第9回 トランスジェンダー「鈴木ゆま」という人物。(後編)「セクシャリティを捨てる」

 

俺がゲイだと公表してから1年。
そしてゆまさんも去年のFacebookで女になりますと宣言されました。
お互い同時期に新たな人生を歩み始めたわけですが、カミングアウトしてから1年。お互いの心境を語り合いました。

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【プロフィール】
慶應義塾大学卒業。劇団四季にて俳優を経てダンサー・振付家に。現在はトランスジェンダーとして六本木にあるショーパブ「金魚」で踊っている。

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青木:ゆまさんは去年、女になると公表されましたが、あれから1年。どんな心境ですか?

ゆま:穏やか。友達からも生きやすくなったねって言われるし。見た目がすごく変わって。顔つき体型が女性的になって、お化粧や服が似合うようになってた。その変化で自分の中でやっと心に合った自分になれたなと思った。人からも受け入れられやすくなった。それが嬉しい。青木君は?
青木:やっと俺も穏やかになってきましたね。カミングアウトして後悔してないなんて強がってみたけど、今まで気にもしなかった事が気になってさっき話しましたけど、更衣室、トイレとか。公表した事による周りの目とか。でも何言われようが、自分は自分。人は人。どうでもいいやと思うようになったら穏やかになってきましたね。
ゆま:そうだよね。カミングアウトってゴールじゃなくてただのスタート地点なんだよね。
青木:そうですよね。ゆまさんは両親にいつカミングアウトされましたか?

ゆま:去年の6月に。

青木:なんて言われました?

ゆま:衝撃的だったんだけど、「どうしたら治るの?」って言われた。
青木:あー、よくある話ですね。
ゆま:これは時間がかかるなって思った。青木君はどうだった?
青木:俺は今までバレるきっかけが多くて。高校生の時に初めて男の人と付き合ってた時に彼と喧嘩して寝込んだ時があったんです。俺、純粋なんで。(笑)
ゆま:へー。
青木:その時に「〇〇くんの事が好きなのか?」って母に聞かれたんです。母は気付いてたんですよね。その時、「お父さんが知ったらどうするの? 女の子がいいよ。女の子にしなさい」って。そう母に言われたのが最初だと思います。でもその時は違うって認めなかったんですけど。そのあと20代になってある女性と出会ったんですね。すごい仲良くなったので彼女にもカミングアウトしてたんです。そして彼女といろんな事があって……その時に実家に暴露手紙を送られて、それで両親にバレたみたいな。(笑)
ゆま:えー最低!!
青木:でもその時は何もなかったことにしてたんです。お互いそれについては一度も触れず10年過ぎました。それで去年、俺もカミングアウトしたんですよね。そんな出来事があったからカミングアウトできたところもあります。暴露手紙? って。と思うんですけど、そんな出来事があったから今があるんだなって。だから感謝してるんです。
ゆま:そっか。うちもそうだけど感づいてはいるよね。それでなんて言われた?
青木:俺はゲイである事を認めた&公表しますだったから。母も父も「そんな事やめた方がいい」って猛反対でしたね。でもカミングアウトする決意を決めたエピソードなどを話したら納得してくれてたようでした。弟は「いいじゃん。その方がいいよ」って簡単でしたけど。(笑)
ゆま:カミングアウトにおいて、兄弟を味方に巻き込みやすいというのはあるよね。ちょっと客観的な意見。まあ、私は一人っ子でそうもいかなかったけど!
青木:そうかもしれないですね。両親に話す前に兄弟に話しておいた方がいいのかも? それに思ったんですけど感づいていても、本人がそれを認めるか認めないかでまた違いますし。また親がそれを認められるのか? それも問題ですよね。
ゆま:それは違うよね。うちの両親もまだ認めてないし。でも父親は認めるのが早かった。私がキレイになっていくのが嬉しいんだろうね。でも母親は息子としていてほしいって思いがあるみたい。でもゲイならいいけど、トランスジェンダーだっていうカミングアウトと身体を変えたいって話だから。でもホルモン注射打ち始めた頃から母親は感づいてた。「あんた変な注射打ってないよね?」って聞かれて。その時は太っただけだよって言ったんだけど。バレてる!! って思った。母親はわかるんだなって思ってこれは限界だって思って去年カミングアウトしたの。でね。母にちょっと話があるんだけどって言ったら「タイで手術したいって話じゃないでしょうね」って言われて。「それー」って感づいてるわーって、
青木:それでもお母さんに「どうしたら治るの?」って言われたんですよね?
ゆま:そうそう。どうにかして治したくて。病院でカウンセリングしてMTFを認定してもらって、セカンドオピニオンを両親の指定の病院でカウンセリングをして。二人目の医師に認定してもらった。親の為にしてあげた方がいいんだなーって思う。カミングアウトって簡単だけど。親の為に説明とかメンタルケアをしてあげないとダメだなって思って。

