第42回 純菜食主義者なセフレとオーガニック・コンドーム

 

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知り合ったばかりのセフレくんとまったりしていると、あっという間に夕食の時間になった。セックスをする間柄だけど友情もなくはない微妙な人間関係は独特だ。だから、初めてお互いが食べる瞬間を目撃するのも結構大事だったりする。さっきまでいろんなものがお互いの口に入ってたのに、その同じ口がこれから消化器として機能する。今から一緒にご飯を食べるのかと思うとセックスよりずっと緊張する。乳首に生えた白いパイ毛から経験豊富なケツの穴まで見られた後なのに不思議だ。ピザを頼むことになって、使い込んだマックブックでトッピングを選びながら、セフレくんはボソッとカミングアウトした。

「僕、ビーガンなんだけど……どうする?」

ビーガンとは純菜食主義者のことだ。ベジタリアンの友達なら周りにいっぱいいるが、ビーガンはなかなか珍しい。ベジタリアンはチーズやアイスクリームといった乳製品や卵を食べる人もいるが、ビーガンとなれば動物由来のものは一切口にしない。話を聞けば彼はかなり本格的なビーガンで、食べ物だけではなく、他のことでも常にビーガンを心がけている。革靴とウールセーターを着ていた自分はその場でアウトだ。白砂糖などの一見動物由来じゃないものも製造工程で動物製品が使われていることがあって、本格派ビーガンはブラウンシュガーを使ったりする。何より驚いたのが、多くのコンドームも動物製品でプロセスされていて、彼はわざわざオーガニックストアでビーガンのコンドームを買っているという。

セフレがビーガンであることと、セックスに何の関係があるかなんて思う人もいるかもしれないが、これがなかなか厄介だ。相手の価値観を尊敬して、彼と会う時はできるだけ動物製品を身に付けないように気をつけるし、どこかに遊びに行くとなれば事前にビーガン食品を提供しているレストランも調べておくようになった。革製のムチはゴムのムチになって、コンドームもローションもビーガンになった。セックスの最中に万が一ゲップした時のために、彼と会う前は肉食を控えた。ビーガンの彼女と婚約した友達がいるが、その彼女と過ごす間は自分もできるだけビーガンに徹しているという。決して簡単なことではないが、愛する人のためならそれでも構わないらしい。

「なんでビーガンなのか理解できない!」

そうやって切り捨てるのも個人の自由かもしれない。ただ、人間と人間の考え方や表現の仕方の違いに気付いて、歩み寄る努力をするのはステキなことだ。少し面倒臭くても、思いやりは大事な姿勢である。自分自身を曲げてまで相手に合わせる必要はないが、相手が信じることに賛同するくらいのことなら悪いことではない。

「お肉とチーズのピザとビーガンのピザを半々でオーダーしても大丈夫だよ?」

そんなセフレくんのオファーを有り難く断って、その夜は野菜とビーガンチーズたっぷりなピザを楽しんだ。

 

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