性別適合手術の、その後

 Comment  コラム   となりのさつきぽん              

 

トランスジェンダーにとって性別適合手術って、ゴールのように思われている。もちろん大事な目標であることは間違いないし、私自身もそれに向かって一心に進んでやってきた。そもそも高額だし、術後のダウンタイム(回復までに必要な時間)も半年近く必要になる。人生設計をキチンとしないと受けられない手術だ。

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最近になってようやく、性別適合手術の体験記みたいなものが増えて、その手の類の漫画なんかもたまに見かける。それもここ4年くらいの話で、私が手術を受けた当時は情報なんてほとんど無かったし、ましてや当事者の声なんて聞けなかった。今は情報が多い。

ただ、最近思うのが「性別適合手術を受けた後の、正しい生活スタイルは?」ということをよく考える。

私の場合はメディアでトランスジェンダーであることを発信している立場なので少し特殊ではあるけれど、それでも一般のトランスジェンダーの方でもまず社会復帰までに半年近くは必要になる。会社勤めしていて、半年間職場を離れるなんて正直けっこう厳しい。「 LGBTに優しい社会を」なんて言っているわりに、そこまで理解のある職場の方が少ないのが現状だ。

そう考えると、トランスジェンダーの雇用・就職問題というのはまだまだ問題が山積みになっている。まぁ今までそこの問題を大きく取り上げる人もいなかったのだから仕方がない。ただ、同じトランスジェンダーの方には申し訳ないのだが、業界に長く関わっていて感じるのは精神的に弱い人が多い。きっと自分に自信がないのだと思う。私もそうだったからよく分かる。

でも、何かあるとすぐに「バカにされた!」とか「どうせ自分なんて……」と、メンタルがジェットコースターのように上下する人が非常に多いと感じる。

あのね、あえて同じトランスジェンダーだからこそハッキリ言わせてもらうけれど、そこまで一般の人は気にしてないから。私だって身長180cmもあって、ぶっちゃけ泣きたいよ。はやく青い猫型ロボットがスモールライト持ってきてくれないかなって、わりと本気で願っているよ。女型の巨人とか言われる人生もう嫌だよ。

でもね、現実は受け入れるしかないの。悩んで泣いたら身長が縮むのであれば、死ぬほど泣いてやる。でも、縮まないし。結局、世間一般の人ってそんな所を見ているわけじゃない。それよりも、まともな話が通じる相手か。ちゃんと頼まれた仕事をこなしてくれるか。大切なのってそこだと思う。

でも人を見た目で判断する人って、いると思う。全くいないなんて、嘘だ。もしかしたらあなたの職場にもいるかもしれない。裏でコソコソと陰口を叩く、暇な人。そんな人は初めから相手にしなければいい。別にその人があなたの幸せを運んでくれるわけじゃない。人間、本当に自分が守れる人数って限られている。1人か、2人。多くても片手ぐらい。じゃあ自分にとって誰が幸せを運んでくれるのか。それをしっかり見定めて、その人だけを大切にすれば良い。それが出来たら、きっと昨日の自分より少し強くなれるはずだ。

性別適合手術って、ゴールじゃない。むしろスタートだ。

受ける前よりも、後の方が考えなければいけない問題ってずっと多い。しかも現実的だ。まずは仕事。身体のことを理解してくれる職場って、何だかんだけっこうレア。仕事を探すのに一苦労。そして子供が産めるようになるわけでも無い。ではどんなパートナーと老後を過ごすのが良いのか、相手の家族には何と説明するのか。もし養子を頂くのであれば、どこから? 子供にはなんて説明する? 貯金はどれくらい必要? 想像するだけで道のりは長い。

それを考えながら、仕事しつつ、掃除して、洗濯して、干して、買い物行って、ご飯作って、食器洗って、乾いた洗濯物畳んで。もう正直「人にどう思われているのかな……」って落ち込んでいられるほど、暇じゃなくなる。

まぁ、言ってしまえば「当たり前の日常」がスタートする。

ある意味、女性としての当たり前の日常。それってけっこう忙しい。この考え方が正しいかどうか分からないけれど、少なくとも私は不幸に浸っている暇が無い。

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もし今、何かに悩んでいる人がいれば当たり前の日常を毎日懸命に生きてみるといい。

洗濯した白いシャツを「パンッ」と伸ばすあの感じは、けっこう気持ちが良い。

 

 2016/09/07 13:45    Comment  コラム   となりのさつきぽん              
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