ゲイ差別より辛いこと~チンチョンに泣いた夜~

早いものでホテルで働きだして早2ヶ月……つたないスペイン語しか話せないのに、何故私がレセプションにいるのか未だに分からない。私のような異邦人が経済低迷国の田舎町で生き抜くには、根気と精神力だけじゃやっていけない。時には運とコネが生きる原動力を生むことだってあるのだ。

 

 

もういやだ!と飛び出したレストラン。怠惰な国民性の印象を隠せないスペインだけど、やっぱり飲食業界は日本と同じく過酷な環境。とても意外ではあるけれど、スペインにおいてキッチン・給仕の仕事はある種の自己犠牲精神がなければ務まらないと考えられている。エーンと泣きだして飛び出した訳ではないけれど、夫婦のすれ違いを生んだワークタイムは、私達に距離感と言う何とも嬉しくない置き土産を置いていった。

 

 

スペインという新天地で旦那と出会って結婚し早3年。まさか働きに出ることが、夫婦のキズナにヒビを入れるとは思わなかった。生きる為に働く、だけど働けば働く程夫婦生活に悪影響を及ぼす。何たる負のループであろうか……二人で誓った将来を、こんなクソに私達の生活を壊されてたまるか!そして私の身体も限界を迎えていた訳で、しばしの休養を挟み、新たな転職先に飛び込んだという訳である。

 

 

工業地帯にある巨大なモーテル、それが私の新しい職場。中心部から離れた格段交通の便が悪い場所にあるホテル。周りには革工場だとかガレージだとかよくわからない工場が密集している、決してよい環境に恵まれているとは言えない。ちょうどマドリードとバルセロナの真ん中辺りに位置しているからか、ビジネスマンだけでなく肉体系の労働者達もよく訪れる安宿だ。(1泊4000円位。)

 

 

とりわけアジア人など見かけない場所だけあり、直毛・黄色人種・草食系の私はとりわけ目立って仕方ない。へたくそなスペイン語、英語もスパングリッシュ化していることもあり、正直周りに迷惑をかけてしまって本当に申し訳ないと反省反省の毎日な訳で……それでもホテルの従業員は私以外全員女性なのが、唯一の救い。ガーガーうるさいオッサン上司にお局がいない分、精神的にまだ救われる。

 

 

まあレセプションというホテルの顔の部分に立つということは、それなりに覚悟や責任が重いのだが。ツーカーでは決しておさまらない質疑応答に、酔っ払いの相手、そして恐怖の電話対応に応じなければならない訳だから……しかしレストラン勤務と異なり、イケメン観察や気になるお客(いろんな意味で)のFacebook チェック等、従業員でしか出来ないささやかな楽しみを同僚と分かちあう小さな幸せ。

 

 

ゲイカップルもレズビアン達も常連なモーテルだけど、やっぱり楽しい側面だけじゃない。お客と常に接する仕事が故に逃げられない。外国人だからとか、スペイン語がへたくそとか、そんなの関係ない。それでも容赦なく私を追い詰めるのが、そう人種差別である。もっともっと明るくて、前向きな話題を書きたいが、ここ最近で一番グサッと来たのがアジア人軽視の差別用語……

 

 

「チンチョン」

 

 

である。最初は??だったが、よくよく考えてみるとハッとする。今まで何度となく中国人、中国人と叫ばれ生活してきたので、反射的に中国人ではありません。と口走ってしまうのが情けない……

 

 

「チンチョン」とはそれはそれは悪意がこもった言葉であり、私と同僚はしばしその客の悪態と言葉に唖然としたのは言うまでもない。今まで石を投げられたり、街かどで暴行されたりしたけれど(全部留学先)、比較的まとも(だと思いたい)な国スペインで直面した究極のアジア人差別……

 

 

ふつふつと湧き上がる怒りの感情を抑えるのに、精一杯の私。ゲイ差別など受けたことのないスペインでも、やっぱりアジア人は嫌われているのだ。悲しい現実を知った夜。月夜に照らされた夜道を歩きながら、悔し涙を流す。

 

 

自分が何をした?アジア人がホテルで接客しちゃ悪いのか?負の堂々巡りがまたまた私の思考回路を狂わせる。旦那に怒りの丈をぶつけてみると、そいつはカタラン(カタルーニャ人)だからしょうがない、そんなことを気にしても始まらないと言うけれど。やっぱりこみ上げる悔しさに屈辱は、客に向けることも自分の中で消化することも出来ず、結局はいつものごとくまん丸ウサギに向かうのだ。

 

 

スペインにはそれはそれは多くの外国人移住者で溢れてる。アフリカ人にアジア人、だけど誰も歓迎されない。ゲイにレズビアンに寛容ではあるけれど、やっぱり移民には敏感なのだ……

 

 

因みにその差別野郎は、ホテルに売春婦を連れ込み、パコパコしてスッキリ顔で帰宅。奥さんに匿名メールでも送ってやろうか!?とも思ったけれど、めんどくさいことはもうごめんなので、チンチョン差別は今回のコラムネタへと変換してもうお終い!いつの時代を生きても、どんなに心が汚れても、差別だけは絶対にイカン!心からそう思う瞬間であった。

 

 

P,S

スペインの代理母法案は、とりあえず前向きに検討と言うお得意の先延ばしで保留になりました。まあ、想像通りでした。笑

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