第8回 トランスジェンダー「鈴木ゆま」という人物。(前編)

 

今年、3月の出演したmusicalPUBで「鈴木ゆま」という女性と出会った。
彼女のことは10年前から知っている。出会いは劇団。俺の一期先輩。
でも、その時は「男性」だった。
当時、彼女のことを「ゲイ」だと思っていた。でも今は綺麗な女性だ。
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【プロフィール】
慶應義塾大学卒業。劇団四季にて俳優を経てダンサー・振付家に。現在はトランスジェンダーとして六本木にあるショーパブ「金魚」で踊っている。
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俺はゲイで彼女はトランスジェンダー。彼女の10年前の心境と今の心境を聞いてきました。

青木:劇団時代、可愛らしい男性だったので勝手にゆまさんの事、ゲイだと思ってました。自身がトランスジェンダーだと気付き始めたのはいつ頃なんですか

ゆま:最初はゲイだったの。青木君と同じだったの。でも結構、複雑で中学生になるまでは自分が女の子だと思ってた。自分がお母さんになると思ってたの。結婚して子供産んでって。小学高学年から中学生にかけてお父さんとお風呂に入って自分の体がお父さんと同じなのに気付いて……。自分は「男」なんだという違和感でしかなかったのね。よくいつからって聞かれるけど、男から女へというよりも最初から中身は「女」だった。子供の頃の遊びっておままごとだったのね。お母さん役してたの。青木君は子供の頃の遊びってなんだった?
青木:地元が山に囲まれてたんで、山で秘密基地作って遊んだり。高速道路の排水路に入り込んで探検隊ごっこ的なのをしてましたね

ゆま:その違いなんだよね! 私家庭が厳しいのもあって大学行って就職しなさいって言われ続けてきたから男性的要素を押し付けられる事が多かったし、社会的にそうしないといけないと思ってたから劇団でも大学でも「男の子の役」を担うんだと思ってたの。劇団の頃にニューハーフショーとかを見に行く機会はあったけどまだダメだな、そこには行けないなって気持ちだった。だから自分は生まれ持った身体で、その身体の性を生きないといけないと思ってた。だからその時は「ゲイ」だった(と思っていた)。自分が女にはなれないから男として男の人を好きになって男の人からも自分を受け入れてもらえばいいかなと思ってたの。

青木:女の子とし生きたかったけど、男性としてゲイになるしかなかった。ってことですか?

ゆま:ゲイで納得しようと思ってたの。 嫌だったけど。可愛い男の子でいれればいいやって思ってたのもある。 でもゲイに可愛い男の子ってあまりモテないじゃん?

青木:そうですかね? 俺は好きですけど。(笑)
ゆま:そうなの? でもなんかしっくりくる相手と出会えなかった。
青木:ゲイだと。お互い男を求めるからですかね?
ゆま:そうそう。男を私に求められても答えられないのが辛かったし。相手も私の女性的な部分を出されると困ってた。ゲイってガッチリ系が好きな人が多いでしょ?
青木:全てがそうではないと思うけど、確かにそういう人が多いかも。でも、俺は結構可愛い系が好きなんですよね。
ゆま:えーそうなの? タチネコどっち?

青木:タチですかね? ネコもいけなくもないかな? わからないけど。(笑)

ゆま:えー。今彼氏いるの?

