『どうせあなたにはわからない』という、自家製の孤独を乗り越えるには……映画『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』

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いわゆる「LGBTs」が登場する作品で、地雷を見分けるポイントは以下の3つだと思っている。

ひとつ。ゲイ全員にオネエ言葉をしゃべらせていないかどうか。

ふたつ。「愛する自由……」「秘められた禁断の世界……」的な、古臭いステレオタイプ表現になっていないかどうか。

そして、みっつ。一番大事なとこ。LGBTsとそうでない人を、超単純に対立させていないかどうかだ。

LGBTsと非LGBTsを単純に対立させるのは、つまらない。具体的に言うと、「この脚本家は、合コンにブスを連れていくことで自分を引きたてようとする安い女みたいに、マジョリティをわかりやすい悪役にすることでLGBTsをキラキラさせようとしていて安っぽいなあ^^」ってなる。

もちろん、LGBTsをすごいキモく描いたりとか、良き相談役の毒舌オネエを出したりすることで、正常(笑)な男女の恋愛を引き立てようとする恋愛ドラマも同様に安っぽい。さらに、この単純な対立に「登場人物が死ぬ」まで加わるともう、もうね、「やっすwwwww激安大バーゲンwwwwwww」ってなる。

それを踏まえた上で、こちらの映画の予告編を見てみよう。

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(画像をクリックすると、YouTubeで動画が再生されます)

「感動の物語……」
「今 私はガンにかかっています」
「愛があなたを強くする。」

……

おやっ?

こ、これは……

地雷なのでは???? ^^

そう身構えたが、「まぁエレンペイジとジュリアンムーアのラブラブガチ百合ボンバーが観られるならいっか♡」と思った。映画館に行った。

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handsoflove.jpスクリーンショット、2016年11月閲覧)

映画ファンの皆さんには言うまでもないが、念のため。

左のイケタチ風な凛々しい女性が、『キッズ・オールライト』『アリスのままで』『ハンガーゲーム』等に出演したジュリアン・ムーア。本作ではガチイケエリート刑事役である。すごい。逮捕されたさがすごい。

で、右のジャリタチ系な子犬ちゃんが、『ジュノ』『X-MEN』とかに出てるエレン・ペイジ。本作では、バイクとわんことスポーツが大好きな年下カノジョをやっている。ツナギ姿でスパナをぶん回すエンジニアってところもポイント高い。

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(画像をクリックすると、YouTubeで動画が再生されます)

そう。映画『ハンズ・オブ・ラヴ』は、わんこ系年下カノジョにわんわんくんくんされちゃって「でも、私……すごく年上よ……?」とか言いながらオチてしまうガチイケエリート刑事が主人公の話なのだ。もう、ガチ百合。ガチ百合ですよお嬢さん。

それならそうと早く言ってくれればよかったのに!! なんか勝手に「彼女死んだ上に差別されたけど強く生きていくね。だって私は愛する自由を知るLGBTだから(涙を拭いてキリッ)」みたいな作品なのかと思っちゃったじゃん!!

で、迫りくるガチ百合ボンバーシーンに「もうほんと末永く爆発しろ」とか思いながら見ていると、アレが始まる。

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(画像をクリックすると、YouTubeで動画が再生されます)

「同性パートナーには認められない」
「俺達の税金が レズに行くのか」

あっ……。これ、泣いちゃうやつだ……。

ここで、この記事の最初の話に戻ろう。「けなげにがんばるLGBTsと、差別する悪役のマジョリティ」。これほどつまらない構図はない。がんばる障害者で感動を押し売りする安いテレビ番組みたいだ。事実は小説よりも奇なり、というように、現実は映画やテレビより複雑である。それなのに「差別つらいけど負けないぞ☆愛と自由~!」みたいな感じで単純化したLGBTsを描かれると、「ははっwwwwwwwwwwwwwwwすごいドロドロの百合くれ」って気持ちになる。

で、この映画は、ちゃんとドロドロしてくれる。

そして、描いているのは……ネタバレしないように、詳しい内容は避けるけど……「差別辛いのにがんばって生きるLGBTs」ではない。『どうせあなたにはわからない』という、自家製の孤独とどう向き合うかというテーマなのである。

「ノンケだからこんなことで悩んだことないよね」
「男はこんなことで苦労しないもんね」
「どうせあの人には分からないと思うから言わないでおこう」

こういう、本人と対話することなしに、「男だから」「ノンケだから」などとカテゴリで決めつけ、「どうせあなたにはわからない」と閉じこもってしまう態度のことを、私は、“自家製の孤独”と呼ぶ。自家製の孤独は確かに、自分を守ってくれたりもする。それに、「ノンケってノンキよね~ウチらの気持ちなんかわからないわ」系の悪口で、すげぇ狭い範囲において孤独が癒された錯覚に酔わせてくれたりもする。でも、その中に閉じこもる限り……「男」やら「ノンケ」やらである前の、その人自身と対話を続けていこうとしない限り、自分ってやつは、勝手に孤独でありつづけるのだ。自分自身の成長を止め、周りの人までもをさみしくする。この自家製の孤独を、打ち破るのは自分の意思だ。

映画の終わり、ニクい演出がある。「ああ、この人の、“自家製の孤独”との闘いは、ほんとうにあったことなのだな」という、映画と現実をつなげる演出がなされている。そして。

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エンディングに流れる、マイリー・サイラスによるテーマ曲「Hands of Love」。本編では、ちゃんと日本語字幕がついている。普通に読むと、なんかこう「猟犬が吠える……戦のダンスに」系のよくわからない歌詞なんだけど(参考)、映画を観た上で聴くと、意味がわかる。ものすごく沁みる。

映画「ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気」。2016年11月26日から日本でも公開され、日本語公式サイトも開設されている。年齢が、性別が、人種が、セクシュアリティが、社会的地位が、給料が、なにかが自分と違うと感じた相手に「どうせあなたにはわからない」と思った経験のある人には、ぜひ観に行ってほしい。“自家製の孤独”から自由になるヒントに、きっとあなたも出会えるはずだ。

 2016/11/30 07:00    Comment  コラム   映画         1   3    
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