第6回 夢見るLGBTアクティビスト

8月29日(木)
今日はIVLPにて2つめの都市へ日帰りで。7時半にホテルを出発し、大型バンに乗って向かう先は、メリーランド州ボルチモア。Charm Cityの愛称で知られるボルチモアは人口約63万人のメリーランド最大の都市で、1812年戦争の時期に現在のアメリカの国歌が生まれた港町でもあります。Johns Hopkins Hospitalとそれに付属するメディカルスクールは世界的に有名で、各国の医療研究者が常時ボルチモアを訪れ共同研究などを行っているそうです。明日8月30日から9月1日までの3日間、インディーのボルチモアGPが開催されるということで、街の至るところの道路が既に封鎖されていてコースが作られていました。

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ヨーロッパの雰囲気が町並みにも残るボルチモア

1つ目の訪問先とのミーティングは9時半にスタート。Equality Maryland(EQMD)は、メリーランドで一番大きなLGBT権利保護NPOで、1994年に設立された当初はFreestate Justiceという名前だったそうです。「Human Rights Campaignのような全国組織も重要だけど、連邦制のアメリカでは結局は州レベルでの推進活動が要になってきます。アメリカ全土の動き、時代の動きに合わせて名前も変え、活動内容もシャープにしてきました。人々を巻き込むのはコミュニケーションの話だから、最適な形にフィットさせてきたと言うほうがいいかしら。」と語るのは、エグゼクティブ・ディレクターのCarrieさん。弁護士の資格を持つ彼女をはじめ、常時5名程度のスタッフが在籍し、選挙キャンペーンや住民投票の際に臨時スタッフを募るというスタイルをとっています。1998年からセクシュアルマイノリティに対する差別撤廃を目指す活動を行ってきた結果、2005年に制定された差別禁止法にセクシュアルマイノリティが対象として含められただけでなく、裁判官がヘイトクライムの証拠を正式に認めると、10年の禁固刑にプラスして5年の懲役が課せられる条項が加えられたそうです。

「日本には差別禁止法は存在しません。また、LGBTに対する差別を助長させるヘイトスピーチが表現の自由との兼ね合いもあり止められず横行しています。昨今、外国人等に対して勢いを増すヘイトクライムが、そのうちLGBTにも及ぶのではないか懸念しています。アメリカはどうなんでしょうか?」と大悟さんが質問。すかさずCarrieさんからは、「アメリカは残念ながら、憲法にて表現の自由を謳っているのでヘイトスピーチは制限できません。私はもともとカナダ人なのですが、カナダの法律を参考にしてみては如何でしょうか?カナダでは表現の自由を保障しつつ、判例をベースに表現の質についてある程度制限を設ける形をとっています。」という専門的なアドバイスも。アメリカのNPO/NGOを幾つか訪問して感じるのは、その専門性の高さ。日本での活動を紹介すると、「What is your background?」と聞かれることもしばしばですが、それは単なる強い思いだけでなく、法律、会計、福祉、PRなどの専門家をきちんと組織に組み込み、具体的なアクションを作り上げる体制を整えるという意識があるから。見習いたいなと思います。

そんな専門性という意味で、普段、広告会社で働く身としてとても関心を持ったのが、メリーランド州での同性婚制度導入に向けた一連のキャンペーンについて。2004年に8人の同性カップルの代理として係争し下級裁判所で勝訴。転じて、2007年にメリーランド州では認められないとう結果に。最終的に2012年に州議会が結婚法を通過させた後、175,000件の署名を集め、ミネソタ州、ワシントン州、メイン州と同時期に住民投票に持ち込んだ形とのこと。直前まで世論調査にて賛成51:反対49という僅差だった状況から67%の支持率まで押し上げられた理由として、Carrieさんは、Ally向けのメッセージ改善と気合いの人海戦術の二つがカギだったと語りました。当初は「LGBTにも権利を」と訴えていたものを「LGBTにも権利と責任を」という内容にシフトし、闇雲な権利要求に見せないよう工夫。当事者をキャンペーン広告には登場させず、その家族や友人の口から「私たちは家族の幸せを願っている」と語るメッセージや、同性婚擁護派のカソリックの神父が発する「みんなでメリーランドの子どもを守りましょう」というメッセージも検討。最後は、事前にメッセージ調査をし、「私たちの家族は、あなた達の家族と同じです」ではなく、「私たちの家族は、あなた達の家族と同じものを望んでいる」というメッセージを、LGBT当事者のパーソナルなストーリーにのせて発信する方向に決定したとのこと。また、同性婚反対派は、個人的にLGBTが身近に存在する世の中になりつつある変化を捉えず、一貫して「同性婚は、伝統的な家族の価値や幸せを壊すもの」というメッセージに固執したことが敗因だとも分析していました。