青木カミングアウトしてこれから親とどう付き合っていくべきか俺の中でまだ答えが出てないですね。

ゆま:ゲイとかトランスジェンダーって、結局ね医師にも親にも決められないし自分しか決められないじゃん。自分で決めらるんだけど。そこから波及する家族とか友達に対してのメンタルケアも考えてあげないといけないんだなって思った。二人目の先生の病院に行くのは自分の為っていうよりも親の為、親を納得させる為、親が全ての最善を尽くした結果が欲しいから。でも息子はやっぱりトランスジェンダーだったって納得してもらうように動いた。

[PB]

青木:うちの両親は何考えてるんだろうな? まだそれからちゃんと話したことないです。カミングアウトする前と何も変わらいんだけど。したからって親になんでも話せるようになったわけでもないし。親がどんな気持ちでいるのか聞いたこともないですし。

ゆま:そうだよね。楽になるとは限らないんだよね。

青木:カミングアウトして楽になる? スッキリするのは一瞬だなって思う。

ゆま:そう!! そこからが大変。
青木:「親に対してのメンタルケアも必要」そうですよね。考え込んで「自分の育て方が……」とか自分の責任にしてしまう人もいますもんね。そうじゃないんだけど。偏見っていうか。何か辛いことなかったですか?
ゆま:偏見? うーん。私の場合、セクシュアリティよりもキャラが立ちすぎてるからそれで乗り越えてきた部分はあるよね。でも小学生の時とかはオカマオカマってイジメられてたかも。なんかあった?
青木ゲイネタを笑いにされる事や否定的発言をする人はよくいましたけど。カミングアウトしてからは偏見のある人は離れていくし。そこまでないですね。ゆまさんのそのキャラって素なんですか?
ゆま:今が素。
青木ゲイの人たちってオネエキャラを演じてる人もいるでしょ? 昔、みんなでいる時はオネエなのに、二人っきりになった途端急に男になった人がいて。狙われてるのかと思って超ビビったことがありました(笑)。やっぱりオネエキャラの方がウケはいいですよね。
ゆま:そうだね。
青木:ゆまさんはそんなところありますか?
ゆま:私はね。ビジネスニューハーフなんだと思う。でも六本木金魚で働いていても私はニューハーフだとは思ってないの。ニューハーフって言葉は英語にないし海外では通じない。ニューハーフって日本のエンターテインメント、マスコミが作った言葉だから。私はトランスジェンダーで女の子だと思ってる。でもね。周りの人とかお客さんはニューハーフを求めてくる。だからニューハーフぽいメイクをして振る舞いをするとみんな喜ぶ。だから役者と一緒だよね。ニューハーフを演じる。だから私はビジネスニューハーフだね。
青木:俺もビジネスゲイになればいいですかね? でもそのためにカミングアウトしたんじゃないんですよね。そんな仕事が来たらやるだろうけど……。
ゆま:ゲイ=オネエみたいなところ?
青木:はい。
ゆま:そうだよね。ゲイ=女装OKってさ。一括りにしすぎだよね。
青木:あれだけテレビでオネエタレントさんが活躍してるからこっちの人たちへのイメージって昔より良くなってるのかもしれない。逆にそんなイメージでしかないのしれないし。わからないけど。最近はジェンダーレス? が流行りですが。ナチュラルなゲイがいないんですよね。だって見た目全然わからない。ナチュナルなゲイ多いですもん。イケメン多いし。
ゆま:そうだね。確かにね。ゲイだとオネエにならないといけない。みたいなところあるよね。そうじゃないんだよね。トランスジェンダーだからニューハーフぽいわけじゃないっていう。そこが難しいんだろうね。知られちゃまずいから隠すために作ってるんだと勘違いしちゃうんだろうね。だから触れちゃいけない。いじり難い。「いや〜」ってやっていれば明るい、いじりやすいってなる。難しいよね。
青木:確かにその方が面白いですよね。テレビ的にも使いやすいですし。別にオネエキャラを隠してるわけじゃなくてそのままなんですけどね(笑)。でも考えるんですよ。今の自分が「男はこうでないといけない」って教えの中で作り上げられたものなんじゃないかって。
ゆま:実はセクシュアリティの問題の根幹は、幼少期の教育や家庭環境に根付いてることはあると思う。
青木:それわかります。男はこうじゃないといけないって言われますもんね。
ゆま例えばさ、LGBTのセクシュアリティの教育のある大学の方が就職率が上がってるとか、あるかもしれない。他者に対する理解と歩み寄り。それは、性に関係なくどんな場面でも必要だからね。
青木:俺も他者に対する理解と歩み寄りってすごい重要だと思います。話し戻しますけど、カミングアウトしてからの爽快感ってなかったですね。ノンケにお前そっちだろって言われたら。そうだよって言えるようになったのは嬉しいですね。
ゆま:試してみる? 調べてみる? って言えばいいじゃん。
青木:いい仕事するよって? そんな事は言えない。(笑)
ゆま:あっちけらかんとしてればいいんだよね。

