第4回 Ally と Alliance

8月27日(火)
本日は、訪問先が朝から夕方までみっちり。スタートは、George Washington 大学の医療健康学科のTimothy Kane教授による、アメリカにおけるLGBTを取り巻く歴史と現在の人権に関する取り組みについての講義から。まずは、お互いのことを少しでもわかり合いたいよね?ということで、自分の名前の由来を絡めて自己紹介をすることに。「Hi, my name is Timothy Vianne Kane. I’m gay!」と陽気にスタートをきったKane教授は、ハワイ出身の9人兄弟の7番目。Timothyは男の子によく付ける名前で、その由来はパウロへの書簡。ミドルネームのViannieは男性の神様の名前だけど女の子によく付けるらしく、カトリック教徒の叔母さまからもらったもの、またKaneはアイルランド系の一族の名前で母親の両親がハンガリーからの移民とのこと。「名前から分析すると、僕の3分の2は女性的な要素でできてるのかしら。」と語るKane教授。ソフトな物腰としゃべり方とは裏腹に、体は185cmくらいあってデカく、吸い込まれるように薄い緑の瞳も巨大、海外テレビショッピングのお兄さんのようなプラスティックスマイルの大きな口で、油断してるとバクッと食べられちゃいそうです。そんな僕たちの心を読んでか、「これでも子どもの頃は女性っぽくて、両親にフットボールをさせられたんだよ。兄弟はみんなモノにならなかったけど、自分だけスター選手になっちゃって。あはは。ゲイって負けず嫌いが多いから。」と。

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Kane教授による講義スタート

ひととおり自己紹介が終わり取り出したのは、カラフルな輪ゴムを何重にも重ねてつくった手鞠。ひとりひとりがもっている名前にも本当にたくさんの歴史や意味が込められていて。そして、仕事も学歴も趣味も友人も家族も、いろんな要素でできあがっているのが、ひとりの人間。セクシュアリティもその一部で、それは3次元に深みが広がっている。つまり、とてもBeautifulなものなんです、というKane教授の説明には、4人みんながすごく納得させられた感じでした。宗教学や心理学を専門としながら、LGBTやセクシュアリティについても学問としての視点で研究し、様々なところでお話をされているということ。これまで何となく頭でわかっていたこと、知っていたこと、感じていたことが、きれいに整理されていきます。

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カラフルな輪ゴムでできた手鞠、プレゼントにもらいました!

90年代以降、アメリカにおけるLGBTの人権運動が加速し始めたのは、「Social norms」(社会通念)、「Laws & Funding」(法律と資金)、「Policies & Procedures」(政策と手続き)の3つの分野への働きかけが、色々な主体により同時に行われてきたから。そして、どれかが欠けるのではなく相互に補完し合えることが重要で、なかでも「Social norms」(社会通念)に対するチャレンジが運動における一番のドライバーになってきた、という分析です。また、その社会規範を動かすアプローチは、TVを中心とするマスメディアと個人のカミングアウトによる「LGBTの可視化」、差別やいじめへの対抗と正しい知識提供という「LGBTに関する教育」、当事者との理念を共有し具体的な協力関係を推進する「LGBTのアライづくり」の3つがコアになるとのこと。ほんと、欧米の先生は『ポイント3つ』が好きだなぁと思いつつ、なんだかんだわかりやすい!体系的に考えることは、自分の考えをクリアにするだけでなく、周りにも伝わりやすくなるんだと改めて思いました。

グッドの活動を始めて以来、世界でのいろいろな動きをなるべくチェックしてきたつもりですが、カミングアウトしている著名人やLGBTを扱うドラマや映画、影響力のある誰かの発言など、意外と知らなかったり抜けてたりすることばかり。実は、オバマ大統領が自分自身クリスチャンとしてLGBTの権利についてどのように受け止めれば良いか迷っていたとき、LGBT-Ally(アライ:理解者、味方)になりたいと心に決め、昨今の同性婚支持の決断をする大きなきっかけとなったのが、娘のマリアとサーシャとの食卓での会話だった、ということも初めて知りました。二人の通う学校にも同性カップルを親に持つ友達がいて、彼らにも幸せになる権利があるんじゃないかしらと後押しを受けたという話。ついつい広告屋的にはうまく美化されたストーリー?と穿った目で見てしまいがちですが、それが美化されていたとしても、人の心を動かす力を持つのなら全然良いのかもなと思いました。