青木:今はいないです。
ゆま:いないんだ。へー。青木君は可愛い系が好きなんだね。私がゲイの時に出会ってればよかったね!! 正直、劇団の時、私のことどう思ってた?
青木:可愛かったですよ。
ゆま:イケた?
青木:イケ……なくはなかった。
ゆま:何その残飯処理みたいな言い方(笑)。だからね、ガッチリした人と付き合った事もあったから私もそうならなきゃってヒゲ描いたりしてたもん。
青木:そこまでしてたんですか? 可愛い。(笑)
ゆまだけどなかなか上手くいかなくて、なんでだろうなと思ってた。 20代の頃、オープンリーゲイの子と付き合ってて、街中でも手を繋いで歩いてくれたし、会社でも俺の彼氏って紹介してくれる人だった。でも何か違ったの。それで30代になってから出会った人が自分を女の子として扱ってくれる人だったのね。女性ってこんな風に愛されるんだってそこにしっくりきちゃって。それから彼を喜ばせる為にお化粧をしてみたり、ちょっと可愛い服を着てみようとか。それ以降、女性ぽい服装を着るようになったかな。 その後にストレートの男性を好きになって。でも最終的に「女の子」じゃないと好きになれないって言われて……。そんな辛い思いをするんだったら女性になろう、性転換しようと思ったの。 でも今までの出会い、経験、すべてに感謝してる。女性として生きようと決断できたから。
青木:色んな出会い、経験がきっかけで本来の自分の姿になろうと決意出来たんですね。
ゆま:Facebookで出会った人がいたの、その彼と1ヶ月くらいメッセージし合ってたの、女の子として。その時に男女の関係だと男性はこんなに優しい言葉をかけてくれるんだって思った。彼とは会ってはないんだけど密な1ヶ月だったな。そして彼と会うことになって。でも、嘘をついているようで嫌だったから正直に話そうと思って「実は男の子とし生まれてきたんだけど、心は女の子なの」って言ったんだ。それから連絡が来なくなっちゃって……。でも理解してもらいたくてメッセージ送ってたのね。その一週間くらい後に彼からメッセージが来て「別に会ってもいいけど。俺の為に何してくれる?」だったの。なんかお金とかじゃないけど貢げってことかな? って思った。でも会えばわかってもらえると思ってたから、3回くらいデートした。 でも彼は女の子が好きなんだよね。気持ちだけじゃダメなんだと思った。最近も私フラれちゃってさ。彼は私がニューハーフなのは受け入れてくれてて、その上ですごいタイプって言ってくれてた。でも急に連絡がなくなってどうしたの? って連絡したの。そしたら6年付き合った彼女と寄りを戻そうと思ってるんだ。って。今の生活も考えたんだけど、結局結婚もできないし、子供も作ることもできないし、考えちゃったんだよねって言われたんだ……。女の子になったばっかりなのにこの問題をこんな早い段階で突きつけられるんだっと思って。トランスジェンダーの人っていずれこの問題にぶち当たるんだなーって。
青木:男性が女性になるのはそういった面では難しいですよね。女性が男性になる場合は、相手に子供を作ってもらうことが可能ですもんね。
ゆま:FtM(女性が男性になった人)の人のこと?
青木:はい。パートナーに対して、精子を提供してもらえば、子供を作ることも可能ではありますよね?
ゆま:そうだね。
青木:知り合いで女性から男性になった人がいるんです、彼は戸籍も変えて結婚もされたんですけど、やっぱり両親に反対されるのは子供の問題だったって言ってましたね。

ゆま:MtFでも代理母を見つけて、兄弟になったり親戚を作ったりすることは可能だけど、そこまでして子供を作るべきかって考えちゃうよね。

青木:子供を作るとなると2000万くらいかかるんでしょ? 金持ちじゃないとできないですよね。 あとは養子を探すか。

ゆま:でも、私は現時点では子供を育てる自信がない。お母さんってすごいなと思うの。子供を産んで子供を一人前に育てるって大変だもん。すごいなと思う。私は今まで先生とかやってきたから教える、育てるってことに対してだけは満たされてるのかもしれない。でもね、男の人に子供を作りたいって別れを切り出されても受け入れられちゃうんだ。だって、子供を育てるっていうのは素晴らしいことだから。

青木:そうですよね。でも俺は自分の子供は欲しいな。話題はかわりますが、ホルモン注射を打ち始めてどうですか?

ゆま:注射始めて、体の変化がすごくて。胸が膨らんだりとか肌質、髪質が変わったりとか、肉つきが変わったり、見た目がすごく変わって。その変化で自分の中でやっと心の中にあった自分になれたなと思った。だから穏やかになったね。男性から受け入れてもらえるようになったし。あとは仕事だよね。アイドルにダンスを教えてたんだけど全部やめた。子供たちにカミングアウトするところまで言ってなくて。だんだん身体が変わってくるじゃん? 先生は男なのか女のか小学生に教えるって微妙だなと思って。そういったことで気を使わせるのが嫌だったし。生徒が大人だったら気にしなくて良かったかもしれないけど。

青木:子供への影響を考えると気を使っちゃいますよね。
ゆま:私の中で心が引けちゃって辞めちゃったんだよね。
青木:見た目的に仕事を探すのが難しいですか?
ゆま:トランスジェンダーって女性でありたいから。でも社会は男は髪を短くしろだからね。髪を伸ばしたくても伸ばせないし。
青木:理解ある職場を探すしかないってことですよね?
ゆま:そうそう。だからその時は割り切ってゲイとし働いてた。私も色々アルバイトもして。飲食店もやったし、塾の教師もやった。そういうことがあったから女性になりたくてもなれなかったのもある。
青木:仕事が理由で踏み切れない人は多いってことですかね?
のゆま:そう思う。社会の受け皿とか認識がね。テレビとかエンターテイメントの世界では広まってるけど。じゃ実際一般社会でどう受け入れているか。受け入れられますか? ってことになると遠くの火事はいいけど、近くの火事は困ると一緒でさ。小さいコミニティレベルでの認識、受け皿ができてない。
青木:男性から女性に変わっていく上で問題点ってありましたか?

