インタビュー:松中権さん(NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表) 

バブリーナ(以下、バブ):今日はよろしくおねがいします!

松中権(以下、松中):よろしくお願いします。

バブ:まずは早速なんですが「グッド・エイジング・エールズ」は、どんな経緯から設立されたのでしょうか?

松中:元々僕は自分がゲイだというのを何となくポジティブに捉えていて、ラッキーな事にゲイに生まれてあまりひどく悩む事もなかったので、そういう自分をどこかで生かしたいなと思っていて。広告会社に就職した当初から仕事としてLGBTについて取り組みたいなと思っていたんですが、会社が大きかったり古かったりでなかなか出来なかったんですね。転機になったのは、入社8年目にニューヨークに半年間ほど海外研修に行って、現地のイベント会社で仕事をする事になって。そこに「ノンプロフィット・ディヴィジョン」っていうニューヨークのNPOやNGOのイベントをサポートするセクションがあったんですね。アメリカのNPOって、企業がちゃんとお金を出してNPOをサポートして、NPOがそのお金を使ってイベント会社にきちんとプロの仕事をしてもらって、NPOが提供するサービスをより魅力あるものにしたりしてるんです。そういう社会って素敵だなと思って。また、ニューヨークには「エイジング・ケア」のLGBTの団体があって。日本ってHIV関係のNPO活動は活発だったけど、生活に根差したライフスタイルをサポートする団体はなかったので、そういう事も出来たらいいなと思って。でも新しいこと始めようって動いたキッカケは、男と別れたからなんですけど(笑)

バブ:まさか個人的な理由だったなんて(笑)自分が孤独死するかもしれない!と危機感を抱かれたって事ですよね?(笑)

松中:そうそうそうそう(笑)自分で企画書を作って友達に相談して。よく飲みの席なんかで「メゾン・ド・ヒミコみたいなLGBTの老人ホームを作りたいね」とか「あたしたち将来孤独だから一緒に住もうよ」なんて言うじゃないですか。でも具体的に動き始めている人もいないし、実際に手をつけはじめるのはどうかなって、一回みんなに提案して。でも僕らが入るのは30年後とか40年後になっちゃうし、今の60代70代のLGBTの方は結婚されている方も多いので、LGBTの老人ホーム設立は、将来の目標にしましょうという事になって。じゃあ今何が出来る?って考えた時に、もうちょっとLGBTが年を重ねていく事を楽しむ「グッド・エイジング」を目標にしようと。そこからお互いに「エール」を送り合おうという意味を込めて「グッド・エイジング・エールズ」という団体名になりました。

バブ:「グッド・エイジング」素敵な言葉ですね!他にもコンセプトがあれば教えて下さい。

松中:僕も好きな言葉なんです。「アンチ・エイジング」でなく「グッド・エイジング」でいきたいなと。若い人だといざ60歳で定年になって、自分が年金もらえるまで空白の5年間があるなんて知らなかったりするので、そういうお金の事ってすごくシビアだし、みんなでお金を稼ごうって話じゃないけど、人生とお金について考えるキッカケがあった方がいいよねって。あと介護について、自分が介護を受けるのはまだ先だけど、でも家族を抱えて、例えば長男だったりして結婚しなかったとしても親が介護が必要な状態になったりしたら、長男として介護について取り組まなければいけない。家族付き合いがあればそういう情報は入ってくるけど、どうしてもLGBTだとそういう情報が入ってこなかったりしますよね。それにあまり真面目な話をしたがらないですよね。夜飲みながら話したりもするんだけど、お酒がはいっちゃうと結局男の話になっちゃったりとかするので(笑)お酒が入ってしまう新宿2丁目ではない場所で、昼間にちょっと真面目な話を、だけど真面目すぎず楽しくやりましょうをコンセプトに、2010年の4月4日にスタートしました。

バブ:4月4日!オカマの節句からなんですね(笑)ちなみに設立当初のメンバーは何名だったんですか?

松中:最初は11名で立ち上げました。僕の友達から誘ったので、10人がゲイで1人はストレートの女性の方。同じ同性愛者なのにゲイとビアンって意外と遠い存在だったりするじゃないですか。僕も設立前はビアンの方との接点が全然なくって、僕の隣にゲイがいて、ノンケのイケメンがいて、ノンケの女性がいて、最後にようやくビアンに辿り着いたり(笑)それからはLGBT内での交流もひとつの目標としていて。現在はいろんなセクシャリティのメンバーがいます。

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バブ:メンバーは現在何名いらっしゃるんですか?

