

ユキ あたしはそんな立派にはなれんけどねぇ。

ブル 自分も思春期から、周りと違う自分についてそれなりに思うところはあったけど、根っこのところでそこまで卑下しなくてすんだのは、やっぱりお母さんにそういうものへのネガティブな感情がなかったおかげなのかな、なんて思うよ。逆に言えば、自分がゲイだったってことで、お母さんをあまり悩ませたことはなかったって聞けて、ホッとするしね。

ユキ うん。無い。無いけど、お母さんより長生きはしてくださいね。それは言っとくわ。

(後編に続く)

Top