第3回 連邦制と同性婚の関係

8月26日(月)
いよいよ今日から、IVLPの研修が本格スタート。腹が減っては戦はできぬ、と朝食を摂るためにホテルのカフェへ。土日と平日とでは別の朝食メニューのようで、昨日のお気に入りのサラダがない様子。残念。。。シリアル、卵プレート、ベーグル、パンケーキ、と順番にメニューをボーッと追っていく中、寝ぼけ眼に飛び込んできたのはSteakの一文字。What!?(思わず独り言も英語。)朝から肉ですか。。。といいつつ、他にピンとくるメニューもなかったので、研修初日の景気付けとして朝から肉を喰らうことに。そしてこれが意外とペロリといけちゃいました。その達成感からか、清々しく、すごく活動的になった気分。このペースだと、3週間後に体重計に乗るのが恐ろしいですが。

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Steak and Eggs Plateとスムージー!

さて9時半から、ワシントンD.C.市内にある Institute of International Education(IIE)のオフィスにて、プログラム全体のオリエンテーションです。IIEは国務省から委託を受けて、IVLPの基本プランニングからコーディネートを行う7つのNPOのうち、最大大手のひとつ。僕たちのプログラムと同様に殆どのIVLPはワシントンD.C.から開始するとのことで、隣の会議室ではアフリカ組、その向かいの会議室では南米組がちょうどオリエンテーションを受けていました。1940年代に始まったという歴史あるプログラム。毎週月曜日に世界中から参加者が集まり、常時約250人が全米各地で研修を受け、年間でその数は約5000人!しかも過去の参加者のうち337人が、それぞれの国で大統領や首相を含む閣僚クラスになっているそうです。とてつもない規模ですね。。。汗

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Institute of International Education(IIE)のオフィス

まずは、国務省教育文化局のSandaさんから、IVLPの目的とプログラムを通して持ち帰って欲しいことについて伺います。ミャンマーから4歳の時に移民して来たという彼女は、東アジア・東南アジアの多様な文化に惹かれ、今の職についたとのこと。大学で日本語も学び、JET(The Japan Exchange and Teaching Programme:総務省、外務省、文部科学省等の下、地方公共団体が海外から外国語を教える若者を日本に招聘する事業)にて、2年間新潟で暮らしていたそうで、僕たち4人の参加者からの自己紹介とそれぞれの活動内容にも深く耳を傾けていました。「アメリカでも、LGBTの人権運動はここ20年の動き。そのダイナミズムをしっかり感じ取ってくださいね。LGBTをテーマにした研修は、実は、IVLP史上初なんですよ!」とSandaさん。日本向け企画としてだけでなく、他の国含めて初めてとは、本当にありがたいことです。

続いて、IIEのプログラム責任者Alexanderさんから、詳細の研修内容についての説明。日本を出国する時点でも殆どのアポが未定だったため、ようやく全貌が明らかに。訪問先や詳細についてはこれからのレポートにてお届けするとして、興味深かったのが9月5日から訪れるアメリカの中でも保守派の街、オクラホマ州のタルサ。ネイティブアメリカンつまりインディアンの部族の幾つかが残っている地であり、彼らの人権保護や文化継承についても学びつつ、ぜひ同性婚制度等に反対する人たちの声も聞いてみてください、とのこと。「明るいニュースばかりが報道されているが、アメリカにおいてもLGBTの人権はまだまだ動き出したばかり。どこに、そして、なぜ課題があるのかについても学んで欲しい。」と語るAlexanderさんは、同性愛宣伝禁止法が6月に制定され、LGBTに対する数々のヘイトクライムが加速化するロシアの出身で、最近アメリカ国籍を取得。漫画Monsterに出てきそうな表情の少ないおじさんです。そんな彼の言葉にどこか重みを感じ、寛容なプログラムの姿勢とラッキーな機会をいただけたことに、改めて感謝し身が引き締まる思いでした。

IIEの現場担当Robinさんから手続き上の細かい説明を聞いた後、ビジネスパワーランチでも良く使われるという、オーソドックスで格式を感じるアメリカンレストランの個室で、Sandaさん、Alexanderさん、Robinさん、参加者、通訳のお二人、全員揃って国務省主催のウェルカムランチ。朝食から肉を喰らう話は、おしゃべりな井戸さんを中心に既にネタになっていて、何となくの期待とプレッシャーを背中に感じ、結局、ランチも肉を喰らうの巻に。