松中:20名ですね。さらにカラフルカフェのボランティアスタッフが10名います。

バブ:メンバーには様々な職業の方がいらっしゃると聞きました。どんなお仕事の方がいらっしゃるんですか?

松中:広告会社、IT関係、ファイナンシャルプランナー、一級建築士、外資系金融、介護関係、教育関係、公務員など、ほんとバラバラですね。経営者の方もいます。コンセプトがプロボノなので自分のプロフェッショナルをそれぞれ生かす方向でやっています。例えば僕もそうなんですけど、30代の人たちってなんとなく自分の仕事が落ち着いてきて、この世代って自分のセクシュアリティを前向きに捉えている人が多くて、だけどリブ活動は敷居が高いなーっていう人も多く、自分が出来る事をちょっと生かしたいなっていう人が集まっています。何を生かす?って考えた時に、自分の専門的なところを生かそうと。

バブ:なるほど。それでメンバーの方がそれぞれの専門分野で、ワークショップを開かれているんですね。

松中:そうですね。介護のプロジェクトだったら、介護の仕事に勤めている人がリーダーになって、他には自分がご両親の介護を経験した人が入って二人で進めたり。だけどそれだと専門的な話になってしまう恐れがあるので、まったく介護の知識や経験のないメンバーも入ってその3人をコアに、残りの17人のメンバーがアイデア出しなんかを手伝っています。全員で全部をやってしまうと時間が足りないので、プロジェクトごとにリーダーを決めてやっています。

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バブ:これまではどのような活動をされてきたんですか?

松中:ワークショップ、プロジェクト、イベントの3つを基軸にしています。ワークショップは「マネープラン」を3回、「介護」を2回開催しました。「介護」のワークショップでは、みんなで勉強したり、実際に老人ホームを訪問しました。最近では「ヘルスケア」のワークショップとして、小淵沢の中村キース・へリング美術館の屋上テラスで、「アロマテラピー」と「ペアマッサージ」の講習会を開きました。ご自身がインターセックスで、自分のホルモンバランスを整える為にアロマテラピーを勉強したという、英国の国際アロマセラピスト連盟の日本代表の方を講師にお招きしました。

バブ:実際どのようにプロジェクトを企画・運営されているんでしょうか。

松中:メンバーで集まって「こういうプロジェクトやったらいいね!」と言っても、誰かリーダーとしてやれる人がいなければ出来ないので、「やりたい!」っていうメンバーがいる企画が実際のプロジェクトになってますね。外部の方からこういう事やったらどうですか?と提案されたりもするんですけど、やってくれる人がいたらやりますって感じなので(笑)よかったらメンバーになって、あなたがプロジェクトを立ち上げてみませんか?と誘ってみたりもしています。

バブ:あ、そこも伺いたかったんです!参加するにはいろんな形があるみたいですね。

松中:NPO法人なので、正会員と賛助会員と寄付っていう3つのサポートの仕方があります。正会員は議決権を持って、NPOを運営していくっていう。その代わりコミットメントも結構高いので、必ず月1回社員ミーティングもありますし、自分のプロジェクト持たなくちゃいけないですし。あと組織なので会計とか広報とか、プロジェクト以外にも担当を持ってもらわなくちゃいけないです。結構ガッツがないとキツいかもしれません(笑)この夏季限定のカラフルカフェのプロジェクトだけ、ボランティアとして参加していただいてる方もいます。あとは学生インターンも。サポーターという賛助会員として会費を頂きながらイベントに参加してもらったり、寄付だけ頂いている方もいます。あとは僕たちの企画するイベントに参加してみんなで楽しもう!っていうのも「グッド・エイジング・エールズ」との関わり方なのかなと。

バブ:現在進行中、もしくは企画中のプロジェクトがあれば教えて下さい。

松中:このカラフルカフェもそうですし、ワークショップで言えば「パートナーシップ」にまつわる、法的な事やお金の話をテーマにしたものを予定しています。長期的なプロジェクトで言えば「LGBTフレンドリーな老人ホーム」もですね。企業コラボとしては「アルファ ロメオ」さんとの様々なコラボプロジェクトも今年で2年目となりました。

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バブ:そういえばカフェの外にも「アルファ ロメオ」の車が!

