第70回 信頼関係は時間をかけて築くもの

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「恋人を愛しているから、無条件で信じてあげたい」

 

そんなナイーブなことを真顔で語る友達を側から見ていると心配で仕方がない。信頼という便利な言葉を使って、交わしにくいコミュニケーションを避ける人があまりに多いからだ。恋人を信じたいという気持ちはよくわかる。世界全体がピンク色にしか見えないラブラブなカップルにとって、嘘だとか浮気だとかダークな話は雰囲気ぶち壊しである。しかし、非現実的な期待をして最愛の人に裏切られた人たちを山ほど目撃してきた。自分も同じ道を通った。

 

人間は嘘つきである。見栄を張るために嘘をつく人もいれば、他人を利用したいから嘘をつく人もいる。恐怖心から自分を守るために嘘をつく人だっている。嘘つきは泥棒の始まりと言っても、生きていれば多少の嘘は避けられない。嘘つきは絶対悪だと主張する人だってきっと嘘と共に生きている。本音だけでは社会が成り立たないからだ。だからといって、人間不信を勧めているわけではない。信頼し、信頼されるのは欠かせないことだ。他人を疑いながら生きるのは気持ち良くない。

 

関係が親しいほど裏切られたときのダメージも大きい。そういう意味でも恋人を闇雲に信じるのは危なっかしい。恋人同士だからコンドームを使わなくても良いと考える人は珍しくないが、リスクの高い行為なのにちゃんとコミュニケーションしている人は意外と少ない。恋人の浮気と共に性感染症も発覚しては、信頼は何の役にも立たない。ロマンチックではないかもしれないが、現実的な話も含めて地道に信頼関係を築くことはとても大事だ。

 

その信頼関係を築くには時間がかかる。どう頑張ったところでお互いが考えることはわからないから、そのプロセスに終わりはない。恋愛関係はゆっくりと信頼関係を築いていく過程だと考えてもいい。思いやりの言葉を交わしたり、約束を守ったり、相手をリスペクトし支えることで、信頼関係は育まれていく。ところが、どんなに丁寧に築いた信頼関係も些細なことで儚く崩れ去る。築くのは大変なのに、壊すのは簡単だ。そして、一度壊れた信頼関係を修復するのはもっと時間と労力を要求する。

 

「結局どっちなの? 信じた方がいいの? 信じない方がいいの?」

 

この話になると、矛盾した意見に必ず混乱する人が出てくる。自分も原稿を書きながら髪の毛をかきむしっている。白黒しないこの世界と同じように、この問題にも曖昧な回答しかない。どんなに愛しい恋人だろうと、嘘をつく可能性のある生き物として信じて、一緒に信頼関係を築いていけばいい。リスクを理解した上で前に進めば、転んだときのショックは多少は和らぐだろう。もちろん、転べば痛いことには変わりはない。そこはどうしようもないのかもしれない。

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