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1日2食目の肉。。。

良かったのは、同じく肉を喰らっていたAlexanderさんが和牛好きという話から盛り上がり、いろんな話ができたこと。怖くて冷たいイメージだった彼は、とても温かく面白い人で、義理の妹が州警察でレズビアンとしてカミングアウトして働いていて、今回のIVLPには特別な思いがあることも知りました。Sandaさんは託児所に二人の子どもを預けていて、そこの親の会の代表がゲイカップルだったり、当事者でなくても身近にLGBTがいるというのが少なくともワシントンD.C.でも少しずつ当たり前に。スタッフのうち、いつも笑顔で、だけど唯一自分のことをあまり語らないRobinさんは、もしかしたらクローゼットな当事者なのかも?と思いましたが、IVLPチームの間では当事者であろうがなかろうが関係ないじゃん?という空気が自然と流れているようでした。

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国務省主催のランチ、実は井戸さんも肉をペロリと

午後は、George Mason大学のMayer准教授によるアメリカ政治と連邦制についての講義。連邦制の利点と欠点を、実例をもとにしながら、わかりやすく説明していただきました。基本的に、貨幣、軍事、安全保障等においての法律は連邦政府の管轄だけど、上記以外については50ある州それぞれに法律が存在し地方自治のあり方もバラバラ。例えば、アメリカ市民のIDとしてよく使用される運転免許証。デザインも記載内容も発行方法も州で違うため偽造も横行し、実は9.11を防ぐことができなかった原因のひとつに、空港職員が50種類の運転免許証を正しく区別して確認することがほぼ不可能だったという事実が報告されているようです。他にも、いとこ同士で結婚できる州が25、結婚できない州が25と半数ずつ存在し、お互いが65歳以上であれば結婚できるという晩婚奨励型?の州も。昔は12歳でも親の許可があれば結婚できたテキサス州には、離婚はあってはならぬという約束をして結婚する約束結婚と、離婚するかもという前提の結婚、二つの結婚があるそうです。ネバダ州は、成田離婚ならぬラスベガス離婚を想定して、ドライブスルーのように簡単に離婚できる法律があったり、LGBTや同性婚と深く関係する家族法だけでも、笑っちゃうくらい内容はバラバラ。

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George Mason大学のMayer准教授、実は日本語がお上手

アメリカのLGBTにとって歴史上画期的な判決を下したとしてメディアを湧かせた連邦政府の結婚防備法(DOMA)のケースは、最高裁がDOMAを人間の平等の保護を謳う憲法に違反するとしたもの。連邦政府レベルにおいて同性婚に対するひとつの大きな見解が出されたわけですが、結局は州単位での個別判断に任せるしかないというのが連邦制。カリフォルニア州の同性婚を禁じたプロポジション8も却下され、カリフォルニア州の同性婚は可能であるが、この撤廃は他の州には影響を与えないとの決定も明確に出されています。ちなみに、同性婚はもともと民主党が州レベルの話だと主張、共和党が連邦レベルでのトピックとして反対していたのが、今では共和党が州での課題に留めようとする中、オバマ大統領は海外で結婚した同性カップルの国内での扱いに焦点を当て外交問題として連邦レベルのアジェンダに持ち込もうとしているそうです。なんだか政治ゲームみたいでテレビドラマ「ホワイトハウス」を思い出します。声優の夏木マリ、報道官役がハマってたなぁ。

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真剣にMayer准教授と議論を交わす4人

あっという間の2時間半の講義の最後にMayer准教授から、「今はアメリカ政治の危機。アメリカがこれまで以上に民主党と共和党で二つに割れてしまい、まるで南北戦争。州政府ではなく連邦政府の力をもっと強くしていかなければならない。」という締めのお言葉。すかさず、大悟さんが「オバマ大統領は、リベラルな(青の)アメリカも、保守の(赤の)アメリカもない。あるのはアメリカ合衆国ひとつだと言いましたが、そうはなっていないということでしょうか?先生ならどうしますか?」と質問。Mayer准教授は頭をかきながら「オバマになってから、状況はもっと悪くなったね。正直、打開策はわかりません。もし見つかれば、私は准教授をやめて政治家になるよ。」と答えていました。大悟さん、普段はおとぼけだけど、やはり政治家なんですね。かっこ良かったです。

