第144回 ブックレビュー『ルポ 同性カップルの子どもたち』〜子どもの幸せはだれが決める?

今月は、最近読んだLGBT関連の新刊の中でもとくにおすすめしたい、こちらの本をご紹介します。(今回の記事は増原裕子が担当します)
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アメリカで広がる同性親家庭の実態を丁寧に取材したこの本は、ニューヨーク在住の朝日新聞記者による、日常の中での同性カップルとその子どもたちとの触れ合いがきっかけで生まれました。著者の長男の親友には、2人のパパがいる。ごく身近な風景に同性親の存在がなじみつつあるニューヨークなどの都市部。この10年間で子どもを育てる米国の同性カップルは倍増し、その数は10万組以上にのぼるとされています。単純な比較はできないけれど、同性カップルが子どもを持つことについて、アメリカは日本の30年くらい先を行っているように感じます。
日本でもレズビアンカップルを中心に、子どもを持つことが人生の選択肢の一つに入りつつある昨今、「子どもを持ちたい」というのはそれほど珍しい話ではなくなってきました。しかし、「どうやって子どもをつくるのか?」「生まれた子と精子提供者の関わりはどうなるのか?」「社会の理解はあるのか?」など具体的な点については、まだまだ不透明なことが多く、不安を抱える当事者もたくさんいます。
そんな日本の読者に、子どもを持つ先輩ゲイカップル/レズビアンカップルの肉声を伝える本書は、タイムマシンで未来を覗きにきたような感覚を覚えさせます。精子・卵子提供、代理出産など生殖補助医療で子をもうける家族だけでなく、里子や養子など血縁にこだわらない家族。「親」が6人いる家族や、複数の家族の間を親や子どもが相互に行き来する形など、「拡大家族」も紹介されています。子どもがほしい日本の同性カップルにとって、今直面している悩みに対するヒントが多く散りばめられている良書です。
もちろん、理想ばかりが語られているわけではありません。 同性カップルの子どもが学校でロッカーを荒らされるいじめに遭ったり、同性親が保護者の間で浮いてしまうなどのケースについての言及もあります。同性婚が全州で認められたアメリカでも、社会の中に根強い偏見が残っている現実が浮かび上がります。こういう現実を知ると、やはり「同性カップルの子どもはかわいそうなのか……?」と、よく知らない人たちから聞かれがちな疑問が頭をよぎるのですが、本書では同性親家庭で育った子どもたちの生の声が伝えられていることによって、このような偏見が少しずつほぐれていきます。子どもたちの声は、何よりも力強いと感じました。
「父たちのことを誇りに思っている。見てください。まともに育っているでしょう?」
(生後8ヶ月でベトナムから養子に迎えられた、15歳のマヤの言葉。p163より引用)
ポジティブな面もネガティブな面も含めて、こういった子どもたちの声が蓄積されていくことがとても重要だとあらためて感じました。
子どもを持つことに関心があるLGBTのみならず、多様な家族のかたちの先進例について知りたい方には、この本は必読です。

 


《新刊お知らせ》
4/21に発売される私たちの新刊『女どうしで子どもを産むことにしました』(KADOKAWA、Amazon予約受付中)の、コミックエッセイ劇場での連載がスタートしました。現在プロローグがオンライン公開中で、今後も続々アップされる予定です! ぜひ覗いてみてくださいね。

 

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