第138回 ニューヨーク爆発事件、「LGBT差別を恨んでやった」と騙る匿名ブログが出現

まきむぅの虹色ニュースサテライト

 

まきむらよ

世界のニュースから性を考える時事コラム「まきむぅの虹色NEWSサテライト」、今回は2016年9月下旬に連続したニューヨーク連続爆発事件をとりあげます。

 

 

 

 

このところのアメリカでは、爆発事件が相次いでいました。

 

9月17日朝、ニュージャージー州のマラソン大会の会場近くでパイプ型爆弾が爆発。同じ日の夜、お隣のニューヨーク州・マンハッタンで不審物が爆発、31人が負傷(参考:東洋経済オンライン・NHK NEWS WEB、いずれも現地時間)。一連の騒ぎは、アフガニスタン出身のアメリカ人、アフマド・カーン・ラハミ容疑者(28)が逮捕されたことで一応の収束をみましたが、それにしても見過ごせない出来事が裏で起こっていました。

 

「私が爆発事件の犯人だ。LGBTに対する差別を許せなくて今回の事件を起こした」

 

そう騙る匿名ブログの存在です。

一時はFBIにより捜査されていましたが、容疑者逮捕により、ブログはニセモノであったという見方が強まっています。声明文が載っていたブログ「I’m the NY Bomber」も、現在はまるごと削除されています(http://nybomber.tumblr.com/)。

ですが、そもそもどうしてこの事件にLGBTを絡めるような声明が出てきたのかを考えることは、現代社会を見つめるにあたって役に立つことであるはずです。ということで、ブログ削除前に全文を転載したWEBメディア「PIX11」を参照し、声明文を日本語訳でお届けしたいと思います。

 

★ 連続爆発事件犯人を名乗るブログ全文訳
nybb

(画像:http://nybomber.tumblr.com/スクリーンショット)

人の命を奪うこと
人の命を奪うって、どんな感じでしょうか。私にはわかりません。
ですが、私にわかるのは、もし私がやるべきことをやらなければ誰も注意を払ってくれないということです。LGBTQ+(※1)の人々は、ストレート・シスジェンダー(※2)の人々よりも高い割合で自殺をはかります。

 

(※1 LGBTQ+……いわゆる性的マイノリティの総称。LGBT、つまりレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの4つに入らない人も排除しないようにと考え出された、より幅広い表現)

(※2 ストレート・シスジェンダー……ストレートは異性愛者の意。シスジェンダーは、出生時に診断された性別をそのまま生きる人々。トランスジェンダーでない人々)

 

しかしながら、誰も気にかけていないのではないでしょうか。もしもLGBTQ+コミュニティの人々が、このような暴力と抑圧に対して反乱を起こしたら、いったいどうなるかということを。このことこそ、抑圧されたたくさんの人々が立ち上がらずにいる理由であると私は思うのです。ですから私は、前進することにしましょう。私のなすことには目的があり、事実、状況を変えるでしょう。このことについては、随時報告していきます。


試験用の爆弾づくり

どうも。
たぶんあなたはもうニュースでご存じでしょうけれど、
ニューヨークに仕掛けられた爆発物、あれは私がやりました。ただのテストですけどね。失敗したところは分かっているし、同じ間違いは二度と繰り返しませんよ。

こんな社会に耐えられないから、やったんです。

私のような同性愛者や、ほかのLGBTQ+コミュニティの人々が見下されるような世界で、私は生きていけません。今は2016年ですが、私たちは未だに、精神異常者、犯罪者、目立ちたがり屋、そしてただ単にキモい人として見られているでしょう。社会的階級の低い人々や、恵まれない人々が抑圧されているような状況下で黙っているつもりはありません。この国に、白人警官たちに見られる人種差別主義のような不平等がはびこっている状況下で黙っているつもりはありません。女性差別主義者、外国人嫌悪者、人種差別的イスラム嫌悪者でいることが許されてしまい、共和党からの候補者が大統領になろうとするような、こんなアメリカ合衆国という国で黙っているつもりはありません! 特に、一般的に言って共和党のやつらの問題はもっと真剣に取りざたされるなんべきです、みんなシスジェンダーの恵まれた白人たちなんでしょうからね。

これが終わりではありませんよ。これはただの始まりです。私は記憶に残る存在となるでしょう。私は変革を起こしてみせます。手遅れになる前に、私は、私のターゲットどもを消してみせます。

(以上、「PIX11」より日本語訳)

★ 「LGBT差別を恨むホモセクシュアル」を名乗る声明文、どう読むか

以上、声明文をお届けしてまいりましたが……まず間違いなくこれは、ニセモノの作り話でしょう。別の容疑者が逮捕されていること、既にFBIに捜査されていることに加え、決定的だと思えるのは、このブログを書いた人が原文で「homosexual」を名乗っているということです。

 

自分を「ゲイ」ではなく「ホモセクシュアル」と名乗ることは、少なくとも、アメリカに生きて英語を母語とする同性愛者の間では考えにくいことです。本連載の過去記事「同性愛者という言葉が差別用語になる日は来るのか?」でもお伝えした通り、「ホモセクシュアル」という言葉は、同性愛が病気とされていた時代に医学論文で使われていたという負の歴史があること、また「セクシュアルセクシュアルってそんなにセックスのことばかり考えてるわけじゃないし!」というツッコミから、今ではアメリカにおいて放送禁止用語のような扱いを受けています。

 

それでも未だにこの言葉を使っているのは、同性愛が病気とされていた時代の認識を持ち続けており、なおかつその意識をアップデートしていない同性愛嫌悪者がほとんどです。そんな感じの人物が、「LGBT差別に怒って爆発物を仕掛けたって言えばみんなLGBTを叩くんじゃないかなぁワクワク」みたいな浅はかな認識でやったんじゃないかなぁという気が私にはしています。

 

ですが……そもそもこんな声明文が書かれるのは、これがありそうな話だと受け取られる社会状況だからですよね。

現地メディア、ニューヨーク・ポストによると、容疑者の子どもを産んだ女性は、容疑者についてこんなふうに語っているそうです。

 

「彼は、西洋文化と故郷との違いについていつも話していた。アフガニスタンには同性愛者なんていなかった、って。」

 

アメリカが本当の意味で“自由の国”となる日は、いったい、いつのことでしょうか。


……ということで、読んでくださってありがとうございました!

今まで毎週金曜日にお送りしてきた「まきむぅの虹色ニュースサテライト」ですが、なんていうか、定期的な連載だと、「本来は社会全体のこととして受け取るべき性の問題が、毎週ネタ出ししなきゃいけない関係で無理矢理LGBTニュースってことになっちゃうのがやだな」っていう気持ちになっています。なので、基本的に、重大事件を語るキーワードとしてはっきり「LGBT」が出てきたときだけ更新するというスタンスでいきたいと思いますが……不定期連載になっても引き続き、どうぞよろしくお願いします。まきむぅでした◎


▼ツイッターもやってます♡

Top