15年ぶりに大学生に戻ったみたいで、脳みそが筋肉痛。夕飯までは時間があるので気分転換を兼ねて、ワシントンD.C.の中心地からタクシーで15分程度のところにある「The DC Center」というLGBT向けのコミュニティセンターを訪ねることに。Dupont Circle付近と違って、街はどこか雑然としていて、ちょっと柄の悪そうな黒人の若者が飲食店の前で、気だるそうにたむろしていたので少し身構えてしまいましたが、建物の中に入ると静かで整っていてちょっと安心。新宿二丁目aktaの2倍くらいのスペースに、自由に使えるPCコーナー、大きなテーブルとホワイトボードの打合せコーナー、壁際にスタッフのデスク、奥には会議室とキッチン、ライブラリーコーナーと充実しています。日本滞在経験もあるというスタッフに聞くところによると、女性・トランスジェンダー・家族・アジア系・ラテン系・障害者・喫煙者等々、20部門を超えるプログラムを常設スタッフとボランティアスタッフと外部スタッフが協力して企画運営しているそうで、年間予算は25万ドル程度とのこと。かなりしっかりした運営体制です。

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入り口のレインボーカーテン@The DC Center

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スタッフのデスクスペース

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充実のライブラリーコーナー

小野ちゃんと大悟さんとあれこれ探索していると、初老の女性二人がセンターを訪ねてきました。せっかくだから、お話をしてみることに。うち1人は、「Get Equal」という団体を率いるEllen Sturtzさん。仕事を退職した後も、LGBTの人権擁護のために講義活動や新聞等への寄稿を行っているとのこと。最近はオバマ大統領が就任時に約束していた「職場でのLGBTへの差別撤廃」に関して未だ取り組みが見えない、とあちこちに働きかけているそうです。日本からLGBTテーマのIVLPに参加するためにワシントンD.C.に来たことを伝えると、とてもとても喜んでくれた様子。熱いハグを交わし記念撮影。

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Ellenさん(写真中央)の名刺に、Beautiful Noisemakerという肩書きを発見

夜のパトロールは、そのまま3人で、日中にDupont Circle近くに見つけたレインボーフラッグが掛かっているお店へ。2階はポルノ&レザーショップ、1階がカウンターバーの「Black Fox Lounge」。店先にドラァグショーのポスターが貼ってあったので、今晩はこれを見よう!といそいそと奥に進むと秘密の階段。地下からは何やらリハーサル中の音が聞こえ、受付には「LA-TI-DO」というドラァグショーとは別のポスターが。店員さんに聞くと、とにかく10ドルで120ドル分楽しめる音楽と朗読のイベントだから観てみて!とのことなので、参戦を決定しました。

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Black Fox Loungeの2階に潜入

お酒とポテトをカウンターで買って席に着くと、狭いスペースにギュウギュウのお客さん。そして、蓋をあけてみてびっくりでした。ライブステージには、ピアノとバンドが控え、12〜13人のキャストが代わる代わる客席からステージにあがり、ミュージカルのナンバーを次々に披露していきます。しかも、みんなめちゃくちゃ上手で、男性も女性もかわいいんです。2時間15曲くらいのライブでしたが、聴かせる歌もコメディ調の笑える歌もあり、会場内の一体感がとにかく凄い。本当にあっという間でしたが、3人とも大大大満足でした。終了後にスタッフに聞くと、キャストの殆どがミュージカル舞台俳優かその卵たち。LGBTキャストもたくさんいて、昨年立ち上げてから毎週月曜に10ドルのキャバレースタイルというこだわりを崩さず、ワシントンD.C.の街にクオリティの高い感動をお届けすることを目指しているそうです。ワシントンD.C.にお越しの際は、ぜひ!

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1曲目から最後まで全力疾走!

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LA-TI-DOのポスター

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