アナルの本を医者に監修してもらうのは難しい

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先日まで原稿に追われておりました。大島薫です。

さて、何の原稿に追われていたのかという話ですが、こちら

大島薫先生が教えるセックスよりも気持ちイイこと(マイウェイ出版)です。

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普段ボクはツイッターで、毎日1ツイートは性知識を投稿しているのですが、そのほとんどは実体験を基にしたものです。それだけだと信憑性がないので、何かの論文や医学書などから関連していそうな項目を調べ、自分なりの仮説を立てて投稿しています。

 

ツイッターには140文字の文字数制限があるので、ソースや論文のタイトルまでを書くことができないのですが、そんなことを続けていると「大島薫の言うことは信憑性がない」とか「ソースを出せ」とか言う人が出てきて腹立たしいので、今回お医者さんの監修を付けて本にすることとなった次第です。というわけで、今回はガッツリとこちらのコラムでもこの本の宣伝をしようかなと思っております(笑)。

 

|医者はアナルを使わせたくない

まず皆さんに踏まえておいていただきたいのは、お医者さんと呼ばれる方々は、基本的にアナルセックスを推奨していないという点です。例えば、大阪肛門科診療所・副医院長の佐々木みのりさんはご自身のブログ「みのり先生の診察室」で、アナルセックスをしている人についてこう書いておられます。

 

肛門性交(アナルセックス)をしている人に必ず言うことがあります。

「肛門は性器じゃない。だから排便以外の用途で使わないでね!」

 

これは決してこちらの先生に限った論調ではありません。肛門は正直衛生的に綺麗な場所ともいえず、粘膜も傷付きやすいため、感染症のリスクが性器に比べとても高いことは皆さんご存知かと思います。もちろんゲイやMtFが全員アナルセックスをするとは限りませんが、とあるインターネット調査によると、ゲイやバイセクシャルの男性を対象に調べた過去6ヶ月以内にアナルセックスをした人の数は実に80%以上という結果になりました。ネット上のみの統計でどこまで信用できるかはさて置き、その数は決して少なくはないようです。

 

多くの方が選択している1つの愛の交わし方を、お医者さんからこうも簡単に否定されてしまうとなんというか、悲しい気持ちになってしまいますね。しかし、どうでしょう。考えてみれば本当に健康や身体を気遣うのであれば、本来はお酒や煙草もやってはいけないことになってしまいますし、感染症の危険性の話についても多かれ少なかれ男女にだって感染症のリスクはあります。

 

もし、これを読んでいる方がノンケの方(まあ、2CHOPOで少ないとは思いますが……)だったとして、ある日突然男女のセックスを禁止されたとしましょう。それでも、好きな人と繋がりたい、愛し合いたいと思うのは、そんなにイケナイことなのでしょうか?

 

ツイッターの投稿に信憑性がないと言われたことが腹立たしいと冒頭で書きましたが、今回の執筆にはそういったボクの想いもあったのはたしかです。そんな難しい立場の中、この書籍の監修にご協力いただいた先生には本当に感謝しております。

 

|監修医師について

そんな医師の素性についてですが、今回こちらの本ではお名前を明記しておりません。

 

理由としては2点あります。まず、アナルセックスを推奨するような本についてご協力いただける医師が非常に少ないことと、もう1点はこちらの医師が勤務医の方だからです。

 

紛れもなく某国立病院に勤務されている現役医師なのですが、開業医でもないのでこういった書籍の監修に協力していることは明言できないとのことで、今回は匿名とさせていただいております。もちろん出版社に電話などでご確認いただければ、実在する医師であることはご説明できるので、その信憑性については保証いたします。

 

なぜ医師の立場でありながら、こういった書籍にご協力いただけたかについては、その先生がボクに言った一言がとても印象に残ってます。

 

「本当にその人にとってその行為が、リスクを背負ってでもやりたいことであれば、犯罪にならない限りはやっていいんですよ」

 

たしかに人々の健康と生命を守るお医者さんとしては、間違った発言かもしれませんが、ボクはこの一言が多くの方の支えになるのではないかと感じました。こういった発言を躊躇なく仰っていただけるのも、ある意味では医師の名前を匿名としたからこそだと考えています。

 

|医学者と性科学者の見解の違い

今回執筆にあたって1番問題となったのは、ソース元と医師の見解の違いです。性科学という分野はいわゆるセックスマニュアルや、性雑学といったものではなく、科学的な検証や、実用的な知識に基づいた応用科学の分野の1つです。ですから、よくある独断と偏見の混じった「俺が言ってるから絶対こうなんだ!」というようなものとは明らかに性質の異なるものではあるのですが、それでも尚医師から否定されてしまうことがあります。

 

お医者さんと一番揉めた点でいえば、オーガズム時の人間の脳の活性化についてです。ラトガーズ大学心理学教授のBarry Komisaruk氏は、被験者のオーガズム時の脳を調べ、約80ヶ所以上もの部位が活性化するという驚くべき発見をしたのですが、実をいうとこれは医学者の見解とは真逆のものでした。

 

それまでの――というか、いまでもなのですが、――論文ではほとんどが「オーガズム時は脳の働きが抑制される」という見解が、医学界の常識とされていました。

 

ボクはこのKomisaruk氏のデータを持って「セックスの際に自然に声が出てしまうのは、脳が活性化して酸素を必要とした結果、出てしまうものなのだ」としたのですが、今回監修を依頼した医師から真向から否定されてしまい、大変困りました。最終的に大量のソースを医師に提示して、性科学者の見解と医師との見解は分かれることを明記した上で、ボクの仮説を掲載することをお許しいただいたのですが、いやはや……こういった微妙な表現の問題については本当に頭を抱えました。

 

|性とは何か?

結局のところ、性に関することというのは「あるともないとも言い切れないこと」という結論に帰結してしまいがちです。例えば、「イク」と表現しますが、イクとはどういうことなのでしょうか。快感が最高潮まで高まって身体が痙攣したり、のけ反ったりすること? 発汗、心拍数の上昇がみられること? 射精の有無?

 

では、アナルを攻められて射精をせずに男性が「イク」と言うドライオーガズムなどはどうでしょうか? 本人はイッたと言っているけど、射精はしていないから身体的にはそのような反応は見られない。果たしてこれはイッたと言えるのでしょうか?

 

今回医師からの監修でよく言われた言葉がありました。

 

「自覚的な現象であれば自明のことではあるでしょうが、医学的な証明は難しいと思います」

 

つまり、お医者さんからしても、身体的な反応があろうがなかろうが、理論的に可能だろうが不可能だろうが、本人がイッたといえばイッているだろうし、イッてないといえばイッてないのだろうということになってしまうということですね。まだまだ世の中にはわからないことがたくさんあります。

 

今回の本の中でも「男性が将来妊娠する可能性」や、「生物学的に同性愛が異常ではない理由」について述べている項目がありますが、その全てが将来証明されるかもしれないし、否定されるかもしれない可能性を含んでいます。この世の中は不思議なことばかり。事実は小説よりも奇なりです。

 

あなたが好きな人と交わす愛の形が、何者からも否定されない素敵なものになりますように。その傍らにこの本があれば幸いです。

 2016/09/24 14:11    Comment  コラム         1      
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