第11回 Sushiから始まる甘い未来の行く末は…

最近とても多忙だ。とは言っても、毎日うさぎを追い回して遊んだり、パソコンの画面と睨めっこをしている訳ではない。こんな新鮮で緊張と恐怖に揺れる毎日を送るのは久しぶりのことだ。時に神は試練を与えると言うが、きっと乗り切れない試練はそうそう訪れない。前置きはさておき、私は30を過ぎて今更感満載の日本食レストランで期間限定で働き始めた。(勿論頼まれて、である)

日本人だから魚を裁くのが上手くて、寿司が上手に作れる。と勝手に判断されて「2週間だけ手伝わないか?」と声をかけられたのだが、切り身しか買ったことがない、寿司が食べたければ寿司屋に行く典型的日本人なわけなので……店に多大な迷惑を掛けながら、熊系スペイン人×2に魚と寿司の手ほどきを受ける日々を送っている。(いち早く辞めたいのが本音だ)

なんだかよくわからないが、寿司は外国においてセレブリティーに愛される一品らしい。全く前後の脈略がないようなスタートだが、今回は寿司で思い出した、懐かしい思い出話しでもしようかと思う。

さて、例えば20代といえば大学を出て社会に飛び込み、社会の一員として馬車馬のように働く。そして仕事帰りに同僚と飲み明かし、休日は趣味もしくは恋人との時間を過ごしたり……これがきっと普通の、いや王道と呼べる20代の生活観なのであろう。しかし私の場合は二丁目でボーイをした後、よくわからない後進国に留学してしまった為、そんなあるべき20代を送れずにいた。

お金も頭脳もパッとしないアジア人が欧州の片隅で肩身の狭い思いをしていると、どうしても出不精になってしまうこともある。しかし自らのゲイという嗜好が、遥かな未来へのドアに繋がる場合も少なからずあるのだ。見慣れないアジア人が欧州ゲイシーンにポツンといるだけで、それが好奇の目で見られる(レイプされる、拉致られるEtc)もしくは滅茶苦茶チヤホヤされる、大きく分けてその二択に別れる。

何度も何度も申し訳ないが、やはり出会いの場所となるのは道端もしくはお洒落なカフェテリアではなくて、欲望と肉欲が渦巻く出会い系サイトなのである。いつもならここでGayRomeoの登場になる訳だが、今回はGaydarと言う英国発祥の出会い系の登場だ。イマイチパッとしない感があるし、GayRomeoに比べるとサービスなり使いやすさも微妙なのが第一印象だった。

そこで男漁りをしていた時に声がかかったのが、フランス在住のリッチな大学教授F氏である。ニースという南フランスの海岸沿いの街に住む彼は、大学で薬学を教える現役教授。私が受講していたコースが理系で薬学関連であった為意気投合、そして夏休みには彼の超豪邸で豪遊という典型的なSugar DaddyとBabyの例と言えよう。世の中の金持ちというのは性格の悪いケチもしくは超ナイスの2パターンに分かれるが、彼の場合は勿論後者だ。

フードをすっぽり被ったいかにも怪しい東洋人を甲斐甲斐しくも迎え入れ、地元でも美味しいと有名の寿司でもてなしてくれる。そんな小さな心使いが何よりも心地良く、そして魚の味というよりは人情の味を堪能した寿司であった。地中海を見下ろす大邸宅と眩しく光る太陽、黒人女性のメイドの手作りタルトが食卓に並び、サロンには大きなアクアリウムから海水魚が覗く。

趣味の映写機のコレクションを眺めながら、私は彼の私生活を垣間見ようとする。人それぞれの人生模様、それはゲイでもノンケでも決して同じ形、色にはなりえない彫刻作品のようなもの。例えば茨の人生に見えても、それが必ずしも不幸であるとは限らない。金持ちで物欲をいつもで満たせる生活を送ることが、最高の幸せとは限らない。私はそんな人それぞれの人生を観劇することが大好きな性悪なゲイだ。

彼の場合、いとも簡単に想像がつく素晴らしい学位に経歴、そして2度の離婚歴。1度目は40も年下のパーティーアニマルな女子大生、2度目は結婚後にレズビアンに目覚めたモデルだったそうな。×2を経験し男としてのプライドが傷ついた彼は、奇しくも元妻と同じ運命を共にするかの如く男にハマっていったのである。

過去の妻達との思い出は消去し、新たな人生の伴侶は求めずに苦学生(ゲイ限定)のSugar Daddyとして、若くて可愛い宝石の原石達の面倒を見ているようだ。ニース大学で経済を学ぶベトナム人学生に、パリ大学のナイジェリア人学生……その多くはインテリジェンスでありながら、性的魅力を開花させた20代の若者達だ。彼は世間体を気にするが故、一定の距離感を置きながら彼らの学業と生活をサポートしている。

ちなみに私もそんな彼の甘い蜜を吸いながら、学業を遂行した情けない貧乏学生の1人でもある。モナコのセントロに事務所を置く彼の口癖は「毎年モナコ王室の王女からプレゼントが送られてくる」だ。その人脈は限りなく、彼はまさに苦学生(ゲイ限定)の未来を占うコンパスなのだ。それはまさに運命のルーレットの如く、彼のおメガネに叶った幸運極まりないゲイボーイ達だけに与えられた特権といえようか。

しかし私はまさか想像もしていなかったし、想像もできなかったこと。それは彼の手の平の人脈という大きな世界から外れたイベリアの田舎町でラテン人(セーラームーンオタク)と結婚し、何故か突然寿司を握らねばならなくなったこと(2週間だけの予定)。何度も申し訳ないが、日本人だから寿司が上手く握れる訳でも、魚を捌ける訳でもない。だがそんな間違った偏見の中で偶然に転がってきた機転……きっとその先にはSugar  Daddyすらも予期できぬ人脈の坩堝や未来が待っているのかもしれない。

いいや、そうでも思わなければ寿司など握っていられないのだ!そして今日も深夜25時、近所のバルで熱いラテンの血を引く同僚達と、ビールと少量のマリファナで長い1日を終えていく。ちなみに気になるであろう給与は、1時間あたり5ユーロである。(安すぎだろ、ボケ!←心の声)

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