青木:そうですよね。今でも初対面で「彼女いるんですか?」聞かれるんですけど、「そっちじゃないんで」って答えれるっていいなと思う。

ゆま:私はね。男の子ですか? って聞かれたら今は女の子よって答える。ちょっとのユーモアで返せるところが、LGBTの人たちの素敵なところだよね! わたしは、この言い方気に入ってる! ユーモアな返しができれば受け入れやすいのかもしれないですよね。でもそれを出来るようになるまでが大変。話変わるけど、最近、中高年で女性になる人が増えてるんだって。

青木:えーそうなんですか。でもそれぐらいの年代にならないと決断できないですよね。
ゆま:でも今の子たちは早いよ。だって男性化する前に手術させちゃうんだもん。親が子に進めるのと同時に手術させちゃうんだもん。
青木:えっ。それは本人が「女性」だって言うからですか?

ゆま:そうそう。したいっていうから。声変わりとか喉ボトケが出てくる前に手術しちゃうから男性ホルモンの影響を受けにくいから本当に女の子だよ。最近の親は早いから。でも戻せないから私は今、この年齢でよかったと思う。男性も味わえたし、これまで生きて納得できたし決断できたところもあるから。そんな早くに変えちゃってさ。いや、やっぱり違うってなったらもう戻せなくなちゃうからねー。

青木:そうですよね。

ゆま:二十歳前にだよ!?
青木:二十歳? 早い方がいいのかもしれないけど。俺も男に恋心を抱くようになった時、これは好奇心で。いずれ女の人と恋愛して結婚するんだろうなとも思ってたところもありました。以前に「OUT IN JAPAN」で8歳くらいの子がカミングアウトしてて。8歳ですよ。大丈夫なの? と思って。
ゆま:それは怖いよね。
青木ゆまさんのように色んな経験をして気付くこともありますもね
ゆま:そう。自分の職場、家庭環境、パートナー、将来の夢。全てを冷静に考えて決める必要があると思う。
青木俺は家族にはバレるきっかけがあったからいつか両親にカミングアウトする事になると思ってましたけど、公表するのはまた別の話。俺もよく考えましたもん。カミングアウトって素晴らしいことだという人もいるじゃないですか? でもそうでもないですよね。相当な覚悟がないとしてはいけないと思う。信用する友達だけだったらいいけど、本当の自分を知ってもらいたいとか。本当の自分になりたいからカミングアウトするんじゃなくて自分を強くする為のカミングアウトだったんだと俺の場合思ってるところがあります。カミングアウトって簡単だけど、やり方によっては全然簡単じゃない。でも強くならないといけないと思うんです。俺はやってよかったと思ってますけど。でもカミングアウトする人少ないですよね。

