<特別版>BOYSLAB(ボーイズラボ)との対話(後編)

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「BL」とはもちろん「ボーイズラブ」の略で、主に女性作家が女性読者のために描く、美男同士の恋愛を軸にしたマンガやイラストつき小説群(およびドラマCD、アニメ、映画、ゲームなど他メディア作品)のこと。つまり、提供するのも受容するのもほとんど女性で、描かれているのが男性キャラなのがBLの特徴。ところが、「本物のイケメンが魅せるボーイズラブの世界」をうたい、生身の男性によるラブやセックスを女性にも見やすい作風で制作されたAVレーベル「BOYSLAB」(ボーイズラボ:男子研究所の意味)があると知り、3年ほど前からちょこちょこ鑑賞していたのですが、本当にBLにしか見えない。GV(ゲイビデオ)ではなく。これってどういうこと? その謎を胸に、「BL進化論 対話編」の<特別版>として、「BOYSLAB」のプロデューサーKATSさんとディレクターMATSさんに「前編」に引き続き、お話ししてきました。

 

特別版ゲスト: KATSさん&MATSさん(写真はBOYSLAB作品より)

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インタビュアー:溝口彰子
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©Katsuhiro Ichikawa

 

ファンの方たちとともに

“BOYSLABコミュニティ”を一緒に作ってきた

感覚が僕たちにはあります(MATS)

 

溝口:BOYSLABさんのDVDは1枚15,000円〜18,000円と値段が高いですが。

 

KATS:それもこだわりです。モデルたちがリスクを負って出演してくれている作品が安く売られていいはずがない、と思っているんです。買う方も覚悟をもって買ってくださるくらいの、それだけの価値のあるものだということを視聴者の方たちにもわかってほしいので。

 

溝口:たしかに、男女ものAVのウン倍、他のGVメーカーのDVDよりもずいぶん高いですが、歌舞伎座の一等席と同じくらいなので(笑)、貴重なコンテンツを覚悟をもって購入する、という値段としてふさわしいのかもしれません。

 

KATS:あとはもちろん安全面です。ごく最近でもありましたけど、有名アスリートがGVに出演していたことを特定して、画像を貼り付けて「拡散してください」とやるような人たちや、違法に動画や画像をアップロードし、それを無料で視聴する人がいるのが残念ながら現実ですから、そういう人たちが手を出しにくい価格にするという意味もあります。面白半分の人たちに簡単に作品を見られてしまうということはモデルにとっては脅威でしかないので、そういう意味での対策でもあるのです。逆にいうと、リピーターの視聴者の方たちについては、そういうリスク要因ではないので、現在よりも割引制度などのサービスを充実させていくために、近い将来、自社回線での通販、ダウンロード販売、生放送配信に切り替える予定です。

 

溝口:生放送配信というのは、モデルさんがパーソナリティとなって他のモデルさんをゲストに呼んだり、スタッフさんともおしゃべりしたりする有料配信トーク番組のことですよね。私はDVDに収録されたものを見たことがあるだけなのですが、毎月複数回あっても、たとえ数時間におよんでも、回線ごしにモデルさんたちと時間を一緒にすごすコンテンツとして楽しんでいるファンの方がたくさんいらっしゃるようです。事前にメールで受け付ける質問だけでなく、その場でテキストで打ち込んだコメントをモデルさんがPCの画面で読み取って反応してくれることもあるようで、まさに双方向的です。

 

KATS:はい、楽しんでくださっている方が多いですし、モデルにとっても楽しいようです。年に1回、海咲(みさき)というモデルが朝までやる番組もあるのですが、先日も、この部屋で朝の5時半までやっていまして、100人以上の方がずっと視聴してくださっていました。そういった番組も自社回線でやることで、今以上にモデルを守っていこうと準備しています。

 

2CHOPO編集長:それはけっこうな設備投資ですよね。

 

KATS:そうですね(笑)。でも、重要なことですから。

 

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溝口:ところで、私のようにときどきDVDを買う程度のライトなファンではなくて、毎月DVDを購入し、ファンクラブに入り、イベントに年数回、遠征参加し、グッズを購入し、有料配信番組も欠かさず見るというディープなファンの方って何人くらいいらっしゃるのでしょう? 300人くらいですか?

