第18回 私の家族と”家族”

このコラムを連載させていただくきっかけにもなった、東京ディズニーリゾートでの私たちの結婚式。じつは私側の血縁の家族は、誰ひとり出席していません。
私は先日Facebookにこんな投稿をしました。

『私には連絡をとっている血縁の家族がひとりもいない。「私、可哀相…」に耽溺することもまだあるけど。この写真みたら、そんなこと、ふふふって思えるよね。”家族”ってなんなのか。既存の価値観を超えていく挑戦は大変だけど楽しい。(そして実は私たちにはできると思っています。)』

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この投稿は友人限定公開だったにもかかわらず、100以上「いいね!」ボタンが押されました。血縁や戸籍による伝統的家族観を私から超えていこうと、迷いながら模索していることに多くの方が共感してくださったことに、驚くと同時に、非常に勇気づけられました。私は本当に超えていけると思っているし、私の”家族”を愛しているし、とても感謝しています。

だけど…
最近ショックなことがありました。ひろこさんとお引越しをしようと、一緒に不動産屋さんへ行ったときのことです。

お部屋探しは多くの同性カップルにとって、悩ましい問題ではないでしょうか?
カミングアウトするか否か。関係性を尋ねられたら「パートナー」というのか「ルームシェアの友人」と答えるのか…。カミングアウトしても問題なく借りることができるのか?

私たちは今回はカミングアウトしてお部屋探しをしようと決めていました。不動産屋さんの担当の方には「私たちは同性カップルで結婚式も挙げていて、一緒に住んでいます。法律上の結婚は(現状できないから)していないけれど、事実婚の夫婦と変わりません」とお話ししてから内覧に出かけました。条件に合うお部屋をいくつか見せていただいて、最後のひとつをふたりともとても気に入ったので、ぜひ契約したいと思いました。

ところが、いざ契約書に記入する際、「大家さんに理解がなかったら借りられないから」ということで、私たちは「友人」として申し込むことになったのです。

私たちが書類に「妻」と記入した続柄を、修正テープで「友人」に直されていくのを見るときのやるせなさ。
そして、私の保証人の欄は空欄です。(3親等以内の血縁の家族に保証人になってもらうことが必要なのですが、結婚式にも出席してくれる血縁の家族がいない私には、保証人を頼める人がいないからです。)

私には、不動産屋さんの書類に記入できる家族がいなかった。
愛する”家族”であるひろこさんは「友人」で、連絡が取れる血縁の家族はいない。

被虐待児が大人になって、異性のパートナーと生きていきたいと思ったときに、婚姻という選択をすれば新しい法的な家族ができる。実父や実母との法的な関係を離縁できないという問題点はあるけれど、新しい家族とは法的にコミットして生きていける可能性があります。だけど同性カップルへの法的保障がなにもない日本では、私はパートナーと家族になれない。

連絡がとれる血縁の家族がおらず、パートナーとも婚姻できないということは、私は書類上一人ぼっちです。

家族からの凄まじい暴力をサバイブし、新しい”家族”となんとか生きる力を取り戻そうとしているのに、私は書類上は一人ぼっち。

この書類上一人ぼっちは、単に悲しいとか、そんな問題ではありません。私の個人情報を役所は実母には開示してしまうという問題。そして今、協力して生きているパートナーにはなんの法的な権利もないという現実。

戸籍上の家族と関係を絶って生きなければならない、同性パートナーと生きる私はどうすればいい?

私はひとりではないはずなのに、このときばかりはひとりきりでした。

今回は少し重い内容になりましたが、私がこの問題に気づいて自分の言葉で表現できるようになったことは、私にとってはとても前向きなことです。

きっとこれから新しい”家族”と一緒に、この経験を糧に、私たちに本当に必要なものを探したり変えたり作ったりしていける。そんなふうに思っています。

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