第71号 同性パートナーシップや杉並区議や……私の取材ノート控え

 

 ●意外に関心が高かった「7.6%」
前回の記事「やっぱり気になる、「LGBTは7.6%」」は、意外に反響が大きくてびっくりしました。細かいアクセス分析とか私は見てなくて、反響はもっぱらサイトに表示されているフェイスブックの「シェア」などの数字に頼るばかりですが、けっこう大きな数字が出ています。ツイッターでも、フォロワー数の多い影響のある人がコメント入りで紹介してくれ、さらに広がったのかもしれません。

この「7.6%」という数字はインパクトもあり、それまで性的マイノリティに関心のなかった層にも関心を呼び起こす、ある種のちからをもっているのは確かでしょう。ただ、多くの人が思う「LとGとBとTの人の合計が7.6%」と数字が含意するものは、ビミョーに異なっているようです。そこに目をつぶって、「LGBTは7.6%」が一人歩きすることへ、多くの人が自分の実感とのずれを感じたり、代理店主導で事態が「ドンドン」進んでいくような気配に、「これでいいのかなあ」と心配を感じていたのかもしれません。
私自身も記事で触れたように、過去の自分の活動体験から、「社会にたいして多く見せる」戦略に傾きすぎることには懸念がありました。

たしかに数を見せる戦略は必要です。これから開催されるプライドパレードなどは、「アライ」(支援者)も含めて、あえて「数」になることも大事だと思います。署名活動などもその一つでしょう。ただ、今回のように、本来は趣旨の違う数字の一人歩きはあとで禍根のもとにならないか、と心配します。
また、いささか書生論めきますが、マイノリティの問題は、数が多ければ取り組むが、数がいなければ取り組まなくてもいいわけではない。数の多寡は本来関係ないはずです(余談ですが同様に、人材活用になるから取り組むというのも、「人材」として使えないなら取り組まなくていいのかと、首をかしげたくなります)。

メディア記事等でも、いつしかこの数字を紹介するのがお約束になっている感もありますが、その数字を入れなければ記事が成り立たないのかどうか、記者もそろそろ考えてみてもいいのではないでしょうか。

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 ●同性パートナーシップ保証、動き続く
三重県の伊賀市で4月から、宝塚市で6月から、そして沖縄の那覇市でも7月から、同性パートナーシップ公認制度が始まるようです。横浜市や千葉市などの名前も耳にします。
また、パナソニックが社内規定を改訂して、男女の事実婚や同性パートナーシップも婚姻と同様に扱うことを発表して大きな話題になりました(男女の事実婚への取り扱いがこれまでなかったらしいのも、ちょっと驚きですが)。
JALとANAが同性カップルのマイル共有可能のニュースも伝えられます。

どういう組み合わせをパートナーと見なすのか。人の思い込みは意外にしぶとく、男女の夫婦でも婚姻届を出さない関係を内縁と呼んで、長らく非正規なものと扱ってきました(明治20年代に戸籍が定着してからで、夫婦別姓同様、120年程度の歴史しかないのですが……)。
同性間については、想定さえされてきませんでした。
しかし、「私たちがバラと呼ぶものは、他のどんな名前で呼んでも、同じように甘く香るわ」(ロミオとジュリエット)ーー届けの有無、同性・異性にかかわらず、パートナーシップはパートナーシップです。

もちろん、2人間のパートナーシップだけを突出させて特定の位置を与えることに、「対幻想至上主義」「単身者の切り捨てだ」「抑圧的婚姻制度の再生産に性的マイノリティも加担するのか!?」などの批判は、これまでも根強く浴びせかけられてきました。
しかし、昨年来の社会の受け止め方を見ていると、同性パートナーシップを切り口に、性的マイノリティ全体の認知と人権擁護が進んでいるような気がします。評価が分かれると思いますが、いまや自民党サイドからも性的マイノリティ施策の必要性が語られる時代となりました。恋愛や婚姻は人類の多くが経験し、歴史も長い事象だけに、だれもが自分ごととして考えやすい面があり、性的マイノリティへの想像力もはたらかせやすいのかもしれません。

