【世界エイズデー特集】LGBT文芸:【映画】vol.4 ~LGBT×AIDS作品~

オール・アバウト・マイ・マザー
( Todo sobre mi madre / All About My Mother )

レズビアンゲイトランスジェンダー

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1999年にアカデミー外国語映画賞・カンヌ国際映画祭最優秀監督賞を受賞したスペイン映画。
監督・脚本のペドロ・アルモドバル氏は自身がゲイであることでも有名なお方だそうで、観たら解るこの映画のユーモアセンスと少々トリッキーなキャストワールドにも納得。
お話はマドリードに住む移植コーディネーターのマヌエラ(セシリア・ロス)が主人公。作家志望の息子・エステバンを女手一つで育ててきた彼女。エステバンの17歳の誕生日に二人で「欲望という名の電車」の舞台を観に行く。マヌエラが息子に今まで話さなかった父親のことを話そうと決心したとき、最愛のエステバンが舞台の主演だった大女優・ウマ・ロッホにサインをもらおうとして車にはねられまさかの。。。!

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と、ここから静かに、そして破天荒に展開していくのこの映画。
あのおすぎさんも「おすぎが選ぶ観ておきたい映画10選」でおっしゃってますけども、とにかく全く展開が読めないのでそこも間違いなく愉しめますw。

理由あってバルセロナに移住したマヌエラの周りには、有名舞台女優。そしてそのレズビアンの恋人でヤク中の若手女優。

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親友で胸ありサオありのニューハーフ男娼(素晴らしい演技力!)など、実にLGBTにリーチの高い出演者が登場します。

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その中にこのお話で重要な役割を果たす修道女ロサが。
(ちなみにロサ役は今や大女優であるペネロペ・クルス♡)(最高にカワイイ♡)
彼女はゲトーエリアに建つ修道院で娼婦たちの仕事や身の回りの世話をしている純粋系26歳の修道女で、そして妊婦。そう彼女はあるエイズ感染者とSEXをしてエイズを移され、妊娠までしたという複雑な境遇。
細かなシチュエーションは映画を見ていただくとして、この映画ではたった一回(恋心というよりは気の迷いで?)ナマでヤっちまった結果、妊娠してしまった若い女の子が、産婦人科でエイズ検査を志願して結果を知り、それでも産む決断をする姿、それを我が事のように献身的に世話をするマヌエラが新しい命の誕生を通して、自身の大きな心の痛手を乗り越えて行く姿が描かれてます。

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最近の若者は恋愛への欲求が下火になっているとか言ったって、若者は発情期を過ごしているのだし、そんな時期には特に男の子だけじゃなく女の子もSEXにマエノメルあまり、ロサのように後先考えずSEXをしがち。あたし自身最近、人生初のエイズ検査を保健所で受けた時、そこから結果までの2週間は色んな意味で大変で。。。え。
出来ればみんな享楽的に生きていたい。目の前に快楽をぶら下げられたら、即それが欲しいのが人情。
でもこの時代、エイズだけじゃなく様々な性感染症も自分で予防するしかない時代。まずは男も女もコンドームを持ち歩きましょ~。
ノンケ・ゲイはもちろんレズビアンであっても自分もパートナーも、過去に異性とのSEX経験がある場合だってあるのだし。まあこれって風邪の予防みたいにいつも同じ事言われてる感があるけど、咄嗟の時にやっぱり助かるんだからー!とカラダを張ってPRしてみました。。!(いつもギリギリアーティスト)

ともあれ一般的に“エイズはゲイ男性の病気”という認識で止まっている人の多い中で、ペドロ監督は敢えて母親、母性をテーマにし、LGBTやエイズというトピックを表現したという点で新鮮な作品。
そしてステレオタイプな男色・女色といった性意識ではない、多様な性意識を持った登場人物像が独特。鬼畜とも言える、おおらかとも言える。。w

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恋・喪失・出会い・再会・死・生・・テーマは重いのに力強く生きて行く女達がユーモアと共に明るく描かれたこの作品。観終わった後でもう一回観たくなる不思議な質感なのよ。ぜひともご覧あれ~!

フィラデルフィア ( Philadelphia )ゲイ

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1993年のアメリカ映画としてまだエイズ・ゲイに関して世の中の認知が浅かった時期に描かれたこの作品は、その世代の人達には大変有名な作品よね。
第66回アカデミー賞では主演男優賞をトム・ハンクスが、ブルース・スプリングスティーンが歌曲賞を受賞。 第44回ベルリン国際映画祭銀熊賞(男優賞)受賞。 第51回ゴールデングローブ賞 主演男優賞 (ドラマ部門)および歌曲賞受賞。だそうで、「羊たちの沈黙」の監督ジョナサン・デミ氏が手掛けたことでも有名なのですね。

トム・ハンクス演じるエリート弁護士アンドリュー・ベケットは、若く優秀な能力を持つ愛に溢れた青年。将来を有望視されていた彼は、勤めている一流弁護士事務所で昇進がかかった重要な案件を担当した折、思いがけないトラブルに遭いあっさり解雇されてしまう。彼の額に出ていたあざを見た上層部がエイズを理由として不当解雇をしたとして憤った彼は、立件してくれる弁護士を探す。

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エイズ、ゲイ、一流弁護士事務所を相手取った訴訟、とタブーだらけの内容のせいで軒並み断られる中、以前敵同士として渡り合ったやり手の弁護士ジョー・ミラー(デンゼル・ワシントン)を訪ねる。
アンドリューがエイズに感染していると告げた瞬間あからさまに引くジョー。彼は死期が迫るアンドリューに対し、愛する嫁との家庭に赤さんが生まれたばかり、という対照的な存在。握手しただけで即医者に診てもらったり、嫁にはゲイは大嫌いだと言う、解りやすいゲイ嫌いの一般的なアメリカ人を代弁しているような役割なの。そんなジョーがどうして、恐ろしくて触りたくないエイズという病気を持ったゲイのアンドリューの裁判を引き受けたか、そこは映画を見てみてネ。