現在は、これらの成功体験をいかし、自身もFtMトランスジェンダーのOwenさんを中心に、2005年制定の差別禁止法から抜けてしまったトランスジェンダーを再度組み入られるような活動や、Trans Marylandersという当事者が友達、親、同僚といっしょになって語るビデオメッセージを制作して、オバマ政権が導入しようとしている新しい医療制度にも、トランスジェンダーの項目を検討してもらう活動を進めているそうです。世論調査では、トランスジェンダーの人権保護に関する賛成が73%程度まで広がっているとのこと。「自分がどんな悩みを抱えてきて、そしていまどのような幸せを望んでいるか、そんなPersonal JourneyをAllyたちに届けていくことがトランスジェンダーについては重要です。また、特に、住民投票や選挙になった場合、トランスジェンダーはIDチェックがあるため、なかなか投票所に足を運ばない傾向にあります。フレンドリーなスタッフによる付き添いや、期日前投票のステップ指導など、ギリギリまでサポートしていきたいです。」と、Owenさんは時々お茶目にウィンクしたりしながら、堂々と自信をもって語っていました。

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CarrieさんとOwenさんと。

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陽気な二人を見てボルチモア舞台のHairsprayを思い出しました。

EQMDのオフィスを出て、ランチはベイエリアの映画フォレストガンプをテーマにした、アメリカン・シーフード・レストラン「Bubba Gump Shrimp」にて。港と言えばシーフード、というFredさんの提案により即決でしたが、よく考えればLaQuaとかにも入っているし、何故わざわざボルチモアで。汗。途中、店員さんがフォレストガンプについてのカルトクイズを投げてきましたが、なんとFredさんは全問正解。フォレストガンプが大好きというFredさんが、この店を提案して来た理由がわかりました。笑。Fredさんとマリエさんという通訳さん体制で臨んでいる今回のIVLPですが、一番負担がかかっているのがお二人。午後の部に向けて好きなものを食べて英気を養っていただくという意味では良かったのかもしれません。僕たち4人は、訪問先の方のお話を右耳では英語で、左耳では常につけている同時通訳のイヤホンからお二人の日本語で聞いている状態。さらに、僕たちが話す日本語は、常に英語に逐次通訳。それはそれで大変で、15分おきに交代して通訳されています。

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ハーバーエリアの様子。

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「RUN FOREST RUN」はオーダーお願いします、の合図。

ランチの会話では、そんな通訳状態の中で、僕がちょっとだけ気にしていたことを共有。それは、いつも訪問先にいくと4人それぞれが自己紹介をするのですが、僕がグッドの活動について説明をすると、必ず通訳のお二人は、冒頭にて「I’m Gon Matsunaka, an LGBT activist…」と英語で付け加えて、僕の説明をフォローしてくれること。個人的にはアクティビストという言葉の響きに対して、権利を声高に叫ぶだけの怖い人、政治家などの権力者とつながって裏で動いている人、というネガティブなイメージがあったこと。なので、グッドの活動はちょっと違うぞ、より具体的で楽しいコンテンツを提供してるぞ、というこだわりを持って来たこと。そして、今回IVLPに参加し、様々なNPO/NGOの方々の話を伺い、何か小さなことでも世の中を変えたいと思って活動をしている人はみな、英語ではアクティビストで、そのアプローチがそれぞれ違うだけなんだと思うようになったことなど。同じ金沢出身の東小雪ちゃんから二人のWeddingのお手伝いをしている時に、「アクティビスト仲間のゴンさんに手伝ってもらえて嬉しい!」と言われ、アクティビスト認定発言にショックで顔面硬直状態だったこと(小雪ちゃん談)や、Tokyo SuperStar Awardsの主催者の一人であるYossyが、来日中のLady GaGaに受賞のトロフィーを手渡すことができるチャンスが突然目の前にやってきた時に、とっさに「Nice to meet you. I’m a famous Japanese LGBT activist. 」と自分でfamousと決め顔で語ってしまったことを思い出しては、笑いがこらえられず、エビフライにたっぷり載せたタルタルソースを何度もテーブルに落としてしまいました。

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Fredさん、マリエさん、いつも気の利いた通訳、ありがとうございます!

