第19回 同性婚と介護問題

 

スペインという国は本当に微妙な国だ。スペインに魅せられた日本人には悪いと思うけど、いまいち魅力に欠ける気がするのは何故だろう?灼熱の盛夏、真っ青で広い空と地平線、どこに繋がっていくのか分からない荒野の畦道……スペインの田舎はマドリードやバルセロナに代表される観光名所が少ない。勿論立派な大聖堂に美術館はあるけれど、基本観光都市化されていないスペインは、古き良き(?)フランコ時代の面影を漂わせている、気がする。まあそんなせかせかと生きなくても楽しく暮らせるスペインこそが、この国の本質とでも言えるのだろう。

 

私は私でこの街一番のレストランで働きながら、せっせと物書きを進めたり、スペイン語の資格試験に向けて勉強していたりする。旦那は勿論店をせっせと切り盛りしながら(労働時間5時間)、ポケモンハンティングを兼ねて近くの公園までウォーキングすることが日課になっている。ここスペインでもポケモンの盛り上がりは異常で、ひとたびセンターを歩けば、観光客に地元民みんなスマホ片手にポケモン探し。30過ぎの時代の流れに着いていけない私は、どちらかというと2ちゃん派である。

 

日本人か?と聞かれれば、ポケモン、遊戯王そしてデスノート。そのどれにも疎い私は、ここでは異端者扱いさ。そんな異端者ゲイの私は、来月で今のレストランを卒業する。自分で言うのもなんだが、ナヨ系ゲイの私が10キロ以上あるマグロにサーモンを片手でバリバリ捌くことには無理がある。手が傷だらけになり、iPhoneの指紋認証すら機能しなくなる程擦り切れた私の指紋。おっさんゲイの夢に未来は、シャリの中には発見できなかった。まあ言いたいことを吐き出したところで、本当の退職理由は実はもっと現実的な問題にあるのだ(お金ではない)。

 

そう何を隠そう介護問題!

 

キタコレ!と盛り上がりそうなテーマだが、まさか自分の両親の面倒をみる前に(物理的にも不可能だが)義理の親の介護問題に直面するとは想像だにもしなかった事象なのだ。理想の結婚なんて、きっとお金もちと結婚して、自分のキャリアを捨てずに輝いた毎日を過ごす。そして可愛い子どもに恵まれて、年に数回の海外旅行をする。きっとこんなのが、誰もが描きがちな理想なのだろう。


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勿論私は愛する旦那(頼りないけど)に、うさ公2匹と一緒にそれなりに不自由のない生活を送っている。お金を散在したり贅沢三昧な生活を送る程裕福ではないけれど、ゆるいスペインでなんだかんだ2人で幸せを描いているのだ。しかし愛だけで、ゆるぎない愛さえあれば生活に勝てるのだろうか?お金にお互いの健康、そして家族問題。結局私達は結婚生活3年目を迎えるか迎えないかの節目で、義理のお父さんの介護問題に直面したわけだ。

 

前置きが長くなったが、やっぱりどこの家もいろんな問題を抱えてんだなあ。私の親もいろいろとハチャメチャな人生を送ってきた人達だが(その子どもの私も)、旦那の両親もそれに負けず劣らずだ。街一番のカラオケクイーンのお義母様、御年96歳の大叔母に70を迎えうつ病を発症したお義父さん……一人息子の旦那は毎日家族の面倒、トラブルにお役所仕事、てんてこ舞いに動いてる。

 

歌に人生と声帯を捧げたお義母様は、お義父さんそっちのけでリサイタルの日々。お義父さんはその腹いせにインシュリン注射を打たなくなって、うつ病を患ったという訳だ。幸い血糖値に関しては現在安定しているものの、自宅に帰ればいずれインシュリン注射は打たなくなることは目に見えている。そして禁止されているはずのメロンにアイス、チョコレートとビスケットをドカ食いするだろう。

 

もうそろそろ私達若い世代(もう30代)が動かなければ、お義父さんがダメになる。

 

旦那はメソメソと泣くばかりだが、そろそろ重い腰を上げなければならない。投薬管理はスペイン人夫、そして食事管理はこの私、日々の散歩は叔父さんが担当することになるだろう(お義母さんはカラオケ担)。

 

よく芸能人が自身の親の介護の大変さを訴えたりしているが、現実問題いまいち実感がわかない。子どもが突然大人になった、そんなレベルの日本人ゲイと気弱なスペイン人夫が支えきれるものなのか……一抹の不安どころじゃない、何から手を付けていいのかわからない不安に駆られるが、やるしかない。ということでアマゾンで「糖尿病患者の食事管理」という本を買ってみた。まあ小さな一歩が未来につながるということで。

 

そんな過程もあって退職を決意したわけだ。実際奴隷のように働いて10万弱という薄給だ、ぶっちゃけて仕事を辞めたところでそこまで困らない。異邦人の私を家族として受け入れてくれた親愛なるお義父さんに、感謝の意を示す時がきたのだ。

 

でもきっとそんな使命感を持ってしても、主婦の鏡のような介護に食事管理はできないかもしれない。それでもゆったりしたスペインの風のような優しさで、塩分控えめパエリアでもまずは作ってみようか! と思いクックパッドを開く私であった。

 

PS.いろいろ辛い思いもしたけれど、こんな陽気な仲間とAdiosするのはちょっぴり寂しい気もしないではない。

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イケメンゲイトリオ(たぶん)と有名なバスケットボールの選手(名前忘れたけど、すごく有名らしいです)。

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Hasta la pronto!もうサーモンなんか捌くものか!

 

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