第5回 レズビアンである私と宝塚(前編)

私は宝塚歌劇団出身です。宝塚歌劇団は来年創立100周年をむかえ、劇団生・卒業生を合わせると、その数3000人以上になります。LGBTは人口の5.2%いるという最新の日本の調査結果がありますが、宝塚歌劇団出身でLGBTであることをオープンにしているのは、現在、私ひとりだけです。

私は高校を卒業後、91期生として宝塚音楽学校に入学。2年間の厳しい学校生活を経て、宝塚歌劇団に入団。同期47人と花組にて初舞台を踏みました。その後、花組に配属され、男役として宝塚の舞台に立ちました。公演を休演して、研究科2年で退団してしまったことは、今でも非常に残念に思っています。宝塚の舞台が大好きだったので、もっと舞台に立っていたかった。ですが、心身ともに健康を害し、退団せざるを得ませんでした。

この5月で、私は退団して7年になります。たくさんの思いがあり、たくさん傷ついて、まだ乗り越えられないところもあって…。ですがそれでも、そろそろ宝塚について、語っていきたいと思っています。というわけで、第5回と第6回は、ズバリ「宝塚」について書きたいと思います!

宝塚にいた当時は、レズビアンであることを全くカミングアウトしていませんでした。同期にも、家族にも、関係者にも、全くです。2010年秋にtwitter上で宝塚歌劇団出身であることとセクシュアリティをカミングアウトしたのですが、「元タカラジェンヌである私がカミングアウトしてもいいのだろうか?」と悩んでしまったこともありました。自分のセクシュアリティを語ってはいけない人なんて、どんな地域にもどんな職業にもいません。自分の「性」に関することは、自分が話したいと思ったら、それは本来話していいことです。それなのに、です。

宝塚歌劇団に在団する生徒は、全員「未婚の女性」です。「結婚」するときは退団します(寿退団と言ったりします)。トップスターさんの退団会見のときには「ご結婚のご予定は?」という質問がたいていあります。男役であってもやはり社会的に女性であることを強く感じさせられる質問で、私は好きではありません。

「タカラジェンヌは在団中結婚できない」という“常識”を、宝塚を知らないお友だちに気軽に話したところ、「それは就業規則に明記されているのか?」「事実婚ならいいのか?」「シングルマザーとして出産するのはいいのか?」という質問を受けました。確かにそれまでの私は、そんな疑問を抱いた事がありませんでした。

過去100年にシングルマザーとして出産した生徒(劇団員)はひとりもいません。(正装の「みどりの袴」を少し短くして足首を出して履くのが決まりですが、その足首は”純潔”の証。宝塚のおとめたちは”純潔”でなければならないのです。)

社員が結婚してはいけないって、企業が決めていいんだろうか? 正社員として雇用されているのだから、本来、産休・育休が取れるのではなかろうか?

宝塚歌劇団に在団する生徒は全員「未婚の女性」で、しかも退団するときには結婚するのかどうかを尋ねられます。これは、宝塚歌劇団に在団する生徒は、全員将来的に結婚する女性、つまり異性愛の女性であることが求められているということでもあります。私がカミングアウトしなかった・できなかったのにはいくつか理由がありますが、言語化できないままに、強烈にこの「異性愛の女性でいること求められている」ということを感じとっていたのも、大きな理由の一つです。

卒業式と入団式が同じ日で、就業規則があるであろうことも知らず、とにかく劇団に足を踏み入れるのがおそろしかった初舞台生の頃。私たちは17歳から21歳。”夢を売るフェアリー”たちには、就業規則も、セクシュアル・ハラスメントも、ダイバーシティも、なにも学ぶ機会がなかったのでした。

(第6回に続く)

Top