第19回 東小雪のクィア・ライブラリー「宝塚編」

先日、宝塚音楽学校創立100周年記念式典について朝日新聞に私のコメントが掲載されました。

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2013年7月27日(土)朝日新聞朝刊に掲載

久しぶりに芸名でのコメントでした。同期に対する思いも掲載していただけてよかったと思っています。

私は宝塚歌劇団花組で男役として舞台に立っていたことがあります。

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タカラジェンヌは原則的にあの舞台メイクを全て自分でします。音楽学校を卒業するころに、劇団生に舞台メイクを教えていただく「お化粧講習」なるものがあるのです。音楽学校の文化祭(毎年バウホールで行われる音楽学校の卒業公演のようなもの)以降、みんな研究に研究を重ね、少しずつ上達していくわけです。ですが、こちらのプログラム撮影のときの私のメイクは、樹里咲穂さんにしていただきました。メイクをしていただいた後に「男前やーん!」と言っていただき、自分の化粧顔とは雲泥の差で「このまま落としたくないっ! 毎日この顔で舞台に出たい!」と思ったものでした。(もちろん落としましたが…。)
宝塚が大好きで、まだまだ舞台に立ちたかったのに、体調を崩してしまい早くに退団せざるを得なかったことは、今でも非常に残念だったと思っています。

さて、今回は宝塚関連のおすすめ本をご紹介していきたいと思います。

『Zucca×Zuca』
http://www.moae.jp/comic/zuccazuca

ヅカファンの日常を描いたコミック。ファンの方なら「ある! ある!」と楽しめるのではないでしょうか? キャラクター化された同期が出てきたりするとちょっと嬉しくて、私も楽しく読んでいます。

『「ユリイカ」クィア・リーディング』

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宝塚歌劇の異性装やセクシュアリティについては、すでにたくさん研究され論文が出ています。こちらには、川崎賢子さんの「虹の彼方にー宝塚メディアにおけるクィア・セオリーの実践と証明」という文章が掲載されています。

『踊る帝国主義ー宝塚をめぐるセクシュアルポリティクスと大衆文化』

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この論文を書かれた研究者の方は、池田文庫(宝塚歌劇の資料などを多数所蔵する図書室のある文化施設)での資料の閲覧を「ちょっと困る」と言われて断られています。(私はこのエピソードが大好きです。)また、「踊る帝国主義」とはものすごいタイトル!

上記2冊について、私がひたすらクラシックバレエとコールユーブンゲンに明け暮れていたころに、このような視点で宝塚を見ていた方もいるのかと思うと、なんとも不思議な気持ちがします。

『タカラヅカ・汚れた花園』

こちらはおすすめ本ではありません。帯には”金・レズ・裏切り”とあります。

本の中では”レズ王”、”スーパーレズ”など、まるでコンビニアイスのような名付けがされています。私は宝塚の女性がカミングアウトできないのは、カミングアウトしづらい一般の社会よりも、さらに複雑な構造があるからだと思っていました。ですが、もっと単純に、こういうくだらないオトコ目線に抑圧されている面もあるのではないかと思い直しました。

今でも私にときどき来るとんちんかんな批判は、主に女性ファンから寄せられるのですが、この本の語り口と似通っているところがあります。「あなたがレズだとみんなレズだと思われて、宝塚が汚れて迷惑!」というのがその主な内容。(レズの部分を人種や障害の有無など別のマイノリティに変換して読むと、もしかしたらご本人にも差別的だとわかるのかもしれません。)私は、「私はレズビアンであり、人口の5.2%がLGBTという最新の調査があります」と言っています。この本に書かれているように「誰々はレズだ、みんなレズだ」とは一切言っていません。

そしてそういった批判もこの本にも共通している点は、なぜか「レズはヤバい」というのが前提になっていて、「なぜレズビアン女性が在団していることを問題としているのか」については考えらないという点。このようなお粗末なオトコ目線に抑圧されて、多様な女性のセクシュアリティが語られないなんて、本当に残念、もったいない!

それから、宝塚音楽学校で「罰として足を舐めなさい」とか、あるわけがありません。うーん…どんな予科・本科なのでしょう…。

女性の集団として100年もの歴史があるにも関わらず、多様な女性が抑圧され続けていることが、本当に残念でなりません。

『Aran』

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最後にご紹介するのは、『Aran』。元星組トップスターの安蘭けいさんが書かれたフォトエッセイです。彼女はこの本の中で、在日コリアンであることを公表しています。レズビアンであることと在日コリアンであることは直面する問題の種類は違いますが、社会的なマイノリティとして生きづらさがあるという点では共通する部分もあるのではないかと思います。宝塚歌劇団という、より規範が強固になる場所で、マイノリティ性をカミングアウトされた上級生がいらっしゃるということに、私もとても励まされる思いでした。いつかお目にかかってお話しさせていただきたい憧れの方です。

「マイノリティ、だからなんなの?」と言うのは、まだまだ難しいかもしれません。でも、どんな場所にいても、どんな属性を持っていても、「私は私としてかっこよく生きていく!」という先輩の女性たちの背中を見ると、私の背筋もシャン! と伸びるのです。

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