また、個人的にKane教授の言葉で印象に残っているのは、「LGBTの権利向上のために、僕は男性としての特権、白人としての特権を利用していく。だって僕は男性であり白人でありゲイなんだし、それが誰かの権利のために有利なら使わない手はないですよね?そして、権利を勝ち取るのに、一番大切なのはAllyづくり。女性解放運動の象徴だった働く女性たちは、現在、LGBT運動の強い味方に。もちろん当事者がエンパワーすることは大事だけど、みんなで一緒に戦わないとムーブメントにならないのです。要は強いAllianceをどれだけ組めるか。」というもの。日本ではLGBTといっても、それぞれは意外と遠い存在。戦うための同盟だ、と大きく振りかぶるのはちょっと怖いけど、お互いにもっと知り合って、お酒飲んで、楽しんで、語り合えたらいいなと思いました。

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ちょいエロおやじのKane教授の右手は僕のお尻をさわさわしてました。もしかして左手は大悟さんへ!?

午後いちばんに向かった、次の訪問先は、Human Rights Campaign(HRC)。街中のショップでレインボー・テディベアを販売していた団体です。オフィスに到着してびっくり。オフィスどころか、なんとビル丸ごと一棟がHRCなんです。フルタイムの職員が150名以上いて、全米33の都市に現地ボランティアが存在し、連邦レベル部門、州レベル部門、市町村部門、教育部門、職場部門、家族部門、衛生部門、高齢者部門、国際協力部門、法律部門、調査部門など、目的と施策に応じて組織化。年間予算は約5000万ドル。。。LGBT関連における全米最大のNGO/NPOとは聞いていましたが、のっけから打ちのめされてしまいました。驚いたのはその資金構造。約50社という企業スポンサーからの寄付金は全体の8%足らず。残りはワシントンD.C.、サンフランシスコ、マサチューセッツにあるブランドショップとオンラインショップでの物販事業、そして全米各地に存在するという約200万人のサポーターからの寄付が大部分を占めるとのこと。特にLGBT権利運動の母体は、草の根的な活動なので、HRCを応援したい、HRCと一緒に何かしたいという約200万人サポーターの力が大きいそうです。

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ビルごとHuman Rights Campaign

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小さなオフィスでもいい、グッドもつくるぞ!と決意

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オリジナルTシャツのデザイン、オシャレであるって大事

まずは、法律部門のディレクターBrianさんから、アメリカにおけるLGBT関連の法的整備状況の概略をお聞きしました。最近のトピックである同性婚については、DOMAに関する最高裁の判決時点で、13州がその違憲性を認め、同性婚を法律として定めているのに対し、パートナーシップ法などを除くと、31州が同性カップルに対する婚姻もしくはそれに近い形の権利を認めていない状況とのこと。同性婚だけでなく、50州それぞれにおける、養子縁組、いじめ対策、ハウジング対策、職場での平等、医療関連の対策などの進行状況の違いや情報はリアルタイムで更新され、一覧のまとめ情報をWEBサイトに公開するなど、幅広い情報提供を通して全米各地でのNGO/NPO等の活動を支援しています。

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50州ごとに色分けされたLGBTイシューマップ

また、政治活動委員会という組織を通しては、LGBTをサポートする議員の候補者に対してHRCから推薦を出し、金銭的なサポートを行っているとのこと。この辺りは、井戸さんも大悟さんも前のめりで質問の嵐です。Brianさんいわく、「2012年は、大統領選挙があったこともあり、通常よりは多い100人くらいの人に推薦を出しました。全員にお金を渡しているわけではないけど合計200万ドルくらいを支出しています。結果として、80〜90%の候補者が当選しました。」とのこと。興味深いのは、サポートしている政治家のほとんどがLGBTではないということ。Allyの議員を増やし法律を通すことが最重要な目的なので、HRCが設けたLGBT-Allyチェック項目を民主党も共和党も問わず候補者に質問し、可能性のある候補者に対して推薦を出していくという一貫した方針。Kane教授のお話された、「Laws & Funding」(法律と資金)の部分を大きく担っているのが、これらの活動なんですね。ちなみに、現在アメリカでセクシュアルマイノリティを公言している議員は、上院で1人、下院で6人。トランスジェンダーの議員はまだいないそうです。