ゆま:先生から言われたんだけど、最初の3年間が社会と適合するのが大変だって言われた。トイレもどっちに入ろうとか。私は去年の夏くらいに女子トイレに入るようになった。面白かったのがね、私の見た目で男子トイレに入ってね。「なんで男子トイレに女がいるの?」って嫌な思いをさせるのと、自分が女子トイレに入って男なんだけどバレたらどうしようっていう怖さを天秤にかけたら、女子トイレは自分の気持ちだけど男子トイレは相手の気持ちなんだと思って。じゃ相手の気持ちを優先さえようと思ったの。自分が女だから女子トイレに入りたいとかではなくて男性への配慮から自分は女子トイレに入った方がいいんだと思った。でも今は、基本多目的トイレを使うよね。 タイとかはねトイレは三種類あるの。

青木:三種類?

ゆま:そう。女と男とそれ以外か。 gleeでもさ、ゲイのカートとトランスジェンダーの女の子がトイレに入れない。精神的にトイレに入れなくてずっと我慢してて。新たにトイレを作ってもらったっていう回もあるぐらい。アメリカでもそれが問題になってるよね。

青木俺もカミングアウトしてから更衣室とかトイレとか気を使うようになりましたね。

ゆま:そうだよね。何において男と女で分けるのかだよね? セクシャリティだと。見た目とか? 性的指向とか? でも性的指向でトイレや更衣室に行く訳じゃないもんね。難しいよね。

青木:トイレをセクシャリティで分けたらキリないですよね?

ゆま:今、セクシャリティの分類? って山ほどあるんでしょ? セクシャリティって白黒じゃなくてグラデーションなんだなって私は思うの。色んな色があっていいと思う。判断基準は性的趣向とか葛藤度合い色々あると思うけど、二分化しなければいいんじゃないかな?
青木:確かに。でもトランスジェンダーって金八先生で取り上げられて、それから特集とかドキメンタリーとか作られて。それを見て知識を得た人多かったですよね。その影響力ってすごいですよね、法律も変わったし。でも性別を変えられてもその後のケアがされてないってことですかね?
ゆま:そうだよね。法律、整備されてるかもしれないけど。じゃ実際、社会に出て企業が受け入れてくれるか?偏見はあるかもしれないよね。ブラジルとかってすごいんだよ。その性的適合手術のお金とか全部出してくれるんだよ。国がそれは一つの障害だと認定して。手術させてくれるんだって。

青木:日本はそんな制度ないですよね?

ゆま:ないない。それにMtF(男性から女性になった人)の人の自殺率ってすごい高いんだって。

青木:そもそもLGBTの自殺率って高いって聞きます。

ゆま:だよね。手術しても心が満たされないとか、手術したけどやっぱり身体を元に戻したいとか。私が関係するアートの世界ってさー。グレーなことを歓迎されるけど、一般ではグレーは変な目で見られるところがあるでしょ?私はこういう業界ですごいありがたいと思う。芸が助けるというか。一般社会で働いてる人は本当に大変だと思う。 今、私は六本木金魚でダンサーしてるからいいけど。この仕事を失ったらどうしようと思う。それが怖い。

青木:俺も役者やってて救われてるかもしれないです。この業界自体、理解は深いですよね。でも役者以外にホテルでバイトしてるんですけど、土地柄、ゲイカップルがダブルルームに泊まったり、色んな事件も起こるんですけど。そういうことがあると「あいつらモーホー? 気持ち悪い」とか言う人がいて……。あなたの隣にもいますけど? って言ってやりたかったけどね(笑)。でもカミングアウトしてから誰も俺の前ではゲイネタ喋る人いなくなりました(笑)俺の前では話さないようにしてるんだろうけど……。一般社会では差別的な事を言う人普通にいる。だから正直に生きられない環境のところの方が多いかもしれませんね。
ゆま:そもそも今回のこの対談の趣旨ってなんだったの?
青木:少数派と言われるLGBTでもLとかGとかBとかTってわからないことが多い。同じLGBTでも理解し合えないこともあるから。色々聞いてみたいなって思ったんですよね。
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(後編に続く)

 

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