誰もが身につまされる映画?「へルタースケルター」

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先週の土曜日に公開された、いろいろと話題の映画「ヘルタースケルター」。

アタシはこのレビューを書くため、2CHOPOメンバー(バブリーナ、キム・ビアンカ、おぱんぽん、モウシンら)とともに、3週間ほど前に試写会で観させていただいたんだけど、
上映前にモウシンから「おぱんぽんさんって、ひどいんですッ。僕が出会い系で誰かとメッセージをやりとりして、ちょっといい感じになると、わざとその人にメッセージを出して、僕より先に会っちゃうんですよッ」という、(かなりどうでもいい)訴えを聞かされ、早くもお腹いっぱいに。
で、「おぱんぽんって、前からうすうすロクデナシだと思ってたけど、本当にロクデナシなんだ……」とか思っているうちに、映画がスタート。

前半、特に主人公・りりこが不安定な内面を抱えつつ、仕事面で絶頂を迎えるあたりは、過剰なほどのスピード感、色彩の豪華さ、そして沢尻エリカの美しさに圧倒され、息を呑む思いで観たんだけど……。
終盤はブツ切りなエピソードが続いて、ちょっと長く感じたわ。

って、アスミック・エースさん、蜷川実花さん、ごめんなさい!
でもほら、あまりにもみんなが誉めまくってると、ちょっと嘘くさいじゃない?
バランスバランス!
終盤のエピソードのブツ切り感(まだ言うか)は、原作に忠実に作られた結果なので、仕方なし!(←フォローになってる?)

ただ、全体として(特にオカマや何でも面白がり系女子なら)楽しめること間違いなし。

まず沢尻エリカは、濡れ場を含めて、まさに体当たり演技の連続だったわ。
エリカ、ごめん……。
今までアンタのこと、ちょっと過小評価してた(アタシ、何目線?)
エリカとりりこのシンクロ率の高さについては、すでに方々で語られてるけど、りりこを演じられる女優は今のところ、エリカをおいて他にはいない……と思ったわ。

桃井かおりは、りりこを愛しているのか利用しているのか、自分でもよくわからなくなっている「ママ」を的確に表現。
とはいえ、基本的にはいつも通りの桃井かおりなので、「桃井節」を堪能したい人にも楽しめるはず(「このこはねえ、もとのまんまのもんは、骨と目ん玉と爪と髪とアソコぐらいなもんでね、あとは全部つくりもんなのさ」など、決め台詞も豊富)。

寺島しのぶの役どころは、原作よりも年齢設定が高くなっている分、より哀れさやダメ感がアップ。

とまあ、この3人の演技だけでも、十分に観る価値はあると思うわ!
ちなみに、近くに座っていたオカマ達(バブリーナ、おぱんぽん、モウシン)は

・御曹司役で出てくる窪塚洋介
・随所に出てくる軍服姿のカメラマン
・浜崎あゆみの曲の使われ方(何らかの大人の事情を感じずにはいられないくらい、唐突に一瞬だけ使われる)

など、他の観客が微動だにしない部分にいちいち反応しており、「オカマレーダーにひっかかるものは、一般の観客のひっかかりどころとは違うんだな」と再確認。

で、ここから先は映画というより、「へルタースケルター」というお話に対する感想になるんだけど。

岡崎京子先生が漫画「ヘルタースケルター」を連載していたのは、1996年頃。
それから16年たち、世の中の状況はずいぶん変わったのに、現代にも通用する……いや、現代にこそふさわしいお話であることに、改めてびっくりしたわ。

もちろん当時から、「スター」がどんどん消費されたり、人々が過剰に若さや美に固執したり……といった状況はあったけど、その後、ネットの普及とともに、世の中に流通する情報量が爆発的に増え、消費サイクルも急激に加速。
さらに、ホームページやブログ等によって誰もが情報を発信できるようになり、誰もが他人によって消費されうるように。
出会い系アプリで、ずらっと並んだ顔写真を品定めしたり、年齢やら体重やらでざっくりフィルターをかけたり、好みじゃない人を片っ端からブロックしたりするのも、ある意味「『人』を消費する行動」よね。

まさに「この街はちっちゃなタイガー・リリィでいっぱい」。
「へルタースケルター」はもはや、ある突出したスターの話ではなく、アタシたち一人ひとりが身につまされる話になっちまったのよね。

1996年時点で、こんな世の中を予見していたんだとしたら、やっぱり岡崎京子って天才だわ……。

ついでに言えば、「若さと美」の競争市場から降りた後、フリークス(キワモノ)の世界に身を投じ、新たな冒険の旅を始めるりりこは、まさに年齢を重ね、若さで売れなくなった後、過剰に筋肉や脂肪をつけて巨大化し、別の市場を開拓しようとするゲイそのもの。

というわけで、「人を消費し、人に消費される自分」に疲れちゃってる人も、すでに感覚が麻痺して、何の痛みも覚えなくなっている人も、ぜひ映画を観、原作を読んでみてちょうだい!

 2012/07/19 00:00    Comment  コラム   へルタースケルター              
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