第10回 貴族と過ごした一夏のアヴァンチュール

 

ハッテン場じゃない、だけど小説のネタになるような素敵な出会いでも勿論ない。私達ゲイが愛する誰かもしくはセフレと知り合う為には、やはり出会い系と呼ばれるサイバー的環境が必須になってくる。例えば野犬に襲われた時、颯爽と助けてくれるイケメンヒーローがたまたま通りかかり、一瞬で二人恋に落ちたのならばどんなに素晴らしいことだろう。しかし残念ながら私に寄ってくるのは詐欺師、盗人そして白タクくらいしかいなかった。(泣)

 

前置きはさておいて、私は色んな性の嗜好の中でも白人専門の外専だと認識している。これは私なりの偏った偏見にしか過ぎないが、金髪・碧眼・長身・透き通る白い肌そして頭の切れ味、この5か条を満たす男こそが至高の存在であり理想の彼氏像なのだ(私の旦那は黒髪・黒目・長身・ラテン・そしてセーラームーンオタクである)。どうしてだろう? アジア人しか愛せなかった私が、こうまで白人男にこだわるその理由は……きっとそれは諸外国で受けた激しすぎる人種差別に起因するものだろう。もし私が北米や北欧など外国人や移民に比較的寛容、なおかつ民度がそれなりに高い環境にいたのなら、また理想の男性像も違っていたのかもしれないが。

 

すっかり平和と安定の日々に胡坐をかく日々を送る私だが、たまにスカイプでメッセージが送られてくる一人のゲイ友がいる。今更スカイプなんてと思われる方もいるだろうが、海外居住者にとっては何かと便利な機能満載なのだ。そのゲイ友の名前は確かアレキサンダー(老化現象なのだろうか、あまり人の名前が覚えられない)。名前もイケメンチックだが、それはもうどこぞのハリウッド俳優なのかと思う位の極上のルックスの持ち主なのだ。


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まず第一にレモンイエローになびく金髪、そしてペールグリーンの瞳に身長185センチのモデル体型の彼は、ベラルーシ屈指の国立大学に通う秀才でもある。こうも完璧な肉体と知性を併せ持つ人間を目前にすると、しばし生きる気力というものを無くしてしまいそうになる。以前紹介したGayRomeoと言う出会い系サイトで知り合った私達は、スカイプにてチャットを楽しむ仲になった。

 

当時はまだ初彼と出会う前のフリーな身分であった為、ルームメイトに気を遣いながらも秘密の内緒話しを楽しむ日々を過ごした。彼が住むのはミンスク中心部にある大学寮、私の大学と寮が位置するは中心部から約1時間の距離。毎日の復習で頭が回らない劣等生の私はイケメンゲイボーイに熱中しながらも、やっぱり会うのが怖くて逢瀬を躊躇っていた(恋愛に依存するタイプは全く留学に向かないことをいたく痛感)。

 

そんな折、突然彼が私の住んでいる寮を訪ねる大事件が勃発する。彼は一輪のバラの花を持参し、初対面でキョドる私を抱き寄せた。私はこのような白人男性のロマンチズムが大好物だ。ルームメイトがいないことを厳重に確認しつつ、私達は唇を重ねそして一つになった。早すぎる展開に少々困惑しつつも、まあ半年近くスカイプonlyだし相手はヤリたい盛りだから、まあいっか。

 

その後私達は夜のミンスクの街に繰り出すことになる。決して車道側は歩かせない、そして野犬が近寄いてきても素早く追い払う男らしさ、出来る紳士たる振る舞いに私はほとほと感心。私のことをプリンセスと呼ぶ彼は、出来すぎた昼メロドラマの主人公のようであり、そして全てが洗練されていた。それもそのはず彼の祖先はリトアニア大公国の貴族だからだ。ロウソクの灯りが怪しく揺らめくお洒落なバーでなんとなしに発言した彼に、王室マニアの私はここぞとばかりに喰らいつく。

 

現在彼の家系はベラルーシ、ブルガリア、リトアニアにウクライナに点在しており、彼の血筋は某名門貴族の傍系らしい(ほんとかよ!?)。こんな家柄のいいご子息が汚い大学寮で黙々とマリファナを蒸し勉学に励んでいるのかと思うと、なんだか萌えてくる。なにはともあれ私達はミンスクのナイトクラブでとりあえずイチャイチャに励んだ。

 

私はそれからというもの、どうも勉強に身が入らず、TOP3をキープしていた成績は急降下。恋愛に溺れる自分を認識しながらも、彼にズブズブとハマる黄色人種はとても滑稽であった。ズバリ結果から言うと私は振られてしまうのだが、何故かすんなり受け入れることができた。決して彼の蛋白で機械的な腰の動きが原因という訳ではなく、あまりに不釣り合いな二人の距離感を理解できていたからだ。

 

まあ早い話し彼はオリエンタルゲイにある種の物珍しさを感じ、私は彼の血筋とミステリアスな瞳に惹かれただけだった。恋愛とは、愛することとはなんぞや? そんな基本を知らずに、普通の恋愛をすっ飛ばしコミュニュケーションに障害が残る外国人と恋に落ちる。社会経験も恋愛経験も未熟過ぎた27歳の短い夏は、しばしの優雅な思い出と共にあっけなく過ぎていった。そう、儚い夢がシャボン玉みたいに消えゆくように。


 

彼から届いた近況報告のメール(相変わらず文法がめちゃくちゃ)。

 

《意訳》

「やあ元気? 僕は彼氏ができたよ。今はイギリスでマーケティング関係の仕事をしているんだ。君は相変わらずスターバックスが好きなの?」

 

そうだよアレックス、私は今もスターバックスが大好きです(住んでる街にスタバないけど)。でも君はきっとスタバじゃなくて、アフターヌーンティーとスコーンが似合う紳士になってゆくんだね。

きっと私達のたどたどしい英語はそのまま上達することはないかもしれないけれど、同じ夕日を眺めて夢を語りあったこともあったけど……だけももうキミは私の届かない世界の扉をノックしているみたいだ。少しだけ寂しい気もするけれど、でも頑張れ! 本場気取りのイギリス野郎に、キミの高潔な血筋(元)を見せつけてやってくれ。


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そして最後に思い出をありがとう。

 

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