第88回 長続きしない恋愛でもいいじゃない

 

2chopo 88

「私たち、長続きすると思う?」

高級ランジェリーショップのセールコーナーで隣にいる女友達に似合いそうなブラを物色していると、急にそんな質問を聞かれた。ついさっきまでバストのサイズがわからないと騒いでいた彼女は急に真顔になっている。ただでさえお店の人たちからストレートカップルだと勘違いされているのに、これでは誤解がもっと深まってしまう。後ろを振り向けば、遠くない距離で販売員がマネキンのブラを取り替えている。会話を盗み聞きしているのか、満面の笑みでウィンクまでくれた。もちろん、友達が意味する「私たち」はここでブラを眺めている私たちのことではない。

婚約を済まし、結婚式が控えている友達はちょっとマリッジブルーになっている。多くの人にとって、結婚は人生の一大イベントである。一人の人間を生涯のパートナーとして選び、それをみんなの前で誓うのだからプレッシャーもすごい。お金もかかっているから尚更だ。幸せの絶頂だと言われる結婚だが、不安で溺れやすい時期でもある。本当にこの人で良かったのだろうか?この道は自分が求めていたものだったのか?もしも、これが大きな間違いだったらどうしよう?そんな質問への答えを見つけたくてジタバタして、さらにどん底に落ちでいく。だから、そこから引きずり出してくれる助けの手が欲しくなるのかもしれない。

そんな友達の不安を駆り立てるもう一つの原因は、彼女たちがレズビアンのカップルだということである。盛大な結婚式の後に、長続きせずに別れてしまって「やっぱりレズビアンだから……」と思われたら悔しい。ゲイやレズビアンのカップルは長続きしないという偏見は珍しいものではない。末長く愛を育むゲイやレズビアンのカップルは多いが、同性愛差別という大きな壁を乗り越えるのは困難だ。そんな社会的な背景もあって、同性カップルが恋愛関係を長続きさせるのはストレートカップルより難易度が高いだろう。両親や親戚から冷たい視線をもらっているとすれば、余計に肩に力が入ってしまう。

「長続きしない恋愛でもいいじゃない」

不安をかき消してくれるような言葉を期待されていたのだろうが、これが自分のベストアンサーである。長続きするかどうかなんていう質問に答えはない。長続きするかどうか心配なら、遠い未来を見て恋愛をするのではなくて、もっと今この瞬間に集中して恋愛をすればいい。不安から逃げることはできない。生きている限り、頭の中のネガティブな声も存在し続ける。できることは視点を変えることだけである。周りの雑音が鬱陶しいなら、シャットアウトして自分の感情に目を向ければいい。きっとその方がもっと恋愛を素直に楽しめるはずだ。何より、レズビアンカップルだから長続きしなかったとしても、それが悪いというわけではない。

人生相談を終えた頃、友達に似合いそうなセクシーな黒いブラを見つけた。しかし、試着を終えた彼女は地味なベージュのブラを買うことに決めた。30分近くもセールコーナーを物色した労力が水の泡になって、思わず意地悪な冗談が口から飛び出した。

「今から勝負下着をケチってたら長続きしないよ!」

「私のカラダならどんな下着でもみんなイチコロだから大丈夫!」

彼女は自信満々にその冗談を撃ち落とした。

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