第8回 使いたい人みんなが使える、新しい”結婚”の制度

同性パートナーと市役所へ確定申告に行ったときのことです。生計を一にして同居していることを担当の方に話し相談したのですが、税金や医療費控除などは、家族としての扱いが受けられませんでした。金沢市に住んでいる私の母親に電話をして、そのことを報告しました。

「それは仕方がないじゃない」

市役所の入口で電話をかけたときのことを今でもはっきりと覚えています。それまで私もやっぱりどこかで「仕方がない」と思っていました。

私は同性愛者だから、仕方がない。

しかし自分が実際に困っているときに、母の「仕方がない」という言葉が自分の耳に入ってきました。漠然と感じていたものが、私の中ではっきりと疑問に変わった瞬間でした。これは私がLGBTに関する活動を始めるきっかけとなったできごとです。

現在私は、同性のパートナーと結婚式を挙げて東京都内で一緒に生活しています。私は女性で、パートナーのひろこさんも女性なので、私たちは法的な意味での”結婚”はできません。(でも私とひろこさんは”結婚”していると思っています。)

先日出演したトークイベントで、「結婚式を挙げたことで生活上のメリットが生まれましたか?」という質問を受けました。このコラムにも書かせていただいているように、結婚式を挙げたことで私は本当に幸せですし、結婚式を挙げて本当によかったと思っています。しかし実際の生活上のメリットはありません。公的な制度がなにひとつ利用できないことは、結婚式を挙げても挙げなくても変わらないからです。

3月1日の結婚式から、「東京レインボーウィーク2013」までを仲間と駆け抜けている間に、私の中に生まれた新しい夢があります。

それは「使いたい人みんなが使える、新しい”結婚”の制度を日本に作ること」です。

昨年のオバマ大統領の演説、フランスの「みんなのための結婚法案(Mariage pour tous)」、イギリスでの同性婚法案可決(全土ではなくイングランドとウェールズ)。アメリカでは、同性婚を禁止する州法が憲法に違反するかどうかを争う裁判が行われ、まもなく判決が出されます。今まさに、同性婚が世界的な大きなうねりとなっているのを感じています。

日本はどうでしょうか? 同性婚がよいのか、新しいパートナーシップ法を作るのがよいのか?
共同親権は持てるようにできるのか?(例えば私はひろこさんが産んだ場合には、その子どもの法的な親にもなりたいと思います。生物学的に血がつながらなくても社会的な親にはなれますし、親権をもつ親に万が一のことがあった場合も家族であり続けるために必要です。しかし子どもの権利については様々な意見があります。)そんな議論はみなさんのまわりに起こっていますか?
かつての私のように、同性パートナーと公の制度が利用できないことは「仕方がない」と、どこかあきらめてしまっているところはありませんか?

あきらめる必要はありません。セクシュアル・マイノリティの人が使える法律がまだ少ないだけのこと。ないものは作ればいいし、昔のままになっていて不便なことが生じているなら今から変えていけばいいのです。愛している同性パートナーと生きたい人が、無理に異性と結婚する必要は本来ありません。法律や制度は、社会でみんなが便利に暮らしていくためのルールなのですから、私たちが愛をルールに合わせる必要はありません。もし今ある”結婚”を押しつけられたら、「私はそれとは違う生き方がしたいの」と言っていいのです。(もちろんそれを言うのがいかに難しいか、私にもわかります。それでも、たとえ声に出して言えなくても、そう思っていていいと思うのです。)

私が、「使いたい人みんなが使える新しい”結婚”の制度」というときに、1番最初に「使いたい人みんな」という言葉が浮かびました。それはただ単に異性婚&同性婚、というような感覚で今の日本で実現しても、その制度を利用できない人、また結婚したくない人や1人で生きたい人、
3人以上で家族を作りたい人が利用することができないばかりか、ますます生きづらくなることもあると思ったからです。

使いたくない人には押しつけられず、使いたい人はその人の属性に関わらず利用できる制度。

2007年に女性は「産む機械」と言われ、2013年の今また不穏な空気を感じているのはセクシュアル・マイノリティの人たちだけではないはず。女性として生きることでさえ大変なこの国で、まして、レズビアンである私が利用できる新しい”結婚”の形の実現などできるのか?
とてもできそうにない理由は、探さなくともたくさん押し寄せてきます。

でも、あきめない。私は「セクシュアル・マイノリティであるあなたも、どこも損なわれてなどいない。あきらめずに生きていいんだ」と、伝えてもらうことができました。今度は私が伝えられる人間になりたいと思っているから。思い描いたことは必ず実現できると信じているから。

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