第49回 SMプレイを嗜む変態たちから学んだ大事なこと

 

5ad29e0a1c53ec95efee4ebf6b8fe742

昔から超変態だと自負しているが、今までほとんどバニラなセックスしかしたことがない。日本語だとバニラセックス=前戯、もしくは挿入のないセックスと思われがちだが、英語では少し意味が違う。バニラはアイスクリームの中でも定番中の定番。一番王道にして、フツーで、平凡で、ちょっと退屈なのがバニラである。セックスでバニラといえば、スイートで甘いセックスという意味ではなく、ひねりのないキスから挿入に至る一般的なセックスを指す。SMといったスパイシーなプレイを織り交ぜたセックスはバニラの真逆に当たる。

「君、まるで童貞みたいだね」

SMプレイのベテランにそれを話すとあまりに未経験なことを驚かれた。童貞呼ばわりされて逆にこっちがビックリである。しかし、彼の言いたいこともわかる。SMプレイは高いリスクを伴うことも多く、真剣に取り組まないと怪我したり、取り返しのつかないことになる。バニラな経験を積んできた自分も、刺激的なプレイに関してはとことん初心者だ。一緒に映画観てたらムラムラしてきて、そのまま流れでセックスのような適当なことはできない。

そういえば、いつか映画を観てからセックスをする仲だったセフレとロープで遊ぶことになった。マンネリになったから刺激が欲しかったのかもしれない。しかし、縛りプレイの経験はなかった。クローゼットの中から見つけた長いロープを持ってきた彼は、慣れない手付きでこっちの首元をぐるぐる巻いてきた。きっと飼い主とペットごっこをしたかったんだろう。首にヒモを巻く遊びはするなと子供の頃から注意されていた。明らかに経験不足な相手を目の前にして嫌な予感しかしなかった。救急車を呼ぶことになる前に彼の手を止めた。飼い主が殺人犯になったら笑えない。

日頃からSMプレイを楽しむ人にとっては当たり前だが、セックスはコミュニケーションから始まる。してほしいこと、してもいいこと、そして、してはいけないことを理解し、ルールを決めた上で、やっとお互いが楽しめるセックスになる。むしろ、そうしたコミュニケーションを怠る人とは絶対にセックスをするなと多くの人から忠告された。特にベテランの人ほど、セックスの最中の勝手な決めつけはできるだけ避ける。彼らは様々なプレイの腕を磨くことに熱心で、セーファーセックスについても博識である。そうやって相手をリスペクトし、安全を重視する姿勢は、どんなセックスであっても大事なことだ。

一見、SMプレイって危険で怪しいイメージがあるが、実はとても健康と安全重視だ。トロントにはアクティブなSMコミュニティが存在する。そのコミュニティでは様々な人々が情報交換や助け合いをしている。初心者が経験豊富の人から学ぶ機会があって、経験豊富な人たちはさらに変態スキルを高めようと努めている。こんなにセックスに熱心な変態たちを見ているととてもインスパイアされる。自分も変態で良かったと本当に思える。

こうしてSMコミュニティの習慣に慣れると、逆にいつものセックスにコミュニケーションや思いやりが欠けていることに気付いた。相手が嫌がっているのに止めない人。性感染症に無頓着な人。気持ちよくないのに何も言えない人。そんな場面によく出会う。セックス=恥ずかしいものという社会のレッテルの影響力なのか、お互いのセーフティがないがしろにされることが多い。そういう意味で、ど変態だと開き直っている人はそんなレッテルに影響されずによりオープンにセックスを楽しめるのかもしれない。

「SMプレイは結局、大人の遊びだからね。お互いに気持ちなれる絶妙なバランスを見つけて、一緒に楽しめることが一番重要なんだよ。セックスの後は必ずお茶を飲みながら反省会をすることにしてるよ」

ブラックレザーでカッコよく着飾った絵に描いたようなハードゲイが教えてくれた話だ。超ハードコアなセックスの後に可愛くお茶を飲む姿のギャップはちょっと笑えるが、そんな姿勢はとてもステキだと思う。こんな考え方がどんなセックスでも当たり前になったら、もっとセックスを素直に楽しめる人が増えるんじゃないかな。

Top