ボーダーライン 第8話

同じタイプの体というアンダスタンディング。

共鳴し合う悦楽は今や私に主導権がある。
自覚したが最後、深みまで見てみたくなる。

線は越えてみたいという願望がなければ自覚出来ない。
線はタイミングと情熱によって交わる。
越えるのは一瞬。

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彼女がイったのはきっと演技じゃない。

床の上で興奮したまま抱き合った。
「香、才能あるわ。」彼女が髪をかき上げながら満足げに微笑む。
「え…っ?」嬉しいのに何だか胸がざわざわした。好きって言っちゃいけない気がした。

それを察したように彼女はアタシの頭をくしゃっと撫でて唇を重ねてきた。
内心の寂しさと裏腹に、自動的に濡れていく脚の間。
このヒダはきっと心の内側。だからきっと涙の代わりに濡れるのだ。
哀しみと悦び。彼女の舌先がそれを舐め取っている。
「どんな味がする?」あえぎながら聞いた。
「しょっぱくて美味しい味よ?」

海が見えるジャグジーに浸かって、色々な話をした。
そしてアタシたちは話し過ぎた。

感情で結びついて、肉体で結びついた。
さてその先は?

彼女は愛人と別れることは出来ない。本当に離れたいのなら離れるはず。
その時のアタシは若過ぎて、彼女に絡みつく女も、その女と別れられない彼女も許せなかった。
入り込めない関係に嫉妬を覚えても仕方がない、という諦めのつかない想い。
すでにそれさえ憎かった。
「こんなに楽しい時間、今まで経験したことないよ。」
「アタシも。」
「また会えるよね?」
「そうだね、きっと。」
「今夜は一緒に寝ようね。」
「うん。」
次の約束なんて要らない。お互いが会いたければ必ず次はある。
今日のように。

さりげなく浴室の壁時計を見ている彼女に言った。
「そろそろ出ようよ。」

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途端に街が恋しくなっていた。
ふたりきりの時間。誰も知らない場所。たどり着いたのはパラダイスだったはずなのに。

服を着て携帯を見るとナミから数回の着信。
ナミはどうせ自分の話をしたいだけなのだ。正直、だいぶ鬱陶しい。
電源を切った。

まんじりともしないままふたりでベッドに寝転んでいると、ガチャガチャと玄関が開けられる音が聞こえた。
彼女が咄嗟に体を起こす。
「誰?泥棒??」アタシも連られて起き上がった。
そうこうしているうちに部屋の扉が開いたかと思うと、旅行かばんを抱えた女が入って来た。

一瞬凍る空気。

「あら、おかえり!レイ子さん早かったのね?」彼女は平静を装って女に近付く。
「そうなの、思ったより早く終わったの。あなたの携帯は電源が切れてて、
会社の子に聞いたらココじゃないかって言われて、来たのよ。」
レイ子さんと呼ばれたその女は、確かに飾り棚にあった写真の女だった。
女と目が合った。
「あ、彼女は香ちゃん、画家さんなのよ。」慌ててアタシを紹介する彼女。
「あらそう。」一瞥をくれられた。

最悪。

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