第85回 誰も若いままではいられない

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40歳になったばかりなのに出会い系のプロフィールではまだ35歳。そうやってサバを読む人は少なくない。若い頃は年齢なんて数字でしかないと思っていた。しかし、30代に入ってから年齢という数字がどれだけ自分の価値を上げ下げするのかを痛感している。若さばかり重視する世界で年老いることは恐ろしい。自分が40代や50代に突入したら、プレッシャーに負けて年齢を誤魔化してしまうかもしれない。残念ながら時間を巻き戻すことはできない。こうして毎年大きくなっていく数字と上手に付き合っていきたいが、これが難しい。

 

いつものように洗い立ての顔に保湿クリームを塗っていると、見慣れた顔が鏡の中に映っている。自分が見た限りそこまで20代の頃と変わっていないつもりだが、周りからはどう見えるのだろう。毎日見ているから気付いていないだけで、生え際が予想以上に後退していたらどうしよう。このまま老化の一途を辿るだけで、もう若返ることはない。おでこに出来た吹き出物をニキビと呼ぶことはもうない。そんなことばかり考えていたら、いつもより保湿クリームを塗りすぎて顔が真っ白になってしまった。冷静になってみよう。どうして私はこんなに年を重ねていくことに恐怖感を覚えるのだろう。見た目が自然と劣化していく以上の理由がそこにはあるのかもしれない。

 

20年ぶりにゲイコミュニティに復帰したら、自分の居場所は無くなっていた」

 

長い年月を共にしたパートナーと離婚し、50代から独身のゲイ男性としてゲイコミュニティで新しい恋を探している友人は大きな壁に直面している。年齢を口にしただけで男に逃げられて、積極的にアプローチされたと思えば金目当て。ゲイバーやクラブに行っても若い人ばかりで、自分と同じ年齢のゲイにはほとんど出会えない。80年代からゲイコミュニティのために居場所を築く活動に関わってきたにも関わらず、彼はそのゲイコミュニティの中で孤立している。トロントのゲイコミュニティは若い人たち中心の場所になってしまったからだ。

 

その移り変わりを説明する理由はたくさんある。80年代から90年代にかけてエイズ危機が直撃した年上の世代はごっそりゲイコミュニティから欠けている。同性婚が認められて、グラインダーのようなアプリが登場して、物理的なゲイコミュニティの必要性もどんどん減っていった。仕事に就いて、パートナーを見つけて、郊外に引っ越して、ゲイコミュニティとの関わりは年に一度プライドパレードを見るくらいのゲイライフスタイルが一般的になってしまった。いつも人で溢れていたチャーチストリートは昔と比べると随分寂しい場所になった。

 

自分が年老いたときにサポートを得られるゲイコミュニティは期待しない方がいいのかもしれない。若さというステータスを失ったときに居場所を見つけられずに孤立したくない。そんな不安が老いることへの恐怖心を駆り立てているのだろう。それならば、できることは二つしかない。いつまでも若いままでいるか、老いた自分を支えてくれるようなコミュニティを築こう。さて、今のうちに整形外科のアポイントメントでも予約しておこうか。

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