第58回 性欲が強い人、弱い人、底なしの人

 

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セフレとの関係を維持するのは難しい。セックスが中心にある人間関係だからちょっとしたきっかけで揺らいでしまう。お互いがしたい時にセックスできればいいが、なかなかタイミングが合わないと簡単にギクシャクする。

「ねぇ、今夜セックスしようよ!」

いつもの午後にセフレからそんなメッセージが届くと戸惑ってしまう。仕事もまだまだあるし、家事も残ってるし、後で観ようと思ってたテレビ番組もある。ランチに辛いものいっぱい食べちゃったし、ムダ毛の処理も最近怠っている。頭の中に断りの理由が次々と浮かんできた。本当にムラムラしているならそんな上辺だけの問題なんて全部無視して、無理にでも時間を作ってセックスをしているところだ。そうではないということは、自分がセックスをしたくないということなのだろう。それを相手に言いたくないから、こんなに必死で断る言い訳を考えているのかもしれない。

性欲についてそんなに深くは考えたことはなかった。男性はたくさん性欲があって、女性は性欲があまりない。そんな社会の中のステレオタイプを信じていた。大学生時代、周りの友達はみんな性欲を持て余していたから、個人差があることも意識したことはなかった。しかし、いろんな人とセックスをしていると、次第に人によって性欲が違うことに気付くようになった。

50代の知り合いは相変わらず底なしの性欲を自慢しているし、自分より年下の友達はムラムラすることがほとんどないと語っていた。オナニーは毎日するが、セックスはたまにできればいいという人にもたくさん出会った。朝起きた時にセックスしたい人もいれば、夜遅くにセックスしたい人いる。ランチタイムにサンドイッチ片手にセックスに励むサラリーマンだっている。そして、女性には性欲がほとんどないと鵜呑みにしていた自分はバカだった。

歳を重ねて、自分の性欲の変化にも気付いた。若い頃の性欲が火山だったとすれば、今の性欲は波に近い。セックスをしたい日もあれば、したくない日もあって、衝動は波のように寄せては引き返す。いつもどんなときもムラムラしていた頃が少し懐かしいが、こうして落ち着いてセックスを楽しめる今の自分も悪くはない。

そんな自分とセフレの相性は最悪である。このセフレは常にセックスしないと落ち着かない人だ。オーガズムに達さないとベッドから起き上がれないし、眠りに落ちることもない。彼氏がいたら毎日朝と夜にセックスをしたいと彼は嬉しそうに語っていた。体力のない自分にはとても務まらない役目である。忙しい都会暮らしの二人はただでさえ時間がないのに、珍しく都合が合う日もムラムラしない自分のせいでセックスをしないことが度々あった。

繊細な人間関係だから、こうもお互いを拒絶することが頻繁に起きるとモチベーションが下がる。別にどちらかが悪者というわけではない。性欲にギャップがあるだけで、それ自体はとても自然なことだ。しかし、それを上手にコミュニケーションするのは予想以上に難しかった。そんな意図はないのにお互いの気分ばかり害してしまう。

「彼氏ができたから、セフレ関係は終わりにしよう」

つい最近、彼からそんなお別れのメールが届いた。正直少しホッとした。セックスができなくなるのは寂しいが、断り合戦もしないで済むからだ。それにしても、彼らは毎朝毎晩セックスをしているのだろうか。そんなハイエナジーなセックスライフには憧れないが、素直に感心してしまう。お祝いのギフトに徳用サイズのコンドームとローションでも贈ろうか。

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