第46回 完璧な人よりどこか欠けた人が好きだ

 

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遠い昔の話、理想に描いていた人と出会った。少し年上の落ち着いたお兄さんみたいな人で、ルックスも良くて、身長も高くて、頭も良くて、大手企業でバリバリ仕事していた。まだ大学を卒業したばかりの自分からすればとても眩しく見えた。フラれるのを覚悟してデートに誘ってみると驚いたことにオッケーをもらえた。憧れの人とこうやってロマンチックな時間を過ごせるなんて思ってもみなくて、その日がやってくるまでなかなか眠れなかった。

待ち合わせ場所に現れた彼を見て心がとろけた。仕事帰りでスーツを着ていた彼はいつもより大人でとてもセクシーだった。これは最高のデートになると確信した。しかし、彼との時間はビックリするくらいしっくりこなかった。別に彼に欠点があったわけではない。話をすればするほど、自分の理想の中の完璧な彼氏像と目の前の彼が重なった。それが逆に違和感となってデートに集中できなかった。

今の時代、私たちは完璧を求める社会に生きている。ソーシャルメディアが発達してネット上で完璧な自分のイメージを演出するのが当たり前となった。フォトショップのおかげで写真は修正できて、ポップソングの歌声もオートチューンで編集される。野菜や果物は見た目優先のために農薬まみれだ。どんなに欠点があろうと、完璧にパッケージされた表面を見ただけではわからない。そんな完璧に見えるものばかりに囲まれていれば、自然と周りに完璧を期待してしまう。

その理想のデート相手もそんな風に見えたのかもしれない。本当に欠点がないのか、それとも欠点を見せてくれなかったのかはわからないが、その完璧すぎた彼を知る隙間はなかった。やっとの思いでこんなに理想に近い人と出会えたのに、全然ときめかないことが不思議だった。きっと心の中で何かが違うとわかっていたのだろう。数回デートを重ねても違和感は消えなかったが、彼との関係は自然と消滅した。とんでもないチャンスを逃したと当時は後悔もした。ずっと理想の中のファンタジーを追いかけてきたが、それは自分が本当に求めていたものではないことに気付くまで長い時間がかかった。

映画やドラマを見ていればわかるが、人気のあるキャラクターに完璧な人はいない。人気があればあるほど、大きな欠点もあるのだ。欠点を抱えたキャラクターが物語を通してどうやってその欠点を克服し、いかに障害を乗り越えるのかを見て、観客は感情移入をする。そんなキャラクターに惹かれる人が多いのは私たちが完璧ではないからなのだろう。だからこそ、その葛藤がリアルに心に響くのかもしれない。何より、最初から完璧なキャラクターの物語なんて山も谷もなくてきっと退屈だ。

その理想のデート相手はステキな彼氏を見つけて先日婚約までした。彼の幸せそうな写真を見て、もしもあの時に違う道を歩んでいたらと考えることがある。あきらめが悪いのは昔からだ。隣で豪快にオナラをする隣の今の彼氏を見て、深いため息をついてみる。理想の彼氏像からは遠いかもしれない。欠点も数え切れないくらいあるかもしれない。しかし、お互いに欠けているから、こうしてピッタリはまるのかもしれない。こっちも負けないくらい強烈なオナラをすると、隣から深いため息が聞こえた。

 

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