第4回 1+1=3!?熟年♂♂カップルに聞いた、2人の愛を強くする方法

 

2人だけの愛の形。それは性別、年齢そして、肌の色も関係ない。1人の間に文化や性格の違いはあれど、1+1がプラスにもマイナスにも、いくらでも変えていけるのが愛。同性結婚と言うと目の玉をギョッとさせて驚く人もいれば、何てこともなく普通に受け入れてくれる人もいる。しかし周りを見渡してみると、ステレオタイプを覆す幸せの在り方を実践している人も少なくない。私の友人のオランダ人トマスとダンのカップルに代表される、オープンリレーションシップという愛の形である(お互いの合意の上での、肉体関係を含んだ自由恋愛)。

✩ある調査によると、ゲイの約4割がオープンリレーションを経験したことがあるとの結果も出ている。


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私が欧州ブラリ一人旅をしていた時に、アムスのコーヒーショップで知り合った彼ら。初めて吸うマリファナに咳き込みながら、慌ててカプチーノをがぶ飲みした寒い冬の日。そんな私を笑って背中をさすってくれたのが、トマス。日本でゲイやレズビアンが道端、もしくはカフェで知り合うことなんてほとんど皆無。と思いきや海の向こうでは、何気に話しかけた相手がお仲間だったなんてことは、意外とよくあるパターン。新宿二丁目のベローチェもしくはジョナサンで、ハッと気づいた熱視線。目と目でアイコンタクト、そして数十秒後は時間差で店内のトイレに消えていく……そんな不自然で卑猥な出会いでは勿論なくて。

 

還暦を迎えたトマスとダンと知り合ったばかりの頃、正直彼らと接するのを躊躇う自分がいた。日蘭の長い交易関係はあれど、戦後処理の問題で未だに歴史認識の相違が見られるからだ。差別、暴行、時々ゲイ狩り……色んなイタイを経験した私にとって、特に年配オランダ人の対日感情は心配の種。しかしそんなものはただの気苦労に過ぎず、結局はボディータッチが過ぎるトマスに手を焼きながらも、彼らのロールスロイスでオランダ観光を楽しんだりしたものだ。


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そんなお痛なトマスと、物静かなマリンバ奏者のダン(微妙な腕前)。彼らはもう40年以上も苦楽を共にしてきた、生粋のダッチゲイカップル。「法律的な証明書なんか、今更興味ないよ」と話す彼らは、ウチらのたかだか数年の結婚生活とは次元が違う。私達の結婚式にも出席した際は、ラテン全開のホセをえらく気にいって、ベタベタ触りまくる。私達にとって彼らは、いわばゲイ街道の大先輩。酸いも甘いも吸い尽くした彼らから学ぶべきは、非常に多い。

 

しかし厄介なのが彼らの性癖。性癖といえば語弊があるのだが、純潔乙女のホセには決して声を大にして言えないことがある。それは彼ら2人の潤滑オイルになるべきモノについて。よく結婚生活には忍耐が必要なんて言うけれど、セックスはそれ以上に大事なものかもしれない。長年連れ添った2人だからこそ、体よりも心で固く結ばれていくのは当然だが。

 

私がアムステルダム郊外にある彼らの豪邸に招かれた時、目の当たりにした秘め事。それは二人のラブリレーションは、常にトライアングルだということ。つまりは2人の関係を断固としたものにするが如く、他人とセックスを楽しむ訳だ。トマスが好みのゲイボーイをどこからか連れて来て、莫大な貯蓄で彼らにお小遣いを与える。20代の透き通る肌を持った東欧ボーイズだけをこよなく愛する彼ら。2人のベッドルームには一度限りの関係、数名のオキニ、はたまた不幸にも若くして亡くなったモデル顔負けのゲイ達のブロマイドが壁一面に飾られている(もちろん3人で、そして素っ裸)。

 

はにかんだ表情で笑う遠いウクライナ出身の不法移民ゲイ、力強くトマスに抱かれているのはお気に入りのロシアンゲイだという。「3Pだなんてただの変態プレイじゃない!」と思う人も少なくないだろう。でもそこにある3人だけのモノクロームの世界は、レンブラント顔負けの芸術作品であり、一流ファッション紙の一面のよう。これらの写真は行為の真っ最中の動画とともに、プロの写真家を雇って毎月取られるという。小金持ちのお金の使い方に疑問を抱きつつも、結局のところ3人目の誰かさんが2人の愛に影響を及ぼしていることは確かなようだ。

 

幸い私は東欧出身のイケメンではないので、彼らの眼中にはなかった。ただアジアから漂流した、奇妙なゲイボーイとしてアレコレお世話になっただけ。そしてある日、誰もが疑問に思うであろう、2人の嫉妬心について質問をしたことがある。だって永遠の愛を誓った相手が、他の男のものをしゃぶるなんて嫌でしょう……でも返ってきた答え、それは、

「いつも2人で若い子と楽しんでいる。愛し合っているからこそ、オープンリレーションは成り立つんだ」と……


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オープンリレーションを経験したことがない私にとって、正直想像しがたいことだった。でも2人の愛の根本が毎回毎回貞節さに依存する訳ではない。そこに揺るぎない信頼関係もしくは尊厳があるのなら、きっとオープンリレーションは格好のラブオイルになるのだろう。オープンリレーションという基本的概念の鎖を断ち切った時、もっと幸せになれるカップルが増えてくるのかもしれないな。妙に納得しながら、彼らの庭の池で優雅に泳ぐ白鳥の姿を眺めたりした。

 

きっと私が歩んで眺めてきた世界は、己の常識と勘違いによって作られたシャボン玉みたいなもの。一瞬で壊れてしまうようなエキセントリックで刺激的な価値観は、突如として我々の前に現れるから面白い。決して全てのカップルに推奨できる愛し方とは言えないかもしれない。でもだからといって否定するべき愛し方でもないだろう。

 

だけど決してこれらのくだりは、ホセには話せない。きっと彼ら2人の生き方、愛し方を理解できないだろうから。彼の目に映った2人の姿は、尊敬すべく、愛らしいゲイカップルの鏡だからだ。勿論ホセは知らない、そして教えない。


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トマスが私にこっそり、おニューの写真を送りつけてきたことを。ぎこちなく微笑む新入りは長身、長髪、そして黒髪の毎日どこかで見ているような面影の持ち主。そして短いショートメッセージにはこう記されていた。

 

いやあ、ラテンの男もいいものだ

 

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