第72回 ポジティブな別れ方って素敵

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「あの二人、別れたのにどうして仲が良いの?」

 

友達は数年付き合った元彼と別れた後も驚くほど仲睦まじい関係を維持している。破局後もそのままルームメイトとして同じ屋根の下で暮らし続けているし、一緒に外食やショッピングをすることもよくある。側から見れば、付き合っている状態とそう変わらない。面白いことに、彼らが仲良くすればするほど周りはますます混乱する。自分でさえ、二人が既に恋人同士ではないということを忘れてしまうことがある。彼らの関係がこうも他人の目に不自然に映るのはなぜだろう。

 

別れや離婚はネガティブなものだという認識がある。メディアで見る破局は悲しい出来事で、離婚は人生の失敗として描かれることが多い。ハッピーエンディングの王座には障害を乗り越えて叶った恋が誇らしげに座っている。おとぎ話のように「そして、二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ」にはならないのが人生だが、それを期待する人は少なくない。末長く続く恋愛にこそ価値があるという考え方がある限り、終止符に価値を見出すことは難しい。だから、別れたのに幸せそうに振る舞う人たちは異質なのだろう。

 

よく考えてば筋の通らない話である。人間は変化する生き物だ。遊ぶことに夢中な子供から受験勉強に必死な学生になる人もいれば、飲み会ばかりしている大学生から残業ばかりする会社員になる人もいる。そうした変化に伴って、価値観や考え方が変われば、周りの人だって入れ替わる。一緒になって変化する恋人ならばいいが、人生を歩むペースは人それぞれ。常に隣を歩いてくれる人は存在しない。20代に出会った恋人と、これからも30代、50代、70代と最期まで関係を維持しろというのは少し残酷なルールである。

 

数年も共に歩いてきた彼氏との間にギャップを感じるようになった友達も凄く戸惑ったという。特に相手に問題があったわけではない。相手を思う気持ちがなくなったわけでもない。それでも、何か大切なものが変わってしまったのは確かである。冷静になって彼氏と話し合ったところ、自然と別れようという結論に辿り着いた。別れた後もお互いを思いやる気持ちは消えず、ルームメイトとしてしばらく暮らそうということに決めた。周りから見れば別れたように見えないかもしれないが、彼らは彼らなりのペースで別々の道を歩み始めている。

 

人生の分かれ道に立って、自分と恋人が求める未来が違っているのなら「さようなら」もオプションの一つである。もちろん、ここまで親しくなった人と離れ離れになるのは寂しい。物理的な距離感が変わらなくても、もう昨日までの関係とは違っている。しかし、それをネガティブなものとして扱う必要はない。そんな別れはきっと卒業式みたいなものだ。慣れ親しんだ環境を離れるのは悲しいが、そこから旅立てば新しい冒険が待っている。そこで培った経験を次の機会に活かせばいい。どうせ別れるのなら、そんな素敵な破局がしたいものだ。

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