第36回 女装ゲイ息子が母と語るカミングアウト(後編)

ブルボンヌ(以下、ブル) 自分は「ゲイ」ってことが大きく仕事に関わってる時点で、特殊な例なんだよね。自分自身じゃなく一般論として、LGBTが社会にカミングアウトすること、みたいなのを考えたり語ったりする機会も多いからさ。こうして親子の会話を、記事にしてしまうこともその一環なんだけど。

ユキママ(以下、ユキ) 難しい面もあるやろうね。あんたがいつもエッセイで書いとるように千差万別で、いろんなパターンがあるからさ。親に対する気持ちもみんな違うからね。性格とかいろんな環境にもよるし。

ブル 女装友達の某ちゃんなんかは、東北地方の堅い家だったりするから、一生、絶対に言えないって断言してたなー。

ユキ でも、そこまで決め付けるのもどうなんやろ。まあ、言いたくなかったら別にいいけど、本当は言えたらいいなと心のどこかで思ってるなら、言ってみるのも手じゃないの、とは思うけど。

ブル そうだねー。お母さんほど平気で受け止めてくれる親じゃないにしてもね。自分も、彼のその発言には、悲しい印象しか持たなかったんだよね。

ユキ 今はこんだけテレビとかでも、いろんな人がいるって見慣れてきてるんだから、たいがいの人は受け入れてくれるんじゃないの、と思うけどね。まあ、言う必要ない間柄だったら、いいんだろうけど、気持ちの中で言えたらいいのにって想いがあるのなら、そりゃ言えたほうがいいやん。

ブル うん。自分のその気持ちを認められる人なら、チャレンジする意味はあるよね。生涯言う必要はないって確信持ってるならともかく。

ユキ そういう人もいるやろ。

ブル うん、いっぱいいると思うよ。ただ難しいのは、カミングアウトに限らず、マイノリティって、自分自身の問題と本気で向き合うとしんどいことも多いから、本当は人一倍言って分かり合いたいのに、それを封じるように、これは言うべきではないことだって、必要以上に押さえ込んでる人もいそうなところだね。

ユキ そうだよね、自分で自分の本当の願いを分かってない面もあるかもね。

ブル とくにゲイが特徴的なのはさ、戸籍とか肌の色みたいなものへの差別は、ある意味物理的な証拠があるわけじゃない。だから、社会に対して取り組まないと仕方ない面があったけど、ゲイは自分の気持ち次第だから、自分が認めなければそんな証拠はないって言えちゃうよね。自分自身が、偏見を受ける少数派である事実を認めるのかどうかってのが試される。だから、セクシュアルマイノリティのパレードは「プライド」って言葉が重要だったんだろうな、と思うよ。

ユキ そうやね。

ブル 結局、「自分はゲイだ」って社会的に認められる人が増えないと、欧米みたいに社会が変わることにはなかなかつながっていかないんだろうね。

ユキ そういや、あんたこないだ、60過ぎて自分に目覚めた人の話してたもんね。

ブル そうそう! 男装ママやってるほうの新宿のお店に、63歳のお初のおじさまが来てさ。

ユキ アタシと同い年じゃん。

ブル ホントだ。 そのおじさま、最近、自分はほんとは女性なんじゃないかってことに気づいちゃったんだって。それでまずは、2丁目にあるNPO法人のコミュニティーセンター(aktaさん)に顔を出して、そこでお店情報仕入れて今度はバーに来てみたんだって。

ユキ その人って、今までの人生で男の人が好きやなとか思ったことはあったんやろか。

ブル 自分が男か女かと、好きなのが男か女かは別問題だけどね。好きな性について言えばさ、性欲も恋愛の情熱も、人によってすごく差があるでしょ。あんまり人を好きになったことないって言う人もいるじゃない。

ユキ うん。お母さんどっちかっていうと、そういうタイプ。

ブル クール~。 で、恋愛や性への欲求がもとから薄い人が、本質は「同性好き」だった時って、突き破るほどの衝動もないから、自分自身にも気づきにくいんじゃない?

ユキ ああそうか。どうもピンとこないけど、こんなもんかな、とか思っちゃうのか。

ブル 結婚相手のことを激しく求めてるかんじじゃないけど、子供はかわいいし、生活は穏やかに送れたって人は、昔はけっこういたんじゃないかな。

ユキ まあ夫婦ってそんなんが多いかもね。最初はともかく、数年もしたら淡々と暮らす人も多いし。そこは一緒のことやね。

ブル ちなみにそのおじさまはね、2ヶ月くらい後に、今度は自分が女装ママ営業してるほうの店に来てくれたんだよね。はじめは気づかなかったけど、上品な女装さんになってたの! 最初に会った時にもたまたま同席してたネンゴロ(マネージャー)なんか、彼の堂々とした変化に感動して涙ぐんじゃってたよ。63歳で、そんな風に目覚める人生もあるんだよね。他人はそれを滑稽だとか不幸だって言うかもしれないけど、いろんな人間見てる仕事の自分からしても、なんか明るくていい表情されてたよ。

ユキ 同じ年といえば、お母さんのね、小中学校と一緒やった同級生が、最近、別の友だち経由で聞いたら、今はボストンに住んでるんだって。その子、中学生の頃からなよーんとして、ちょっと色白で、そうやないかなーと思ってたような子やったの。

