第45回 体臭とセックスとフェロモンの香り

 

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きしむベッドの上で優しさを持ちよって抱きしめあえば、相手の体臭に気付くことがある。こんなに距離が近いと半ば強制的に嗅がされる。汗のニオイだったり、髪の毛のニオイだったり、口や股間のニオイだったりと、人間は様々な体臭を全身から発している。見たくないものは目を閉じれば済むが、臭覚は思い通りにシャットダウンできない。もちろん、体臭が必ずしも悪臭だというわけではない。

マルチカルチャーなトロントでセックスに励んでいると、人種とニオイにまつわる噂をよく耳にする。インド人はカレーのニオイがする。中国人や日本人は醤油のニオイがする。白人は肉のニオイがする。それが単なる人種差別的なステレオタイプだと最初は思っていたが、いざ違う人種の人とセックスをしてみると確かにニオイが違うことに気付いた。日本にいた頃は日本人としかセックスした経験がなかったから、ニオイの違いなんて気にしたこともなかった。シャワー浴びた後もほんのりとスパイスの香りがするインド人のデート相手を抱きしめながら、自分は醤油のニオイがするんだろうかと考えてしまった。

今の彼氏とは交際してもうすぐ5年になる。付き合い始めたばかりの頃、彼からはいつもニンニクのニオイが漂っていた。ニンニクをたっぷり使った料理をよく作っていたのだろう。きっとそれで衣服にもニオイが移ったのかもしれない。相手の気持ちを傷つけてたくなかったから指摘はしなかった。ニンニク好きの自分にとって別に気に障ることでもなかった。ところが、ある日その彼氏からこんなことを言われた。

「キャシー、青ネギ臭いよ」

生まれて初めて青ネギ臭いと言われてショックだった。そして、よりによってなぜ青ネギなのか不思議だった。ただ一つ確かなのは青ネギ臭がフェロモンではないことだ。そんなお互いのニオイも月日が経つにつれて姿を隠した。同じ物を食べているからニオイが似てきたのかもしれないし、引っ越した家のキッチンとクローゼットが離れているからかもしれない。何より、お互いのニオイに慣れたから気付かなくなったのだろう。

オープンリレーションシップになって、数年ぶりに彼氏以外の男性とセックスをしたら予想外のところで躓いた。相手は同い年で、イギリス人とドイツ人のハーフだった。なかなかタイプで、セックスの好みもマッチしていたが、彼のニオイが気になって仕方がない。別に臭かったわけではない。慣れないニオイに戸惑っただけだ。いつもの彼氏のニオイに慣れていたから、他の人のニオイにビックリしたのだろう。友達の家に行って、自分の家と違うニオイに気付くのと近い感覚かもしれない。おかげでまったくセックスに集中できなかった。

人間のフェロモンを感じ取る器官は既に退化をしたという説もあるが、間違いなくニオイはセックスの一部だ。ニオイでより刺激的なセックスになる場合もあれば、台無しになる場合もある。汚れた下着に値札が付くくらいに臭いフェチ人口は多いのだろう。官能的なセックスを楽しみたいなら、臭覚は大切な感覚の一つである。好奇心を忘れずにクンクン嗅いでみよう。

「フェロモンを溢れさせて異性をムラムラさせよう!」

最近はこんな広告をたくさん目にするが、果たして本当にそこまで効果があるのかはわからない。しかし、彼氏の胸元に顔を埋めていると不思議とリラックスする。これも彼のニオイのおかげなのかもしれない。そして、彼は自分を抱きしめながら青ネギ臭いと感じているのだろうか。怖くて聞けない。

 

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