先日、アメリカでの同性婚合法化の中心を担ったエヴァン・ウォルフソン弁護士が来日し、講演会が各地で開かれました。そのうちアメリカ大使館での質疑応答の模様が動画で紹介されています。

 ウォルフソン弁護士は、同性婚運動(彼は婚姻の平等と言っていますが)のかげで他のさまざまな課題が見過ごされているのではないか、との問いかけにたいし、
「婚姻というテーマをもとにエネルギーや機運を高めて、勢いをつけることができた。同性愛者やトランスジェンダーについて社会が理解を高め、婚姻以外の分野についても進捗を遂げることができた。婚姻だけが重要ではないが、婚姻はエンジンになった」と答えていました(19分ごろから)。
米国で起こった流れを無批判に肯定するわけではないですが、婚姻以外の課題に取り組む人も、あえて婚姻に異を唱えるには及ばないのではないか、という気がしています。

また、自治体の同性パートナー証明も、意外に(?)トランスジェンダーの人にも申請されている模様ですーーカップルの一方がトランスで、「好きになる性」的には異性愛だが性別未変更などで見かけは同性カップル、などの例。トランスの人にもいわゆる“同性婚”が、「社会で認められた」感や自尊感情につながっているのも、興味深い事実ではないでしょうか。

 ●小林区議の質問が話題に
杉並区の小林区議の、議会質問が話題となっています。ネット等でいわゆる「炎上」しているほか、メディア等でも取り上げられていますが、小林区議自身は連絡がとれず、本人への取材もできない状態になっているとのことです。飲み屋談義ではないのだから、公の場所でした発言については、公職者としてきちんと最後まで責任をもってほしいものです。

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東京新聞2月23日

ネット等で批判の多くは、性的指向を個人的趣味といい、「地方自治体が現段階で性的嗜好(ママ)、すなわち個人的趣味の分野にまで多くの時間と予算を費やすことは、本当に必要なのでしょうか」というあたりに集中しているようです。
私もその点への批判は共有するので(東京新聞での上記特報記事に、その趣旨のコメントをしました)、すこし違う部分に触れてみたいと思います。

小林区議は、上記の発言の前段として、トランスジェンダーは医師の認定が必要である明らかな障害で、だからこそ性別変更などの法的な救済策が定められている、としています(その反対として、レズ・ゲイ・バイ(本人ママ)などには保護や予算が不要とします)。そして、この見解はトランスジェンダーである親友から影響を受けたものであることが、質問の後段からうかがえます。

性的マイノリティと一口にいっても人それぞれで、トランスジェンダーのなかには「自分たちは性同一性障害者であり保護や救済が必要。LGBTなどとなにもかも一緒くたにされることは迷惑」という意見の人がいることは私も知っています。
その一方で、おなじトランスジェンダーでも上川あや世田谷区議のように、同性パートナーシップ保障をはじめ、性的マイノリティ全体の視点で少数者の人権課題に取り組む人もいます。
性的マイノリティ内部での横の連帯と差異への知覚のバランスは、一人ひとりが考えなければならない問題でしょう。

と同時に、SOGI(性的指向sexual orientationと性自認gender identity)の視点でいえば、性別移行したうえで同性への性指向を有する人もいます。かんたんにTだけ別扱い、などと切り分けることはできないのが実際でしょう。また、性同一性障害については近年、脱病理化の動きも進んできているようですーー病気や障害として特別扱いする根拠そのものが失われようとしているわけです(SOGIについては本サイトでもまきむぅさんの記事、他サイトですがそのまえの拙稿などもご参照ください)。

地方自治体の議員として、身近な声を議会に届けるスタンスは悪いものではありませんが、たまたま自分の親友だというトランスジェンダー当事者ひとりの声だけを聞いて質問に臨んでいる点は、私には勉強不足もすぎると思われます。
他区の議員のなかには、ツイートなどを読むと、資料づくりや読みこみでたびたび徹夜していることが知れる勉強熱心な人もいます。小林区議の日常についてはよく知りませんが、高い歳費に見合うよう、(私は杉並区民ではありませんが)あらためて研鑽を期待したいと思います。

 

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