第7回 代理母出産合法案に向けて揺れる乙女ゲイ心

 

時間の流れが遅くて、穏やかで……基本仕事がなくても、まあそこまで絶望はしない国で生活していると、時々いたたまれなくなる時がある。お金、仕事だけが人生のプライオリティーでない事にハッとする日もあれば、何も変わらない毎日に絶望したりもする。変わらない愛情に平凡な幸せだけど、何かが足りないような。きっとその何かは、やりがいのある仕事でも、豪華客船クルーズでもない。もっと人間の本質、本能に関わる欲求なのだ。

 

私の伴侶ホセ・ダヴィッドは超がつく程の母性の持ち主。三十路を過ぎて若さが武器ではなくなった今、彼の周りはベビーラッシュで湧いている。一人っ子として育った彼にとって、子どもに囲まれた生活はまさに理想郷であり夢でもある。家にはベビーベッド、ガラガラ、哺乳瓶そして名前リストまで制作済み……私達のちっぽけな居城には小さな天使を向かい入れる準備は万端だ。私自身、特別子どもを欲しいと思ったことはないけれど、子どもを切望する旦那を見る度に、不思議と子どもに振り回される賑やかな家庭も素敵だなと思ってしまう。


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しかしここはスペイン。いかに我々ゲイやレズビアンの幸せが法的拘束力によって保証されていたとしても、代理母という手段での子作りは違法である。代理母、この3文字も日本において随分普及してきた昨今、LGBTの間でも賛否両論を呼んできた。お金を出して赤の他人の子宮を借りること、その倫理観と母体に与える危険性……挙げれば挙げる程、そのあり方には疑問符がついてしまう。しかし実際は不妊治療の末に子どもを望む夫婦、そして子どもを持てない同性カップルの希望の星であることには変わりない。

 

現在アメリカを中心に行われている代理母出産で、子どもに恵まれるゲイカップルは非常に限定的だ。大きな壁となるのが、莫大な費用の問題である。私達のような庶民が代理母出産に、大枚を叩くのは正直簡単なことではない。以前はタイやインドなどで費用を抑えた代理母出産プログラムが行われていたのをご存知であろうか? しかしダウン症児の受け入れ拒否や、日本人同胞によるいささか理解できぬタイでの代理母出産などの倫理的問題が重なり、これらの国で子どもを持つことは不可能になった。数年前まではゲイ、ストレートに関わらず代理出産ができた南米メキシコまでも、既に外国人向け代理母出産を禁じている。

 

スペイン国内のカップルも以前タイやメキシコのタバスコ州で代理母出産に望んだ末に、法律相違が原因で出国トラブルなどが続出。今現在欧州圏内にはロシアやウクライナ、グルジアなどの国でしか、合法的な商業的代理出産は認められていない(しかし同性愛カップルの代理母出産は禁じられている)。その為私達のような子どもを切望する同性カップルにとっては、スペイン国内での代理母出産を合法化させることが一番の理想なのだ(現在ギリシャで代理母出産が合法のようだが、現段階では異性間カップルに限られるので選択肢からは除外)。

 

スペインにおいてもシングル、異性・同性間カップルを問わずして、多くの人が自国での代理母出産を望んでいるのが事実。しかし99%がカソリックのこの国で多くの異論が出るのも理解できる。今までも幾度となく代理母出産支援グループがいくつもの政党と掛け合い交渉を続けてきたが、毎回不発に終わっていた。しかしつい先日無政府状態のこの国はマドリード議会で、代理母出産合法に向けた可否が投票された。今回の動きはスペイン第四の中道右派政党であるシウダダノスが先人を切って先導してきたものだ(党首のアルベルト・リベーラが若くて超イケメン!額の後退が気になるけどさ)。


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ikimedia Commonsより、photo By,Carlos Delgado)

ちなみにセニョール・リベーラは2006年の選挙ポスターで、ギャランドゥな裸体を晒した選挙ポスターで話題を呼びました。

「なんでアルベルトは今スッポンポンにならないのよ!」←35を過ぎた成熟した色気ムンムンの身体を拝見したいのは、まあみんな同じですよね。

第一政党である国民党の理解を仰ぎ可決される見込みであったが、シウダダノス最大のライバルであるポデモス政党(通称クソモス)の土壇場でのNO投票のせいで、2票差で否決されたのでした。しかし今回の動きはテレビや新聞を通じて決して小さくはない評判を呼び、世間に対し切実な声を届ける足がかりとなった。近い将来シウダダノスが国会で新たに代理母出産に関する法案の可否を実現させると表明しているので、期待を持って次回の投票に願いをかけることにしよう。頼むよ、リベラッチ!(←ふてぶてしい)。

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Wikimedia Commonsより、photo By,Asqueladd)

破竹の勢いゲス街道まっしぐらのポデモス政党(クソモス)の党首パブロ・イグレシアス(名前はイケメン風)は政策、容姿についてイケメンリベーラに比べられるのにうんざり……

 

現在スペインにおいて同性カップル間でも、養子縁組は可能である。しかしそのステップは日本と同様に収入や、持ち家の有無など非常に厳格な審査が待っている。いわゆる子なしカップルがこの制度を利用しウクライナ、アフリカもしくは中国系の子どもを育てることはよく見られる光景だ。しかし自分の遺伝子を持った子どもを代理母出産で育てることは、この国でも上流家庭のリッチピーポーのみに許された特権なのだ(スペインの法律上、スペイン国籍を付与できるのは現在アメリカのみ)。

 

時代は流れどまだまだ我々ゲイカップルが子どもを育み、幸せな家庭を築くことは時期早尚なのであろうか? 時々ホセが悲しそうに子ども服売り場を彷徨って、涙を流す時がある。そんな時は「うさぎがいるからいいじゃん」と励ますが、いちいち日本語で「うさぎは赤ちゃんじゃない!」と反論してくる。まあその通りなんだけど、いくら私達がコウノトリに祈っても子どもは届けてくれないし。


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いつか訪れる(かもしれない)エンジェル達の姿を夢見ること、それは果たして罪深きことなのであろうか……でも。だけど女性の身体はレンタル孵卵器じゃない。結局良心の呵責にうなされながら、今日もうさぎと戯れて一日を終えていく。

 

今日の一言 スペインでは今だにクレヨンしんちゃんが大人気です。面白いよねあれ。

 

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