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これまでになくセンセーショナルな裁判が進んでいくにつれ、見えてくるエイズという病への恐怖。ゲイに対しての偏見。
法廷内でのシーンではそこが大きくえぐられていく。輸血でエイズ感染をした女性の証人が「私たちは有罪でも無罪でもない。ただ生きていたいだけです。」と言うシーン。
「裁判の争点よりも皆結局、個人の性癖、セクシャルな想像が頭を離れず、同時にそこに対して生理的な嫌悪や恐怖を感じている。だから全員オープンにするべきだ。あなたはホモセクシャルですか?!」と物凄い気迫で迫るジョーの質疑シーン。
この際大胆にネタバレすると、アンドリューはたった一回のSEXでエイズに感染したという、オール・アバウト・マイ・マザーと同じような感染経緯なんだけど、それを細かく法廷で明らかにさせられるシーンは、見ていて複雑な気分だった。まるで晒し物の罪人扱いなんだもの。誰だってSEXしてるのにね。
まあ当然だけどSEXが絡んだ法廷ものは、まるで原告側が被告人扱いされるようなシーンが必ず出てくるわよね。ジョディ・フォスターがレイプされたアバズレ女を演じた「告発の行方」しかり。そこに親兄弟が居ようとも容赦なく。映画とは言え、切なくなるけれども、法廷に出るってのは逃げ隠れ出来ねえんだよ?ということよね。こんな調子で感情移入してしまうのは、名優達の迫真の演技、脚本など、この映画の力だわ。。

また、アンドリューを献身的に支える彼氏(アントニオ・バンデラス)と、ある日在宅治療の件で喧嘩になってしまうシーンで、会話の内容が葬式はどうするだとか死に関してだとか、しれっと言い合いしてるのにひたすら重くて、そこには当然未来がなくてまた切ない。

それで彼らが盛大にゲイパーティーを開くんだけど、その後にアンドリューがジョーに向かってマリア・カラスの歌曲に乗せて自身の想いを詩的に吐露する場面は、一般的なノンケ男子と芸術や美意識に長けたゲイ男子のコントラストが良く描かれていて素晴らしい出来でした。

ただふとこの映画を見ていて、エイズは握手しただけでも感染する、同じ部屋に居るだけで感染する、そんな1993年頃の誤った知識で止まっている人がまだ居るんじゃないかと思ったのよね。
ゲイの方々は意識が高いけど、ノンケ男性・ノンケ女性・レズビアンにとってみたらなんとなく注意しなきゃいけない病気かな?位な気がしていて。そこを一歩踏み込んで意識して、正しい知識を得るきっかけになれたら良いな、と思い今回はこの2作品をご紹介しました。

というのも実は最近、エイズ検査の話をしていたら“エイズって感染したら死んじゃうんだよね?”とある女性に聞かれたばかりで。

そんな時、あなただったらどう答える?

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自分だけは大丈夫(他人事)、検査は面倒だし怖い、周りもやってない(と思う)し、一応健康だし。そんな感じで曖昧にしておきたいのが人情。誰だって「病気」という重く、暗いトピックのことを自分から考えたくはないわよね。
でも無関心だとか無駄に怖がるのではなく、正しい知識を身につけたいよね。2012年現在、エイズはなくなっていないのだから。

「Bruce Springsteen – Streets of Philadelphia 」

歌詞抜粋:
Aint no angel gonna greet me
Its just you and I my friend
My clothes don’t fit me no more
I walked a thousand miles
Just to slip the skin

The night has fallen, Im lyinawake
I can feel myself fading away
So receive me brother with your faithless kiss
Or will we leave each other alone like this
On the streets of philadelphia

“俺を迎えてくれる天使はいない
俺とお前だけさ 友よ
俺の服はもう俺の身には合わない
何千マイルも歩いた
ただただこの身から逃れようと

夜の帳が下り、俺は目を覚ましたまま横たわっている
自分が死に向かっているのが分かる
だから俺を受け入れてくれ 兄弟よ その信義なき口づけで
それとも俺達はこんなふうに互いを独りぼっちに置き去りにしていくのか
フィラデルフィアの通りに”

この映画のタイトル・舞台が「フィラデルフィア」はその名がギリシア語で「兄弟愛」を意味することと、アメリカ合衆国の最初の首都だったことに由来するそうです。

最後に、ちょうど11月20日に国連合同エイズ計画(UNAIDS)から発表されたばかりのNEWSレポートがあったので、リンクにてご紹介することにします。
2011年度のエイズの世界的な状況を知ることが出来るので、一読してみてネ。↓↓↓
「2012年世界エイズデーUNAIDS報告書「Results」 プレスリリース」
2011年の推計
世界のHIV陽性者数   3400万人(3140万~3590万人)
年間新規HIV感染者数  250万人(220万~280万人)
エイズ関連の年間死者数 170万人(150万~190万人)

ちなみに日本国内の状況は「日本の状況-エイズ動向委員会報告」で見られるので、是非チェックしてみて!

エイズの話をするっていうのは、「性的な話」を避けては通れない。
子供なら親が性教育して、その時にちゃんと説明してくれたらって思うんだけど、
大人の場合は、もう一回自分たちで学びとる感覚でいきたいよね?
そこにはゲイ(ゲイウーマン含む)の話、SEXの話、性病の話、あたし達の人生に切っても切り離せないトピックが満載。
「生」きるとは?「性」とは?
世界エイズデーに向けてみんなで考えましょう。

(キムビアンカ編集長)

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