旦那が欲しかったプレゼント

一番メンドクサイ時期が訪れた。寒くて財布がスッカラカンになるクリスマス。大人になって今更クリスマスなんてアホらし、なんて思いながらKFCのチキンにしゃぶりついていた20代。スペインに来てからKFCなんて食べてない、街に1店舗のみ営業している我らが街のKFCはさぞかし多忙なクリスマスだったのだろう。と思いきや、やっぱりクリスマスにあの味を食べる習慣はスペインにはないようだ。もはや日本人のチキン愛はスペイン人すらも驚かせる事象になっている。

 

さて私達はつい先週街一番のアニオタイベントが幕を閉じ、本格的に年末へのカウントダウンを切り出したばかり。センターの電工装飾が落下して怪我人が出たり、今更スターバックスが郊外のモールに出来たりと、やっぱりスペインの冬は頓珍漢である。

 

私は新規一転新しい職場に飛び込み、スペイン語が出来ないくせにフロントで接客係をしたりしている。いやはや魚を捌いたり、コメまみれになりながらエセ寿司などを握ることがない安心感、そして充足感は半端ない。始めての仕事がこんなにも楽しくて、そして自分にフィットするなんて嬉しい誤算だ。

 

ホテルで働き、家でキーボードを叩く、時間を見計らってはスペイン語。旦那の世話はいつも後回し。ウサギの掃除当番もいつの間にか、旦那になってしまった。独身時代と異なり全ての自由時間を自分の為に使えない、そんな不便さを実感しながらも、なんだかんだ自分本位で過ごす毎日に若干反省。

 

そんな多忙な日々を更に苛立たせるのがクリスマスイブのディナーである。特にクリスマス前後に体調を崩した私にとって、義理の両親との微妙な間があるディナーは出来るなら避けたいものだ……しかし例年と同じく、義理母は食材だけ買い込み、カラオケへ。今年も私と旦那が用意された食材で夕食の準備に取り掛かるのだ。糖尿病の義理父を気にすることなくメロンにケーキ、自由気ままな義理母の行動は変わることはない。

 

結局私はダウン、彼1人で今年のイブディナーは遂行された。可もなく不可もないスペインの食事、ホワイトアスパラガスにエビ、そしてオリーブは必需品だ。塩とオイルだけで味付けされた味気ない食事は、マイ醤油を持ち込む中国人の心中を察知するのに十分である。いつもの耳をつく親子喧嘩、そしてまくし立てるようなスペイン語で騒ぐ小さな小さな家族。大した親孝行も出来ていない、白状な息子の私にとって、どこか懐かしく感じるのは慣れ?それともこれこそが私が欲していたものだから?

 

色んな思いが交差する中終えたクリスマスディナーだが、未だに彼へのプレゼントを買っていない。というのも彼が特別何も欲しない。欲しいものはいつも自分で買うし、彼の物欲は大概満たされているから厄介なのだ。

 

出番を控えた150ユーロは未だに日の目を見ることなく、封筒の中で眠ってる。いい加減イライラして「今年は何が欲しいの? 言ってくんなきゃ、何も買えないじゃん!」と毒づく私に彼が一言。

 

「ブーツも壊れたから欲しい、でも新しいファイナルファンタジーはもう誕生日プレゼントで貰ったしなあ。でも一番欲しいものはブーツでもゲームでもないんだよ」

 

スペイン人のくせにまどろっこしい! 早く欲しいもの言ってくんないと、クリスマス終わっちゃうじゃん!(実際記事を書いている時点で25日は過ぎている)とブツブツ言うと旦那が呟く。

 

「一番欲しいものは君との時間だよ。他には何もイラナイ」

 

………

 

なに、これ。自分空気読めない悪嫁!? 感情表現が苦手な私はどう対処していいのか分からず、何も言い返せなくなってしまった。

 

確かに夫婦生活において二人の時間は何よりも大切なものだ。しかし結婚から早3年、光陰矢の如しで過ぎる時間の中で、ついつい忘れてしまうのが愛のあり方。言葉も愛情表現も価値観も全て異なるから分からないお互いの世界観。ワガママで自分本位な私はいつも生活の為、お金は将来に必要だから!とせっせと理論武装して多忙な日々を送ってきた。

 

仕事があって、忙しくて、そんなの当たり前。結婚したのなら、いつか子どもが欲しいのならば、未来を見据えて突っ走るのが正解に決まってる。そんな大前提を掲げて生活してきた昨今、私の常識は彼の一言によって崩れてしまった。

 

砂で出来た私の小さな、だけど頑丈な城。そんなちっぽけなものは、大きな愛という小波に飲まれて跡形もなく消えてしまう、まさに晴天の霹靂である。

 

向こう見ずな私の生活観が彼のココロに穴を開けていたとするのなら……結婚という2文字そして、彼の愛情の深さをもう1度ココロに刻み込まなければならない。きっと彼が望む愛はイソギンチャクとクマノミみたいな関係なのだろう。恋愛下手は人間が本当の愛を知らずに結婚すると、こんな甘い罠に仕掛けられると右往左往してしまうものだ。というわけで2017年はもう少し夫婦の時間を大切にしてみようと思う。だけど早く物理的な物欲も示してくれないと困るのだ!

 

P.S

無政府状態から脱却したスペインは、とうとう代理母合法案に向けて本格的なペーパーワークに入った模様。神様、今度こそはお願い!!(期待はしない)

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