第78回 片思いの彼と二人目のパートナー

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寒いトロントの冬を乗り切ろうとショッピングモールで暖かいセーターを探していると、密かに片思いを寄せている人が自分に向かって歩いてくるのが見えた。片思いといっても、思春期の初恋のような切実なものではなく、色んな意味でもっと近寄りたいと願うカジュアルな恋だ。しかし、それでも片思いは片思い。相手との距離が縮まるにつれて顔が真っ赤になって、頭の中が真っ白になった。目と目が合って、相手の笑顔にときめいて、ぎゅっとハグをしながら平然を装う。いつもの挨拶なのにどうしてこんなに心拍数が上がるのか。あんまり緊張しすぎて、彼の後ろに立つ二人にちっとも気が付かなかった。

 

「彼は私のパートナー……」

 

片思いの相手のパートナーを紹介されるのは複雑な瞬間だ。ショックを受けているとバレないように笑顔を維持しつつ、彼のパートナーと握手をした。男前で笑顔が可愛い人だ。絵に描いたような素敵なカップルの横で、自分が小さくなっていくのを感じた。ところが、サプライズはそれだけではなかった。

 

「こっちの彼は私たちのパートナー……」

 

一瞬耳を疑ったが、どうやらもう一人パートナーを紹介されたようだ。複数の人と恋愛関係を築くポリアモリーというコンセプトを知らなかったわけではない。こうして実際に身近でポリアモリーな関係と出会う機会が少ないからちょっと驚いただけである。あんまりワクワクしているとバレないように笑顔をこらえて、もう一人のパートナーと握手をした。綺麗な目をした人だ。そんなラブラブな三人を見ているとポカポカになった。

 

愛の形は様々というが、一対一の恋愛以外を目にする機会は少ない。ポリアモリーな恋愛を選ぶ人の数が少ないかもしれない。または、一夫一妻であるモノガミーなカップルが善で、それ以外は悪という価値観のせいで他のオプションが遮られているのかもしれない。本来、そんな考え方に縛られる必要のないゲイコミュニティでさえ、オープンリレーションシップやポリアモリーの居場所は限られている。同性婚を求める戦いで平等な権利を勝ち取ろうとする過程で、パートナーを見つけて結婚してこそ幸せという価値観がゲイの間でも優勢になった。一般社会に受け入れられるために、「健全」なゲイカップルのイメージばかりが肯定されるようになった。一方で、その陰に隠れてそうした価値観やイメージに当てはまらない恋愛関係をクローゼットの中に隠す人が増えている。実に皮肉なことだ。だからこそ、オープンにポリアモリーな恋愛関係を楽しむ人たちに出会うと嬉しくなる。

 

柔らかいウールのセーターを見つけてレジで会計を済ませていると、買い物している彼らの姿が目に入った。三人で笑いながらウィンタージャケットを試着していて実に楽しそうである。パートナーの追加募集をしているのなら、勇気を出して応募してみようかな。

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