第13回 ブスに真珠、乱交に咲く恋心

 

ネットの恩恵を通して知り合ったスペイン人の夫と出会い結婚して早3年、時の流れは遅いようでやっぱり早い。二人の関係は何も変わらずだけれども、新たな家族にウサギ2羽を迎えてみたり、旦那が自分の店を始めてみたり……二人の間に少しずつ、何らかの変化が湿潤してきているそんな気がする毎日だ。

 

しかしだ、あまりに平凡な生活に安心しきっていると、眠れぬ夜はコーヒー片手に色んな物思いに耽る癖がどうにも抜けないのだ。二丁目の公園にいたブラジル人、ロンドンの敏腕美術ディーラー、トルコで車に拉致られレイプされたこと……etc。そして忘れたくても忘れられない最低最悪2人のストーカー。今となれば全てが私という人生の通過点であり、そして何らかの訓えを問うてくれた出来事に感じてくるから不思議だ。

 

私と出会った人間からすれば、私程気の触れたゲイはいない! とまではいかないが、奇妙なゲイだと思われたことは数知れず。だが私もそれ以上にキ○ガイの域をいくゲイ達をワンサカ見てきた。今回のコラムは、そんな常軌を逸脱したゲイ白書の1ページをご紹介しようと思う。

 

ハプスブルグ家の栄華と美しいドナウ川が訪れる者を魅了する、ハンガリーの首都ブダペスト。昨今はアジア人留学生が大挙して押し寄せている為、日本人を含め東洋人を見かけることも多くなった。しかし私がまだブダペストに滞在していた頃、それはそれはアジア人が少なく、街を歩くだけで背中に痛い視線を感じたものだ。

 

ここブダペストには多くの歴史ある温泉が点在し、中でも”キラーイ温泉”はオスマントルコの時代まで遡る歴史と伝統に湧く温泉だ。そしてキラーイ温泉の別名はゲイの湯。つまりサクッと性欲処理ができちゃう(勿論それは違法なのだが)、なんとも艶かしくそして色欲が漂う温泉としてゲイの間でモテはやされている。

 

ゲイの私にとっては、試さないわけがないだろう? とそそくさと入場料を払って温泉に浸かる。が、私好みのパツキンガイは皆無でシワクチャの老人ばかり。ここは下町の公衆浴場なのか? なんやかんや粘ってみると彫りの深い50代と思しき紳士が、ネイティブな英語で話しかけてくる。ピーターと名乗った彼は地元の教育関係者だそうだ。そして彼の後ろにはまるで従者のように寄り添う、小太りの不細工な男が付きまとう。こんなことを言うのも酷だが、道化師のような彼はまるでボンレスハム。アンパンマンのようにパンパンに膨らんだ頬、だらしなく締まりのない唇……彼はピーターが経営する小学校のお茶くみ(?)や配達係として働いているという。(こんなのにお茶を汲まれたくないけれど)

 

勿論、彼らがキラーイを訪れたその理由は男漁りなわけで、また好奇心の尾びれに火がついた私は二人の網を手繰り寄せてみる。そして判明したのがキラーイ温泉で目星をつけた上玉の若者を数十ユーロで釣り、乱交パーティーに参加させるのだそう。そしておこずかいを与えるのが、そのエド・シーランに似た従者の彼の役目。地元の小学校しか出ていない、父親を幼く亡くし、現在は病弱の母と祖母と生活保護を受けながら生活する彼が乱交の費用を捻出することがまずおかしい。

 

ピーターは乱交専用のヤリ部屋をブダ地区のオシャレエリアに所有しており、毎週末は秘密のパーティーで盛り上がっているという……私も刺激的な甘い誘惑を20ユーロ程でどうかね? と提案されたのだが、丁重にお断りしたのは言うまでもない。

 

「何事も経験! お金の問題じゃないし、ブダペストで乱交するチャンスなんてそうそう転がってないよ」こんな悪魔の囁きが聞こえてこない訳ではなかったが、やっぱり気持ち悪い。地元有識者でもある教育者があんな玩具にこんな玩具を駆使しながら、アナルを掘る。そして脇にはニヤリと妖しい笑みを浮かべながらエドが佇む……そんな光景を想像すると、美しいはずのブダペストの町並みも神々しい歴史すらも、どこか色褪せて見えてしまった。

 

結局ハンガリー滞在中、最後の日までSMSでお誘いのメールを受けた。ふと道端で二人と鉢合わせした時も、卑猥なマジャール語を教え込もうとするエドと見掛け倒しの淫乱紳士のミスマッチさに思わず笑みが溢れたものだ。私が思うに、どうもエドには精神的な疾患があるのではないかと睨んでいる。亭主関白の妻の如く、一歩手前をピッタリと歩く彼の焦点が合わない目線の先……自身の将来像を見据えてはいないのは明白だが、そこにはハッキリと恋焦がれた乙女の眼差しがあった。

 

障害者の性。そんな言葉をしばしば目にすることも多い昨今。それはノンケだけでなくゲイの世界にも共通すること。幸いエドの場合はちょっと頭のネジがズレているだけで(多分78本)日々の仕事に性生活には不便はない(お茶くみしかできないのかもしれないが)。しかし雀の涙程の彼の収入が、全てピーターの為の乱交費用に搾取されていると思うと、いたたまれない気持ちにもなる。

 

きっとエドの切なく卑猥な恋心は実らない。だけどピーターはエドを見捨てたりはできないはずだ。確かな確証なんかないけれど、たぶんそう。これって腐れ縁それとも金魚の糞? まあ、どっちでもいいや!

 

別れ際にいたずら心満載で、エドが私のカバンにそっと忍ばせたアナルパール。彼には申し訳ないけれど、気持ちだけ頂いて帰りの空港で捨てた。今でも美しいはずのブダペストを思い浮かべると、ドナウの真珠ではなく、使い込んだであろうアナルパールの艶めきが真っ先に脳裏に浮かぶ。こんな小汚い思い出も、きっと未来に繋がっていくのかな。(いやいや、それはないか……)

 

P.S.

ポルトガルにおける代理母出産の是非は、商業的ではなく尚且つ先天的な欠陥等で子どもを出産できない女性に限り合法になりました。LGBTカップルにとっての吉報にはなりえませんでしたが、これが南欧の代理母出産の第一歩になっていくことを願うばかり。

 

Top