目黒事件

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新年度が始まり、街にフレッシャーズが溢れる今日この頃、みなさんはいかがお過ごしかしら。
毎年思うんだけど、この時期に若イケメンが急増する(ような気がする)のはなぜかしら。入社または入学したてで、気合がはいっているせい? 春になって、髪型や服装がスッキリするせい? 謎だわ。

ちなみに、アタシにも一応、会社に就職し、「新人」と呼ばれた時期があるんだけど……(かれこれ18年前)。今回は当時の、忘れられない思い出をお話しするわね。

その日アタシは、新人研修を受けるため、目黒のビルに行かなければならなかったの。
そこで、大学生活ですっかり怠け癖のついた身体に鞭打って、早朝(といっても8時半くらい)の山手線に乗ったんだけど、寝ぼけて頭がボーっとしていたうえに、「殺人的な満員電車における身の処し方」がよくわかっていなかったせいで、代々木でウォークマンのヘッドホン(耳に当てる部分)をドアに挟まれちまったのよ!
慌ててなんとかしようとしたんだけど、渋谷に着いても恵比寿に着いても、アタシが立っていた方のドアが開く気配はまったくナシ。しかも車内の熱気と、ドアのガラス越しに差し込んでくる春の朝にしては強すぎる日光のせいで頭は朦朧とし、アタシは「ちくしょう、JRめ、嫌がらせしやがって。覚えてろッ」と心の中で毒づいたわ。

そうこうしているうちに、無情にも、目黒駅が目前に迫ってきたわ。
アタシは昔から、宮本武蔵を見習って「基本的に、時間に余裕をもった行動はとらない」「人を待つより人を待たせる」主義(うそです、ごめんなさい。今までに待たせたみなさん、あれは不可抗力なんです……)。その日も研修開始時間ギリギリの電車に乗っていたので、ドアが開くまで電車に乗って、引き返すというのはどう考えても無理……。
でも、どうしてもヘッドホンを引き上げたかったアタシは(って、せいぜい1000円ちょっとぐらいのものだったと思うんだけど)、「こうなったら最後の手段ね……」と朦朧とした頭で考え、やおらガバッと振り返ると、後ろに立っていた20代後半くらいの男性(結構イケメンだった気がする)に話しかけたの。

アタシ「あの……。どちらまで乗られるんですか?」
イケメン「僕ですか? 田町までですけど」
アタシ「田町までに、こっちのドアって、開くでしょうか?」
イケメン「田町で開くと思いますよ」
アタシ「ほ、本当ですか? では、申し訳ないのですが、田町でもしこっちのドアが開いたら、このヘッドホンを拾って、帰りでも構いませんから、駅に届けていただけませんでしょうか?」
イケメン「……いいですよ……」
アタシ「すみません、変なことお願いしてしまって……。よかったら、駅の方でご住所とお名前の方を……」
イケメン「……はい……」

って、20年近く前のことなのに、今、これを書きながら、あまりにも恥ずかしくて、ちょっと死にたくなっちゃった。
アタシ、ただの頭のおかしい人じゃない……。

とにもかくにも商談は成立し(商談じゃねえよ)、「やるだけのことはやった」と相手の迷惑も困惑も顧みず、勝手にスッキリしたアタシは、そのまま下車。
で、研修を終えた後、「届いてねえだろうなあ」とダメもとで田町駅へ行ってみたところ……。なんと駅長室に、ちゃんとヘッドホンが届いていたの! これにはアタシもびっくりしたわ。見知らぬブスに突然一方的に妙なことを頼まれて、4駅間ずっとヘッドホンの端を持って、さらには駅に届けるなんて、なかなかできることじゃないわよね……。
イケメン、偉い。

ちなみにそのイケメン、苗字だけを残し、住所も告げずに立ち去ったらしいわ。残念。てか、関わり合いになりたくないわよね。うん、わかる。

そんなわけで、このあまりにも恥ずかしいエピソードを通してみなさんにお伝えしたかったのは
・時間には余裕をもって行動しろ
・世の中、捨てたもんじゃない(特にイケメン、意外と親切)
・てか、電車のドアにヘッドホンを挟まれて自力で回収できなければ、とっととあきらめろ
というメッセージでした。

新入社員のみなさん、素敵な会社員生活を!

 2013/04/08 00:00    Comment  コラム   新入社員              
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