続いて国際協力部門のTyさんからは、アメリカ以外の国での活動について。HRCとしても海外でのLGBT関連の動きはここ数年のことで、あまり事例はないそうですが、同性愛宣伝禁止法が6月に制定されたロシアの件が話題になりました。具体的な動きは現在計画中とのことですが、ソチオリンピック開催に向けてIOCに署名を提出するとのこと。既に10万ほどが集まっていて、今週末からはメッセージTシャツも販売するそうです。また、IOCのオフィシャルスポンサーの殆どがHRCのスポンサーであることを利用して、彼らがオリンピック関連で儲けた利益をロシアにおけるLGBTの権利保護のために使うプランも提案予定。ミスユニバースの決勝を同じくロシアで開催することもあり、そのスポンサーのひとつであるトランプ財団に対してのロビイングも開始したとのこと。国際協力部門の活動が始まったばかりとはいえ、企業の巻き込み方など学ぶ点が多いです。HRCが提供するBuyer’s Guideも有名で、今年で12年目となるLGBTフレンドリーな企業をランキング化する調査「Equality Index」をベースにしています。Fortune100の企業などが、LGBT権利保護を企業活動として取り組んでいるかを、具体的な企業規範や教育プログラム、福利厚生制度などの項目にてチェックしていくもの。それらを通して企業での取り組みを推進しつつ、必要であれば企業の具体的施策に向けたコンサルティングを行うなど関係づくりも上手くやっているそうです。

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もうすぐ発売のロシアキャンペーンTシャツのデザインラフ

最後は、質問タイム。井戸さんからの「こんなに素晴らしい活動は、決してLGBT当事者だけでは進めることはできないと思うのですが、当事者以外のAllyのスタッフはどれくらいいらっしゃるのですか?」という問いかけに対して、これまで会議室にずっと黙って座っていた女性が、笑顔で語り始めました。「まさに、私のことですね。私はストレートでHRCのスタッフとして働いています。それはとてもとても個人的なきっかけで。実は私の母がレズビアンなんです。高校生の時にカミングアウトされて、その頃は、どう受け止めていいかわからず、ふさぎ込んでしまうことも多くて。友人にもとても助けられました。そして何より、私のことを愛してくれる母にも。そんな母のことを守りたくて、そして同じように苦しむLGBTファミリーのことを助けたくて、このオフィスで働いているんです。」

Limorさんは23歳。アメリカではLGBTの当事者だけではなく、LGBTを家族に持つ人たちが少しずつ表に出て、Allyとして活動を始めているとのこと。2時間の会議を終えた後、オフィスを出ていくまで、小野ちゃんはLimorさんとずっとずっとお話していました。「どうしても、あなたの声で、日本にいるLGBTファミリーに向けてメッセージを送って欲しいんです。」と頼む小野ちゃんに、彼女は「もちろん!私ができることは何でも!家族の愛は、世界どこでもいっしょですよね!」と。大きなHRCビルの前で記念撮影し、Limorさんのメッセージビデオの撮影も。小野ちゃんだけでなく、4人みんなの目に涙。LimorさんのOKがもらえたら(絶対、笑顔でAbsolutely!のはず)、この連載でも紹介できればと思います。とにかくキュートでハッピーなLimorさんに感謝です。

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HRCスタッフと記念撮影

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Limorさんと小野ちゃん、それを見守る大悟さんと僕

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Limorさんのメッセージを撮影後、感極まる小野ちゃん

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母と娘の、あったかいHug

HRCのオフィスを出て向かった先は、アメリカ国務省のビル。国の中枢なのでもちろんセキュリティも厳重。金属探知機、IDチェックを終えて、30分以上待たされて、ようやく建物の中へ。東アジア・太平洋関連局の会議室に、入れ替わり立ち代わり、LGBTや家族に関わる様々な部局の方々がいらしてお話していただくスタイル。ハーグ条約部局のPeterさんからは、養子縁組みやステップファミリーのアメリカにおける現状と、児童連れ去りにおける日本との関係について。アフリカ部局に在籍しつつ省内のLGBTの情報取りまとめを行っているJackさんからは、ヒラリークリントンが各国の大使館に対して、LGBTの権利状況について報告レポートを依頼し情報を集約している件、それらを元にアメリカから海外へ出て行くLGBTの観光客やビジネス客に対して安全情報を提供している件、について伺いました。アメリカでは、国民の33%しかパスポートを保有してない中、LGBTコミュニティは80%が保有。そのうち、昨年は50%が海外旅行を経験しているとのことで、非常に大きなマーケットであることも教えていただきました。