ゆま:そうだよね。でもゲイの人って馴染んじゃうからじゃない?

青木:うん。ゲイってカミングアウトしなければ社会的に適合出来ますもんね。でもカミングアウトする人が増えてくれないと何も変わらない気もするんですけど。

ゆま日本って人と違うって事がすごくいけないことって思うことあるしね。難しいよね。でも知ってもらうからって差別がなくなるわけじゃなくて、むしろ知られたことによって切り捨てられたり、嫌悪感を持たれることもある。
青木:うん。わかります。でも一人一人少しずつ始めていけば何か変わるかもしれないし。でも最終的にセクシュアリティなんて関係ない世の中になって欲しい
ゆま:うん。私思うんだけど、性別を超える。消滅させるってこと。マイノリティの最終的な目的はマイノリティを消滅させることだっていうよね。それじゃないかな。男らしさと女らしさって、最近ますます境界線が歪んできてるよね。最終的にはセクシャリティを超えた所に幸せになる答えがあると思うから。なんか私がすごく女性と違うところって、普通の女の子は女の子が当たり前だけど、私は一生懸命女になろうとしてるからどこかしら後ろめたさを感じてたり、嫌悪感がある。セクシュアリティを捨てることで答えが出るんだなって思った。だから最終的にセクシュアリティを捨てた。
青木:今日のテーマでましたね!!「セクシュアリティを捨てる」。捨てちゃいましょう!! これからゆまさんがどんな活動をされていくか目標はありますか?
ゆま:ある人が私に言ってくれたんだけど。安売りはしないで、綺麗な女として女優として売っていけばいいんじゃないのって。タイなんかだとトランスジェンダーで女優やモデルで活躍してる人もいるし。だからオネエ、ニューハーフ=お笑いっていうイメージを変えたい。対等にモデルやったりとか女優やったり。中村中さんとかそうじゃん。こないだ舞台見にいて素晴らしかったんだけどさ。男の子が憧れるトランスジェンダーになりたいなーって。俺の彼女にしたぜって思ってもらえるような。それは私の目標にしてるね。
青木:俺もゲイ=オネエみたいなの変えたいですね。カミングアウトした俳優ベン・ウィショーとか大好きで。彼の芝居見ててもセクシュアリティとか関係ないなーと思うし。でも彼の偉いところはちゃんとゲイ役もやってたりするところ。またその芝居が自然でいいんですよ。今すごくリスペクトして俳優さんです。ベン・ウィショーのような存在になりたいですね。

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LGBTという少数派同士でもわからないこともある。ゆまさんと2時間程話しをさせていただいて、学ぶ事が多かった。貴重な時間でした。カミングアウトってする必要はあるのかないのか? 当事者の中でも意見が分かれます。
「セクシュアリティなんて関係ないじゃん。だからオープンにしてる」
「自分のセクシュアリティを他人に言うとこではない」
と様々。
でも面白いのが、前者は10代から30代の人達。後者は40代から上の人達からの意見が多い。そして異性愛者の偏見を持ってる人も40代から上が多い気がします。若い世代の方々はフレンドリーな方が多い。少しづつ変わってきてるんでしょうかね?
誰かが動かないと何も変わらないわけで。カミングアウトすることに意味を感じない当事者もいる。一番大切なのは自分ですからね。仕方ない。
でも未来の子供達に、今よりも住みやすい環境と権利が与えられたらいいですよね。俺はそう思います。

 

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