ブル ああ、自分の子供時代みたいなキャラね。

ユキ 「ボストンで元気にしてるの? 結婚したんやろか」って聞いたら、「パートナーと一緒やって言っとったぞ」って言うんやて。友だちは何も知らないおじさんだから気づいてなさそうだったけど、結婚はしてないらしくて、「パートナー」と一緒ってことは、やっぱあの子もそうやったんやーって思ったわ。

ブル そ、そこまで読み取れるように…。でも、お母さんの同級生世代で、今ボストンでパートナーと一緒って先進的な人だったんだねー。

ユキ 仲良かったあの子もそうやったんやーって。それ聞いて会いたくなったわ。

ブル ボストン行ってみれば? 今回、オバマ再選の勝利演説で「ゲイでもストレートでも」なんて言ったくらいだし、アメリカは変わってきてるね。

ユキ それって、そんだけ表立ってそういう人がでてきて、数が多いからそういう人らを敵にまわせんってのがあるってことやろ?

ブル そうだね。政治家さんは当然、票田としても擦り寄るべきか見てるだろうね。

ユキ 海外は、そういう人たちが団結して投票活動するってイメージもありそうやもんね。

ブル 日本はまだ、LGBT層への理解をアピールしたほうがおいしいと思う政治家は少ないけどね。そういう行動を求める日本人の当事者も少ないし。

ユキ 日本人の性格やで仕方ないわ。控えめっていうかね。

ブル まあでも、少しずつは変わってきてると思うよ。自分の仕事もNHK Eテレの福祉番組とか、社会貢献を讃えるLGBTアワードとか増えてるくらいだし。

ユキ いいんじゃないの。いろんな人が分かってもらえる機会が増えるということは。

ブル 同性のパートナーが保障される法律みたいな動きがあったら、それはどう思う?

ユキ それもいいんじゃないの? 本人たちがそうしたいんなら。今ってめんどくさいでしょ? いろんな手続きするのに。ただの同居人ではダメ、とか、そういうこといっぱいあるやん。

ブル 生命保険的なものもね。緊急時の面会権とか。

ユキ お母さんとUくんも結婚はしてないからめんどくさいことも多いよ。まあ、自分らは男女だから「事実婚です」って言えば、病院とかでも分かってくれることは多いけどね。

ブル それが男同士となると、当然難しいんだよね。昔付き合ってた子が集中治療室に入った時は、文字盤使って自分を呼んだのに、親族じゃないからって入れてもらえなかったよ。たまたま彼は実家にカミングアウトしてたから、親御さんから直々に頼んでくれて、ようやく見舞いに通えるようになったことがあった。

ユキ そうやね。お役所絡みとかはとくにめんどくさそうだね。

ブル 細かい問題は山積みだね。 それにしても、なんか、お母さんがあまりに理解があるから、このインタビューすんなりいきすぎだね。

ユキ そう? でも、それしか言いようがないし。

ブル もちろん、葛藤があったってドラマチックにウソ語ってくれとは言わないけどねぇ。あらためて、自分のカミングアウト、好意的に受け止めてくれてありがとう。

ユキ うん、もちろん、すごい良かったと思う。だって言ってくれなかったら、こんな風にいろんな話をする間柄にならんまま死んでったと思うよ。

ブル これからもよろしくお願いします!

(終)

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2005年、タイでのカミングアウトを終えた翌日。

以上、長々とお付き合いいただきありがとうございました~。

カミングアウトについて、赤の他人、同僚、友達、親、と対象ごとに自分なりの考えを書いてきたシリーズは、これで一段落です。

2012年末にうまいこと終わって、良かった良かった。

カミングアウト、ねぇ。

まあ、アタシほど自分大好きで、アタシほどゲイまみれな仕事してきて、アタシほどお仲間だらけのコミュニティで生きてきて、アタシほど理解ある母に恵まれたオカマですら、

34歳になるまで、親に言えなかった。
ってのが物語ってると思います。

多くの人にとって、カミングアウトは簡単じゃないのよね。

何度も言うけど、やらなきゃやんなくていいのー。
責任なんて他人はとれないものなんだから。

ただアタシ自身はずっと、隠してる自分がかっこ悪いと思ってたんですよ。

締め切り守らなかったり、ひどいこと言ったり、シモがゆるすぎたり、
40過ぎても直ってないダメなところはいーっぱいあるけど、

同性が好きなことは直したいダメなところじゃないし、何も悪くないって分かってた。

なのに、「悪い」と思ってる世間の一部の目を気にして、自分の信じる正しさを引っ込めてしまうのは、

クラスの中で起きてるいじめに気づかないふりをする卑小な心と似たようなものだもの。

だから、アタシ側は言えて良かった。

そしてお母さんには、
母一人子一人の自分が、オカマの女装パフォーマーになっちゃったせいで、
分かりやすい親孝行の一つの、孫の顔を見せることができないってことを、少し申し訳なく思ってます。

でも、枝をつなげなかった分、かわいい花を咲かせて見せますよ。

いろんな深い話も正直にできるようになったし、
自分の周りのステキな人たちを紹介できるようにもなった。
それは、カミングアウトできたからです。

お母さん、生んでくれてありがとう。

お母さんがくれたこのちょっと珍しい人生、最後まで味わっていくよ。

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