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国務省の入り口フロア。国旗が並ぶ。

続いて、省内にてLGBT関連の問題に関して、アメリカ国外との関係作りを行っているReginaさんから、LGBTの援助金の話や国連の人権委員会と連携して動いていることの概略を。昨年まで東京のアメリカ大使館で働いていた、日本部局のLauraさんからは、アメリカ大使館と国務省のリエゾン内容や、日本に関する人権報告書について。ちなみに、アメリカに対しては、日本ではLGBTに対してある程度の差別があり、差別を禁止する法律がない。というレベルの情報しか届いていない模様。一事例として、井戸さんが取り組まれている嫡出子関連の係争についても触れられていました。

個人的に興味を持ったのは、Judithさんのお話。オバマ大統領が選出されてできた国際障害者人権特別アドバイザーというポジションにつく彼女自身も、車椅子に乗っている障害者。カリフォルニアで長年障害者の権利向上に尽力してきた功績から、今の職に大抜擢されたそうです。アメリカにおいて、障害者コミュニティとLGBTコミュニティの連携は様々なフィールドにてとても進んでいて、具体的な活動としても大きな結果を残してきたとのこと。「年配者のLGBTや、外国人の耳の聞こえないLGBTなど、世の中にはダブルマイノリティ、トリプルマイノリティが存在する。多面的な視点で課題を見ることが大切だと思うの。複雑に絡みあった人権の問題はパズルと同じ。ひとつひとつパズルを解くように、共通点と相違点を見つけ、みんなでアイデアと勇気を出し合っていくことが大切なの。いっしょだと楽しいしね。私たち障害者がLGBTのAllyを見つけ助けてもらってきたように、障害者や他のマイノリティの中にもLGBTのAllyをどんどん増やしていってね。大きな力になることは間違いないから。みなさんならきっと大丈夫だと信じてます。」と言うJudithさんは、確かな経験の結果にもとづいて、とても自信に満ちていて頼もしく感じました。

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Judithさんをはじめ国務省スタッフと。

夕食はホテルから歩いて5分ほどのところにある、トルコ料理の「Agora Restaurant」へ。日本のアメリカ大使館のJoshuaさんから紹介されたゲイカップルとリアルすることに。先にお店に到着していたAlexさんは国務省勤務の外交官で、Joshuaと入れ替わる形で大使館からワシントンD.C.に戻ってきたとのこと。国務省内のLGBT職員の公式ネットワークの委員もしていたこともあり、なんとIVLPの訪問先としてもアサインされていたそうですが、夕食を共にすることになったので、そちらはキャンセルに。LGBTの世界はほんとに狭い!そしてAlexさんと日本人の秀太さんは、やっぱり熊さんカップルでした!しかも、先日8月9日に14年のお付合いを経て結婚したばかりでピンクのオーラを背負ってます。二人の友人のJasonさんも外交官で、Alexさんと同時期に東京のアメリカ大使館で働いていたとのこと。ちょっと遅れて登場した水泳選手Ivoさんとは2008年に既に結婚済。しかも4人とも、めちゃくちゃ日本語が上手なのにびっくりしました。(秀太さんは当たり前ですが。。。)

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ついに会えたAlexさんと秀太さん。木曜夜のBear Night にも誘われました。。。僕、熊専じゃないんです。。。

実際に結婚しているカップルにお会いするのは初めてということで色々と質問攻撃する僕らに、やさしく答えてくれる両カップル。白ワインを飲み過ぎたこともあり、僕も調子に乗って、「同性カップル、特にゲイカップルはノンケカップルと比べて長続きしないと言うけど、実際に結婚するカップルってどれくらい?そうは言っても離婚するカップルって意外と多いんじゃないかなと?」なんて、新婚さんに大変失礼でいぢわるなことを聞いてしまい、言った先から既に後悔。でも、そんな質問にも、秀太さんは「僕らはもちろん離婚するつもりはないけど。笑。いままで結婚という選択肢がなかったしね。もし結婚できるとなったら、例えゲイであっても二人の関係づくりのあり方が変わるんじゃないかなと思うよ。」と。。。優しい〜。。。涙。僕ら4人をホテルまで送ってくれたAlexさんと秀太さんが仲良く帰っていく後ろ姿を見ていると、ほわっと心が温かく幸せな気持ちになりました。ちなみに、秀太さんはAlexさんを、プーさんではなく、アレックマと呼んでるそうです。

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8人で。たくさん幸せをわけて頂きました。

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