ビアンに教わった大切なこと

成長できない3つの言葉

①無理

②ダメ

③もうヤダ

 

人はどんなに年を重ね知恵を得ても、逆境や社会という大きな渦に飲み込まれてしまう。日本とは何もかも異なる外国暮らしは、私のようなひ弱な人間に容赦なく大きな牙を向けてくる。まあ一言で言うと、単なる愚痴なんだけど……。

 

辞めると宣言したレストランも、人手不足と今週から始まる地元の大きな祭りの為に辞められない。3Kの汚い・キツい・危険プラス外国人にだけ偽りの契約書を交わすという強行にでる職場は、スペインでも珍しくないようだ。私と某南米人の契約だけパート扱い、そして私だけ給与が見習い以下という職場は果たして吉と出たのか凶と出たのか……スペイン語が下手くそで経験がない私を雇用してくれて感謝!と思える自分もいれば、「あいつら、なんなの!」と憤慨する自分が常に共存。

 

しかし私の旦那はすれ違いの生活と、ナメた契約にお冠だ。直にもう辞めるから、と言いくるめてもどうにも彼の怒りのアクセルは収まらない。きっともっと自分が根性入れて、魚に愛情を注ぎ、そして包丁裁きに磨きをかければ立派な寿司職人になれるのかもしれない。でもそんな将来は、今のところいらない。

 

上記の3つの逃げ言葉を毎日つぶやき勤務する私のもとに、1人のエンジェルが舞い降りた。エンジェルって呼ぶほど繊細でも愛嬌がある訳ではない、でもなんだか安心する彼女の存在。数ヶ月前他の就職先を見つけたからと、さっさと職場を去ったステファニアが出戻りしてきた。なんでも素行が悪く職場をクビになり、路頭に迷っていたところを拾われたらしい。彼女がどんなことをやらかしたのか?なんで頭を刈り上げているのか?など聞きたいことは沢山あるが、わざわざ尋ねるのも面倒なので別にいいや。

 

同僚には私を含めゲイ2人、レズビアン1人がいるが、件のステファニアもレズビアン。彼女の言葉使いに、タバコを蒸す仕草、そして足元のキツい蛍光色のスニーカーを見れば一目瞭然。誰も彼女にいちいち訪ねたりはしないけれど、いわゆる暗黙の了解というヤツだ。

 

国が違っても基本ゲイにレズビアンの見分け方は類似しているし(最近的中率はあまりよくない……)、類は友を呼ぶという言葉もある。まあそんな性のボーダーラインが薄い職場でナンダカンダ毎日過ごしている訳だが、どうもレズビアン2人の化学反応は良好ではないようだ。

 

どんな人間にも性格の不一致は存在するし、性の嗜好が同じだからといって、痛みや幸せをどんな時も分かち合える訳ではない。私は給仕のゲイとまあ仲良くやっているし、相手がゲイだからケツを引っぱたいたりしたりしてもOK、そこそこゲイのスキンシップを楽しんでいる。(それ以上の関係は勿論ない!)

 

ただステファニアともう1人のビアンエリカは異なる。2人ともに短髪、同系のスニーカーそしてかさ張る大きさのGショックを持つ共通点がありながら、挨拶すら交わさない。キッチン内に不穏な雰囲気が漂い、なんともやりづらい。アンダルシア出身のステファニアに、イビサっ子のエリカはきっと育った環境が違うから、価値観も分かり合えない?いいや、そんなことを言ったら島国日本で生まれた純日本人の自分はどうなる!?

 

考えてみた。なんでか?

 

きっと答えはこうだ。

 

  • ゲイ(私と給仕)の仲がよい⇒自分がネコで相手がタチで性のパズリングがハマる。 
  • レズビアンの喧嘩が絶えない⇒両方ともタチ

 

多分レズビアンの中でも異なる性の立ち位置が問題になっているのだろう。(推測の域)油に水が溶け込まないように、二人の関係はいつも煮え切らない。アンダルシア訛りのスペイン語とカタラン語でまくし立てる2人の罵声は、日々キッチンを飛び越えて客席まで響き渡る。

 

周りがどうこう言えど、基本2人の関係は変わらない。それが彼女達という人間なのだから。そんな彼らを横目に私は今日も、簡単にできる作業を難しく遂行し(無意識)、怒られたりしている。大きなため息と、「もう嫌だ」こんな一言が溢れる瞬間に、エリカがかけてくれる言葉。

 

「No Pasa Nada(心配ないよ)」

 

そしてフライヤーの油が顔に飛んでこないか戦々恐々としている私を、思い切り後ろからドツいて笑うステファニア。

 

結局私という小さな人間を支えてくれる人間、それが彼女達の言動だったりする。多忙に生きていると“感謝の気持ち”を忘れがちになってくる。だけどどんな苦境にいても救いの手を伸ばしてくれる唯一の存在こそが、Co-Workerなのだ。別にゲイだからレズビアンだから、なんて関係ない。人を愛することができる人間が紡ぐ言葉に、心をくすぐる背中の押し合いこそが(揚げ物の際は背中押すな!)、生きていく上で大切になってくる。なんて、2人から改めて教わった、そんな気がした秋の訪れ。

 

いや、でも私絶対祭りが終わったら辞めますけどね!

 

(誰か興味ある方、いません?私が推薦しておきますよ!興味がある方、メールください)

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