第68回 セックスがしたいのに恋人を探す人、恋がしたいのに体だけを求める人

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「人生を分かち合える恋人が欲しいだけなのに、出会うのは体目的の人ばかり」

 

カミングアウトしたばかりのゲイの男の子は厳しい現実を目の当たりにして落ち込んでいた。平気でウソをつく人たちの多さにガッカリしてすっかり人間不信である。それも仕方がない。半年以上もネットで恋人を募集しているのに何も収穫がないどころか、相手の気持ちを考慮しない男たちに弄ばれて、経験の浅い彼はボロボロになっていた。

 

ある日、どん底にいた彼の前に笑顔が素敵な男性が現れた。少し年上のその人は同じように人生を分かち合える存在を探していた。すぐに打ち解けた二人はロマンチックな夜を過ごして、シングルベッドの上で抱き合いながら付き合うことを決めた。やっと探していたものを見つけたと安心した次の朝、その男性は幽霊のように姿を消した。電話をしても、メールを送っても、全く連絡が取れない。また裏切られたと気付いて彼は失望した。一週間以上も食べ物が喉を通らなかった。そんな人にしか出会えない自分自身に嫌悪感まで覚えた。

 

行方不明となった男性はもしかしたら本当に求めていたものを上手にコミュニケートできなかったのかもしれない。周りからのプレッシャーが強い環境で恋愛をすれば素直になれないこともある。罪悪感や羞恥心を抱えてセックスすれば自分を守るためにウソをつくこともある。本当はセックスがしたいのにデート相手を探す人。本当は恋人が欲しいのにセックスを求める人。何が欲しいのかもわからないから行き当たりばったりな人。そんな人たちにたくさん出会ってきた。

 

素直じゃない恋愛マーケットで恋人を探すのは至難の業である。人生を分かち合えるほどの人を見つける前に、本音か建前かわからない曖昧なメッセージを嗅ぎ分ける必要がある。そして、気が遠くなるような作業をいくら続けたところで、自分が望んでいるものに出会える保証はない。それでも諦めずに作業を続けるか、目の前にあるもので妥協するか、それとも諦めて違う道を進むか。悩んでいるうちに本来の目標さえわからなくなる。そうやって混乱したまま出会いを求めては、期待を裏切られて周りと自分を傷付けてしまう。

 

カミングアウトしたばかりの男の子も、その男の子を傷付けた人たちも、案外そんなに遠くない場所にいるのだろう。もちろん、相手の気持ちを利用する詐欺師や、自分の欲しいものを得れば満足するタチの悪い人もいる。しかし、多くの人たちは自分の向かう場所もわからずに、何かにしがみ付こうと必死だ。「こうあるべき」だという考えを追いかけながら、そこに馴染めない自分を責める。あてもなく彷徨う苦しみのせいで他人を思いやることさえできなくなる。もっと自由に恋愛やセックスができるのなら、こんな問題に悩まされる必要もないのかもしれないが、この世界は狭い箱の中に人を閉じ込めるのが大好きだ。

 

「また相談相手が必要になったらいつでも連絡して」

 

落ち込んでいた男の子にかける言葉はそれくらいしかなかった。彼がこのシビアな世界をサバイバルできる柔軟な人になれるように祈りながら、自分もそうなりたいと願った。

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