松中:はい(笑)それと9月にはあるIT企業さんのLGBTイベントのお手伝いをする話も進みつつあります。以前に電通の「電通ダイバーシティ・ラボ」という部署と「MEET LGBT」という電通社員向けリーフレットを作って、LGBTの基本知識やLGBTとして働く人のインタビューを掲載したんですが、こちらの他の企業版リーフレットも作る予定です。

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バブ:今後の展望を教えて下さい!

松中:「LGBTフレンドリーな老人ホーム」企画はまだまだ先の話だけど、みんなで一緒に老後を暮らすのが遠い目標だとしたら、まずみんなで集まる場所があったほうがいいんじゃないかって事で、このカラフルカフェを作りました。それから一緒に暮らしてみようって話が出て、現在はコレクティブハウスとかコーポラティブハウスとかのシェアハウスについて考えはじめています。その先に「老人ホーム」っていう目標があるんだけど、「老人ホーム」にも種類があって、体は元気なんだけど年を取ってきているからっていう方のための「高齢者専用賃貸住宅」や、介護が必要な方のための「有料老人ホーム」などがあります。もちろんセクシュアリティの事も大切ですが、実際「老人ホーム」を運営していくには、もっと医学的なことだったり専門的な事が必要になってくるので、そうなるとNPOひとつだけでは難しいので、どこかと組んでいきたいと思っています。

バブ:「LGBTフレンドリーな老人ホーム」必要ですよね~。

松中:老人ホームで話している事って、自分の人生についてだったりするじゃないですか。例えばゲイの人が「あの時、こんな男と付き合っててね…」って話す事ができない苦しさだとか、再度楽しい人生を振り返る事ができなかったりとか、本当は恋人や友達を呼びたいのに、バレちゃうのがまずいって事で呼べなかったりとか。やっぱり老後でもフレンドリーな場所があればいいなとは思うんです。もしかしたら10年後や20年後に老人ホームを作るとしたら、もっと世間がセクシャリティに対してオープンになっていて「LGBTフレンドリーな老人ホーム」が必要じゃないのかもしれないし、リアルな場所よりも具体的にネットワークが出来ている事の方が大事なのかもしれない。誰かが病気になった時に、みんながその情報を共有できて、誰かが助けに行けるネットワークが構築されている方が大切なのかもしれないですし。

バブ:状況次第で目標を変えていくって事ですね!それでは最後にメッセージをお願いします。

松中:気軽に参加できる企画をやりたいと思っているので、ひとりで参加するのに抵抗がある人は、友達と一緒でもいいので参加してみて下さい。自分たちが楽しく過ごすにはどうしたらいいだろう?とか、こんな事があったらいいな!っていう事をやっていきたいので、そういうアイデアがあったりとか、こういう能力があるとか、こういう職業なので生かしたいとか、具体的に何かやりたいっていう方がいたら、ぜひ一緒にワイワイやりましょう!全然、真面目な団体ではないので(笑)

バブ:そ、そんな事言っちゃっていいんですか?(笑)

松中:カチカチやってる風に見えて、カチカチやってないですし。運命的に誰かに出会ったからこういうプロジェクトが生まれた!っていうものも結構あったりします。すみません!(笑)

バブ:いえいえ!松中さん、ありがとうございました!

松中:ありがとうございました!

◆インタビュー:喜友名 朝哉さん&橋本 美穂さん(NPO法人 グッド・エイジング・エールズ)編はこちら。
◆インタビュー:柳沢正和さん&阿由葉左衛子さん&あずささん(NPO法人 グッド・エイジング・エールズ)編はこちら。

◆INFOMATION◆

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NPO法人 グッド・エイジング・エールズ
http://www.goodagingyells.net

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カラフルカフェ
http://cafe.goodagingyells.net/
http://www.facebook.com/ColorfulCafeHayama
[住所]神奈川県三浦郡葉山町一色1985-1
[連絡先]080-3352-4211
[営業時間]7月、8月の土日祝日 11:30~日没まで
[アクセス]JR逗子駅からバスで20分
(山回り)バス停   「葉山」下車 徒歩1分
(海岸回り)バス停「一色海岸」下車 徒歩1分
御用邸前葉山警察署並び 一色海岸まで徒歩57秒

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