 

KATS:残念ながら、もうちょっと少ないです(笑)。

 

溝口:それだと、たとえばこの記事を読んで興味を持った方がDVDをすぐ購入できるという意味では不特定多数にひらかれたビジネスですが、コアな部分は会員制ビジネスみたいな感じですね。

 

KATS:そういうことにはなりますね。もっといろんな方にBOYSLABを知っていただきたいという思いはあるのですが、モデルの安全性との兼ね合いでそうなってしまっているのが現状です。そのぶん、私たちもモデルの質、作品の質にはこだわり、お客様からのご意見ご批判はおききする、というスタンスでいます。

 

MATS:僕たちはこれがビジネスですし、モデルたちも副業とはいえギャラをもらっているので仕事ですけれど、でも一方では、ファンの方たちもふくめたBOYSLABというコミュニティをつくりあげてきた、という感覚です。

 

溝口:なるほど。モデルさん、スタッフさんとコアなファンの方々が顔をあわせるイベントは、とくにそのコミュニティ感を醸成するために重要なのではと思います。私は、2014年初頭に、ケーオーカンパニーさんとの合同の、申し込み方法も入場料も内容も気楽な感じのイベントがあった時に参加しただけなのですが、その後のBOYSLABさんのイベントは、DVDに収録されているのを拝見すると、ライヴハウスとか宴会場、カフェなどでモデルさんを女性ファンが囲み、モデルさんたちが歌ったり踊ったりしています。こういったイベントも、BOYSLABさん独特のコンテンツですよね。

 

KATS:そうですね。ファンの方たちも楽しんでくださっていますし、モデルたちの大きなモチベーションにもなっています。

 

溝口:さて、次に、初心者におすすめの作品を教えてください。

 

KATS:毎年年末に、ファンの方々の投票でアワードを授与しています。2013年度の上位3位の作品、つまりもともと別のDVDに入っていたチャプター3つを1枚のDVDに収録したベスト版「BOYSLAB AWARD 2013 THE BEST」が、評価の高かった人気作品がいろいろ見られるという意味でおすすめです。こちらは、値段も190分9,900円と抑えています。それ以外だと、ストーリーものが入りやすいのかなと思います。「世にも不思議な物語」的なドラマを作り込んだ「SHINWA –震話-」シリーズ、ビターテイストの切ないラブストーリーの「Bitter」シリーズなど。それと、「MMU」シリーズは、「ミスター・マイ・ユニバース」といって、1人のモデルが自分でプロデュースするシリーズです。なので、カバーに載っているモデルが全3チャプターに出演していますので、お好みのルックスのモデルの「MMU」を買っていただくのもいいかなと思います。

 

溝口:私はこれまで、ドキュメンタリー的な作品で、先輩後輩トークのまま「よろしくお願いします」みたいにHが始まるというようなほうが面白く感じたのと(笑)、素人芝居が苦手なもので、設定ものは避けていたんですが、新作の「SHINWA 参 –震話-」は楽しく拝見しました。もちろん、プロの俳優さんのようだとは言いませんが、「アテ書き」というんでしょうか、モデルさんの個性にあわせて役柄が設定されているのが功を奏している感じがしました。

 

KATS:ありがとうございます。うちのストーリーものの作品は、全部のセリフを脚本に書いて渡すとどうしても覚えてきて棒読みになってしまうので、ここはこういう状況でこういう気持ち、ということを説明して、モデル自身の言葉で話してもらうようにもしています。

 

溝口:あ、それは是枝裕和監督の子役の演出と一緒ですね。……それと、「SHINWA 参 –震話-」では、物語もこっていて、屋外ロケと屋内撮影でカット数もけっこう多いですが、だいたい1チャプター何時間くらいで撮影されるのですか?

 

MATS:昔はそれこそ、ほとんどHシーンだけの作品だと3-4時間で撮影していましたけど、最近の、とくに「SHINWA 参 –震話-」のように作り込んだ作品だと、2日3日に分けて撮ることもあります。

 

溝口:わわわ、そうなると、自主制作の短編映画なみ、あるいはそれ以上の手間ひまですね。

 

KATS:そうです。だから、作り込んだ作品の合間には、先ほどお話した運動会とか料理を素でするだけの作品をはさんだりします。でも、そういった、作り込んでいない作品が成立するのは、それぞれのモデルのキャラクターが際立っているからこそで、設定ものとは別の、モデルの魅力をお見せできている、と自負しています。

 

溝口:なるほど。BOYSLABは、「実写版BL(ラブとセックスこみ)」を作品として提供しているわけですが、男性スタッフと男性モデルでどうしてそれが可能なのかが、今日、お話をうかがって、いろいろと理解できるところがありました。それと、モデルさんたちのモデルとしての人生のありかたが、既存の性的指向の二項対立そのものを無効化する壮大な実験とも呼べる様相を呈していることは、掛け値なしに興味深いです。BL研究家としてだけでなく、セクシュアリティ論、ジェンダー論、クィア理論の観点からも。その「実験」が、より安全に続いていくためにも、今回の記事で女性視聴者が増えるといいなと思います。

 

KATS:お客様の中にはもともとBLが好きだったわけではなく、BOYSLABを知ったことでBLが好きになったとおっしゃってくれる方もいます。BOYSLABが性的指向に対する偏見を緩和させるお手伝いができているのだとしたらとても嬉しいことです。BLが好きという方も、このモデルのルックスが好きという方も、男性でも女性でも、そういった概念をすべて取っ払って多くの方にBOYSLABを楽しんでいただけたらと願っています。

 

おわり

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