ワールド・エイズ・デー。あの子が流した悲しい涙も、いつか笑い飛ばせるのかしら?

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師走でございます。

来る12月1日といえばそう、ワールド・エイズ・デー。
2012年のキャンペーンテーマは
「“AIDS” GOES ON… ~エイズは続いている~」
だそうです。ちょっとドリカム風味ですね。

ということで、私のマイミク(って……)の人は昔読んだことがあるかもしれませんが、今日はそんな昔のお話のリライト(ネタ切れって言うな!!)。

※ちょっと人によっては不快に思うかもしれません。覚悟はしております

みなさんは「エイズギャグ」(HIV/エイズに関するギャグ)に遭遇したことはあるでしょうか。けっこうよく聞くんですよね。「最近ニキビ多くってさー」「やだーエイズじゃなーい?」みたいなやつ。

私も、行きつけの小箱ゲイバーにて、とてもすばらしいユーモアセンスを持つマスターにある時「あんたは心がエイズなんじゃない!?」と言われたことがあります。
それはもちろん、絶妙な間の良さで。店にいた全員が笑いました。

僕も思わず、笑いました。

その後、僕にはしばらく「もやもや」が残ったんですね。
笑ってしまった自分にももやもやするし、
もし僕がHIVで悩んでるとしたら、そのギャグを本当に言えたのか?
誰かお店の中にそんな人がいるとは考えなかったのか?

そんなもやもやを抱えたまま、気持よく飲めるはずもなく。
しばらくして、そのお店で夜中にママと怒鳴り合いの大喧嘩をしました。
もうお互い泥酔直前で、何言ってたか覚えてないけど、僕はとにかく、ビービー泣きながら怒鳴って、そのママもギャアギャア言ってて。
隣には確かその日デートしてた男性がいた気がするけど、その後連絡は取れておりません。(ちなみにそのお店には今でも普通に通ってます)

HIVといえば、いつも思い出すのが、冬のある日。
そばにいたとても大好きな人が涙を流すのを見ています。
セックスの直前に「血に毒が混じってるんだよねー」と、笑って言ったつもりなのに涙を流し、そして赤い目で僕とセックスしたあの子のことを。

春のあの日、夏のあの日。秋のあの日。
どれも違う子だったけど、みんなそれぞれ思い悩んで、それぞれに涙を流して。

べつに病気なんてどうでも良い。とその時も思ったし、今でも思います。
性欲なのか、愛なのか、ほんとにちゃんと受け止められていたのか。今でもわかりません。
でも、その涙は「悲しすぎるから、とにかくナシだ」と、思っていました。

僕はその子たちのために、
そして、もしかしたらその時同じカウンターにいて
内心ヒリヒリしていたかもしれない人たちのために、あのクソババアに文句を言った。つもりになっていたのです。

その大げんかがあってすぐの金曜日の夜。
怒り冷めやらぬ僕はCampy!BARで、そのママを知るブルボンヌ大先輩に「あのクソババアのエイズギャグマジ無理」的な愚痴を語っていました。

ブルボンヌ先輩はいつもの半笑いをしながら「あー、それはちょっとキッツいねー、でもあっちの気持ちもわかるなー」と言いました。
えー、なんでー。と不満そうな僕にブルボンヌ先輩は
「たぶん、『デブ』とか『ブス』と同じように、笑えるレベルの罵倒にそれを落としこみたいんだよねー」と言ったのです。

「笑えねーし!」とかぷんぷんしながらも、僕はある夜の出来事を思い出しました。
そのお店は小さなお店で、深夜、お客さんがいない時はママがカウンターに座って文庫本を読んでいたりすることが時々あったのです。いつも僕は「えーお客さんはー?」とか笑いながらそのお店のカウンターのはしっこに座るのが好きでした。

ある日僕がそのお店のドアを開けると、そのママが1人で泥酔しながら、わんわん泣いていたのです。
どうしたどうした~、とか言いながら自分で酒を作って隣に座ると、どうやら、誰かからHIVポジティブである事を打ち明けられたみたいでした。
「なんでなのよ! なんのエイズって! そんなのってないわよ!」と鼻水だか涙だかわからない液体で顔をぐちゃぐちゃにしながら、ずーっとビービー泣いていたのです。

そういえば、それからだったかもしれません。
ママの話に時折「エイズ」という単語が出てくるようになったのは。

あのママは、泣いて泣いてたどり着いた答えはきっと「笑い飛ばす」こと。
(本人なーんにも考えてない可能性もありますが)
深刻な悩みは、深刻なので、深刻なんです。
でも、誰か大切な人が「大したことじゃない」って、笑ってくれたらどんなに楽になるか。

もちろん、諸刃の剣です。
よく知らない人に言われたらもう大炎上だし、クソババアのあのギャグは、今考えたって言わなくてもよかったんじゃないかって思うし、これからもケンカもするでしょう。

今は「エイズ=死」じゃない。もちろん「ゲイ=エイズ」じゃない。
でも、そう思ってしまう人もたくさんいます。
「輸血だったら良い(かわいそうな)エイズ、セックスでうつったのは悪い(自業自得な)エイズ」とか思ってる人だって、悲しいけれど、今もいるでしょう。
どっちもおんなじなのに。

そんな風に思う人も、思わない人もたくさんいる世界で、
いくつもの拒絶を乗り越えて「いつものことさ」と自分を諦めさせながら。
僕のところへたどり着いたからこそ、あの子も、あの子も、あの子も、涙を流したのかもしれない。

その涙はナシだ。なんだかわからないけど、かわいこちゃんは泣いちゃいかん。

笑い飛ばすことはまだまだできないかもしれないけど、
僕はきっと、何度でもそう言います。
その悲しい世界から一緒に抜け出したいから。
そんなことどうでも良かったじゃんね、って笑えるようになりたいから。

余談。
ちなみにこの話題においてキーパーソンとなったブルボンヌさんは
「えーアタシそんなこと言ったっけ?」と後日おっしゃっていました。笑

 2012/12/01 00:00    Comment  コラム   ワールド・エイズ・デー              
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