お盆スペシャル・ハートフルファンタジー 新宿二丁目百鬼夜行 ~「あしなめさん」とわたし~

どうも、このたびは金メダルをいただき、ありがとうございます。
モウシンです。
あの頃私は二十歳前、やはり「若さ」というものには無限の価値があったように思います。
だから、いちばん綺麗な色のメダルをいただけたのですものね……。

しかし、若いことは美しいけれど、美しさは若さではない。
……って、このままいくと今回もヘルタースケルターになりそうですが、
今回はお盆なので、ファンタジーなお話をしましょう。
ほら「妖怪大戦争」とか、夏休み映画の定番じゃないですか。

※これ以降のお話はフィクション……というか、ファンタジーです

ねえねえ、「あしなめさん」の噂……聞いたことない?
「座ってるだけで五千円のバイトしない?」が殺し文句で、手当たり次第若い子にアプローチしていたおじさんがいたの。
「あしなめさん」っていうのは、ずっと後につけたあだ名なんだけどね。

当時は「コギャルゲイ」なんて言葉があったくらいで、二丁目だってコギャル文化全盛。エンコーだって珍しくなかった。新宿公園とか、ルミエール前とか、ビッグス裏の旧リリーマンション前の通りとか、みんな人待ち顔で立ってたよね。

私たちだって、好奇心はわりとあった方だと思う。
みんな、知らないおじさんについていってすぐやっちゃったりとか、ハッテン場の開拓だとか、ラッシュの銘柄の違いだとか、効くか効かないかよくわかんない合法ドラッグとかに興味しんしんだったから、ね。

「あしなめさん」は、時折私たちの間で話題にのぼった。
でも、誰も「あしなめさん」を見たことがなかった。
少なくとも、私たちグループの子はみんな。もしかしたら、そう言ってるだけかもしれないけど。

……10年以上経った今だから言うけどね、私、実はずっと前に「あしなめさん」に会ったことがあるんだ。みんなが話すの聞きながら「会ったことあるよ」って言えなかったの。武勇伝みたいにおもしろおかしく話したって、後で陰口叩かれるのわかってたから、怖かったんだ。

若いってこと、そしてゲイだってことくらいしか私たちには特徴がなかったあの頃。
やっと一般人に浸透してきたインターネットの世界では、個人ゲイサイトが大流行してた。
いろんなイケメンリア充(っぽく見える人々)が、キリ番画像だの相互リンクとかカキコとかチャットとか、楽しそうに交流してたんだよね。

私、それがとってもうらやましくて、ホームページを立ち上げたの。チャット……は面倒くさいけど、カウンターも掲示板も置いたし、日記はhtmlで週に3回くらいは更新。最初は友達しか書き込まなかった掲示板も、徐々に知らない人とも交流するようになって。インターネット最強!って思ってたよね、ほんと。

その頃かな、掲示板に初めての人から書き込みが入った。

細かくは覚えてないんだけど、要約すると
「こんにちは。いつも楽しく読んでます」
みたいな、まあ、毒にも薬にもならない書き込み。

知らない人だったし、その時は適当にレスつけた、だけだった。

で、後日。今度はその人から、メールが届いた。
今じゃ考えられない話だけど、その頃ホームページには直でメールアドレスを掲載している人がほとんど。「@を半角に変えてください」みたいなのもなく、直で。そりゃ今も使ってるアドレスに来る迷惑メールの数が尋常じゃないわけで。
ほんとに、のどか、だよね?

だから掲示板に「お初カキコ」する人とは別に、直接メールをくれる人も結構いたわけ。いろんな人がメールくれたけど、某店のママさんがポエムっぽい色こきメールを送ってきたりと、結構直メって香ばしい感じのが多かったかな。
で、その人から来たメールは、こんな感じ。

「この間はレスどうもありがとう。椅子に座ってるだけで五千円のバイトがあるんだけど、もし興味あったら連絡ください」

その頃のゲイの「エンコー」の相場って、すごく安かったと思う。
売り専みたいに技があるわけでもないし、バックがあるわけでもない。個人でエンコーしてる子は、確か誰かが「値切ればCDアルバムくらいだよ」って言ってた。もちろんその頃、アルバムにDVDなんてついてない頃だから、三千円。

それよりも高いのに、椅子に座るだけ、なわけないじゃん。
「どういう意味ですか?」みたいな返事を送ったと思う。
そしたら「足を舐めさせて欲しい」「椅子に座ってるだけでいい」「あんまり時間は取らせない」……そういうことか。

結構何度もメールを貰って、私は、その人に会ってみることにした。
お金はくれるならもらっておくか、くらいだったけど(貰えたらそりゃ嬉しいけど)、実は好奇心の方が勝ってた。
今も二丁目に来たかわいいノンケの男の子に「扉は開くためにあるんだよ! こっちおいで!」って言うことよくあるけど、まさに、それ。
扉をあけてみたらどうなるのか、知りたかったんだよね。
このまま足を舐めさせるのが好きになったりするのかしら、なんて。

確か、夏の日の、授業が終わったあと。
この日のことは、ホームページの日記にはとても書けないって思ってたけど、もし書くんなら「女子大生・ひと夏のキケンなアルバイト!」ってタイトルにしようって決めて、私は新宿三丁目で都営線から丸ノ内線に乗り換えて、その人の家に向かった。
怖いとは、たしか、あんまり思ってなかった。

くすぐったくて笑っちゃったら興醒めかな、そしたら申し訳ないな、って思ってたのは覚えてる。

(つづく)

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