エスム的(?)『ウィキッド』論

8月3日から、東京での再演が始まった、劇団●季によるミュージカル「ウィキッド」。
ここ数年の「glee」人気(「ウィキッド」の楽曲も歌われている)の影響もあってか、今まであまりミュージカルに興味がなかった人たちも結構観に行っているらしく、アタシの周りでもすでに「観た!」「感動した!」という人が続出しているわ。
もちろんアタシも必ず何度か観に行くつもり!

とはいえ、実はアタシ、基本的には●季のミュージカルって苦手なの……。
いや、●季が日本各地にミュージカルの専用劇場を造り、数々の海外の名作ミュージカルを日本に紹介した、その功績は素晴らしいと思うのよ。
でも、チケット発売開始時点でキャストスケジュールが発表されないのも、アドリブを認めないというのも、(「いつ来ても、どの役者が出ていても、同じクオリティを提供できるように」ってことなんだろうけど)役者さんの個性を無視しているみたいで釈然としないし、一音一音やたらはっきり発音させるのも、「運命」を「うんめえ」と歌わせたりする(「劇団●季メソッド」というらしいわ)のも、なんだか子どもっぽく思えて、イマイチ好きになれないの。

新人役者の登竜門的演目(?)で、しかも子どもの観客が多い「ラ●●●キ●●」なんて、特にひどかったわ……。
何年か前にアタシが観た時は、シ●バ役の役者さんが「一音一音はっきりセリフを言ったり歌ったりしなければ!」と意識しすぎるあまり、完全に小学校の学芸会のようなしゃべり方になっていたもの。
劇場からの帰り道、アタシの後ろを歩いていた女性客二人が「なんか主役の人、しゃべり方が独特だったよねェ」とか話していたんだけど、それを耳にしたアタシは思わず「違うの! 彼は悪くないの! ●季の方針で、あんな風にしゃべらされてるだけなの!」と弁解したくなっちまったわよ。

そんなわけで、●季の「キ●ッツ」を観ても「ア●ーダ」を観ても、イマイチ感動できなかったアタシだけど、「ウィキッド」だけは別。
とにかくストーリーと楽曲が素晴らしすぎて、初めて観た時に号泣し、その後も何度も観に行っちまったのよね(ってアタシ、なんだかんだ言って、それなりに●季に金落としてるわね……)。

ご存知ない方のために少しだけ説明しておくと、「ウィキッド」は、「オズの魔法使い」に出てくる「西の悪い魔女」(エルファバ)と「南の良い魔女」(グリンダ)を主人公にした物語。
緑色の肌を持って生まれたエルファバは、その肌の色ゆえに周囲から嫌われ、コンプレックスを抱いているが、正義感が強く、優しく、魔法の才能にも恵まれている。
一方、同じ魔法学校に通うルームメイトのグリンダはブロンド美人で人気者で、ちょっと浅はか。
最初は反発し合うものの、徐々に仲良くなる二人だが、同じ人(王子・フィエロ)を好きになってしまう。
また、魔法の才能を認められ、オズの魔法使いへの謁見が認められたエルファバは、「魔法使いに頼めば、肌の色を変えてもらえるかもしれない」と喜ぶが、魔法使いが動物を虐待していると知り、「動物たちを解放しよう」と決意。
マスメディア(?)によって、魔法使いにたてついたエルファバは「悪い魔女」に、逆にグリンダは「良い魔女」に仕立て上げられてしまう――。

とまあ、大まかなストーリーはこんな感じなんだけど、「魔法使いに会えば、すべてが変わるかも」と無邪気に夢見る前半のエルファバ、「良いこと」をしているはずなのに誤解され、人々から憎まれる後半のエルファバ、大勢の人に愛されるものの、本当に好きな人からは愛されないグリンダ、互いを思いやり合いながらも、対立せざるを得ない立場に追いやられるエルファバとグリンダ、とか、もうすべてが切なすぎるの。
で、一見遊び人風なフィエロだけが、外見に惑わされず、エルファバの魅力に気づき、味方になるってのも、アタシにとってはめちゃくちゃツボ。
また、「オズの魔法使い」を知っている人ならば、「あの話はここにつながるのか」といった「謎解き」的な面白さも感じられるはず。

さらにこの作品は「湾岸戦争をきっかけに創られた」とも言われていて、とにかくいろいろな解釈が可能なのよね。
「何が善で何が悪かなんて、そう簡単には判断できない」「人はメディア等から与えられる『イメージ』に左右されやすい」というメッセージを込めつつ、アメリカとイスラム世界との関係を描いているようにも見えるし、「肌の色が違うことによる苦悩」を抱えたエルファバの姿は、白人社会の中で生きる有色人種や、周囲との違いに悩むことの多いセクシュアルマイノリティと重ね合わせることもできる。

ちなみに、「(女装としてのエスムの)ファンです」と言ってくださる方は時々いるものの、「つきあおう」と言ってくれる人はなかなか現れず、でも「アタシの魅力に気づいてくれる王子様が、いつかきっと現れるはず」といまだに夢見ているアタシ(41歳)は、毎回、エルファバとグリンダの両方に、勝手に感情移入しまくって観ているわ(どうでもいい)。

というわけで、LGBT的にも楽しめる要素満載(たぶん)の「ウィキッド」。
●季の演目の中では、比較的役者さんたちがのびのびと演じている方だと思う(アドリブ入りまくりなブロードウェイに比べれば、かなりおとなしいけど)ので、首都圏在住で「まだ観たことがない」という人は、この機会にぜひ観てみて!

ってアタシ、●季関係者&●季ファンの方に怒られるかしら。
大丈夫かしら。

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