第47回 恋愛のために自分を変える必要があるのか

 

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「どうすれば良い恋愛ができるんだろう?」

パーティの席でほろ酔いになった頃、近くに座っていた二人が面白そうな話題で盛り上がっていた。カクテルに入ったブラックベリーをストローで弄ぶ若い男の子は、ため息を交えながら失恋したばかりだと話していた。それを隣で聞いていた年上の男性は真剣な表情でポテトチップスを口に詰めていた。片手にビール、もう片手にサングリアを持っていた自分は空気を読まずに彼らの会話を聞いていた。だって、赤裸々な恋愛話は酒のつまみにちょうどいいじゃない。

その若い男の子は10代の頃から付き合っていた彼氏と別れたばかりだった。同棲して、結婚の話まで出ていたのに、冷めてしまった恋は再び燃え上ることはなかった。彼曰く、破局の直接的な原因は意見の相違らしい。例えば、彼は皿洗いをつい後回しにしていたが、綺麗好きの元彼にそれをいつも注意されていた。小さなことから大事なことまで同意できない。そうやって対立する度にとてもストレスが溜まったそうだ。さっそく次の恋愛を探し始めたものの、今度は自分を変える必要がない人としか付き合わないとその男の子は宣言した。

ポテトチップスを食べる手を止めた年上の人は経験豊富そうな口調で語り出した。長年付き合っているパートナーと出会った当初、意見の違いで対立することはほとんどなかったという。相手に好かれたいがためにどっちも猫を被っていたのかもしれない。しかし、お互いのことをもっと理解するにつれて、相違点もどんどん表面化した。気の合うカップルだと思っていたのに、実は真逆な二人だと判明した。だからといってそれが原因で破局を考えたことはないらしい。どんな違いだって受け入れるべきだというのが彼の恋愛論である。

そんなジューシーな話を聞いていたら、いつの間にかビールもサングリアも飲み干してしまった。自分自身がしてきた恋愛を振り返れば、どちらの話にも一理あると思えた。あまりに価値観の違う人には初デートでさよならを言ったこともある。今の彼氏と恋愛関係が維持できているのは二人の間にある共通点のおかげだろう。それでも、この恋愛のために妥協した部分もないわけではない。それはきっと彼氏も同じだ。二人とも何かを手放した上で今この場所に立っているのに、不思議なことに自分を曲げざるをえなかったと感じたことはほとんどない。

視点を変えてみれば、それは恋愛のための妥協ではなく、恋愛に影響されて自然と自分が変わっていったからなのかもしれない。完璧主義だった性格は適当な彼氏のおかげで多少は柔軟になった。考える前に行動してしまう猪突猛進な性格は慎重過ぎる彼氏と良いバランスを取れるようになった。せっかちの自分とまったりな彼氏は歩くスピードをお互いに合わせるようになった。恋人という存在が鏡になってくれたおかげで、より自分自身を知ることができた。だから、変化していくことを自然に受け入れることができたのだろう。

「自分を変える必要のある恋愛をするんじゃなくて、自分の価値観が変わるような恋愛をすれば良いんじゃない?」

酔った勢いに任せてそんな名言が口から飛び出したが、それに続く言葉は何も出てこなかった。どうしたらそんな恋愛ができるのか。それが果たして良い恋愛なのか。自分でさえわかったようでわからなかった。ただ一つ確かなことがあるとすれば、酔っ払いに会話を乗っ取られた目の前の二人がドン引きしていたことだ。

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