午後は、2つの訪問先です。1つ目はOffice of the Maryland Attorney General (OAG):メリーランド州司法長官事務所、2つ目はMaryland Commission on Civil Rights(MCCR):メリーランド州公民権委員会、どちらもメリーランド州におけるLGBTの人権に関して、公的な存在として関わっている組織となります。まずは、OAGのChief CounselのScottさんからメリーランド州における結婚の法的な位置づけと歴史について。イギリスの植民地として設立されたメリーランド州は当時宗教によって結婚が定められており、教会において、男性と女性と司会(神父)の3人が立ち会い、男女二人の誓いの言葉をもって成立していたのこと。その名残は1930年代まで続き、もし二人の結婚関係や書類に不正があった場合、司会(神父)に対して罰則が設けられていたくらい宗教の存在が大きかったそうです。現在の結婚の形に法的に整備されたのは1957年で、それ以降、同性婚制度が認められるまでは一度も修正されることはなかったとのこと。続いて、Bonnieさんからは、LGBTの公民権運動の広がりについて。1969年6月28日にニューヨークで起こったストーンウォールの反乱の波が、メリーランドにも飛び火し運動の種が生まれたそうです。1980年代から1990年代にかけて、住宅や雇用においての差別禁止反対の動きが加速化し、2001年に当時の民主党出身の知事からLGBTの差別禁止を優先すべきとの発言を引き出したとのこと。その後共和党出身の知事の在職中は一旦動きがとまったが、2006年の民主党出身の知事が当選して以降、よりポジティブに動いているらしいです。

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司法長官席に当然のように座る井戸ママ。

ここまで来てみなさん、歴史の授業みたいで眠たくなったりしてませんか?実は僕は限界の域に達していました。汗。必死にくらいついて話を聞こうとしても、左耳からの日本語と右耳からの英語が美しいララバイの旋律を奏でていて、気づくと白目状態。椅子を座り直したり、背筋を伸ばしたりしても効かず。靴を脱いで、テープルの脚の角に足つぼを当ててみたり。ちらりと足元を見ると、隣の井戸ママもヒールを脱いで足のストレッチ中。タイプしながらとっているWordメモも、何分くらい経ったかさえわからない幽体離脱から戻ってくると、wwwwwwwwwww…..と大爆笑状態。。。ディレクターのKishaさんごめんなさい。IVLPの関係者のみなさん、ごめんなさい。。。涙。

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オフィスからのボルチモアの街。ここを遊泳してたようです。

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驚愕のWordメモを公開。解読不能。I had a Dream !

この状態は、次のMCCR:メリーランド州公民権委員会のミーティングにも続いてしまったため、以降は、4人のうち唯一のサバイバー小野ちゃんのメモを中心に。まずはエグゼクティブ・ディレクターのNeilさんより、委員会の概要についてのご説明を頂きます。基本的な委員会の役割は、雇用関係における差別、公共の場や住宅における差別を中心に、性別、人種、国籍、障害、婚姻関係、性的指向などに関する苦情を処理することで、その数は年間約800件程度。当事者から事実聴取をして整理し、直接会って争点を見つけ解決していく。50〜60%をこの時点で解決できるが、具体的な調停作業になった場合は別組織に委託する流れになっているとのことでした。800件のうちLGBT関連の案件は2〜6%くらいで、8割が雇用関係、1割が住宅関係、のこり1割が公共の場所に関わるクレームとなっているそうです。

「LGBT関係の問題を聴取するときに難しいこと、気をつけていることはありますか?」という大悟さんからの質問に対しての回答は、「まだ5年程度しか案件を扱っておらず、それほどノウハウとして蓄積されていることはない。ケースバイケースで進めているが、本人がセクシュアリティを申告しない限り把握できないシステムなので、対応が難しいのは事実。」とのこと。少しずつ職員教育を行って、対応できるスタッフの基礎レベルをアップできるようにプログラムを組んだりはしているらしく、当事者スピーカーをゲストとして招いたりすることが増えているという。特にトランスジェンダーに関する意識や知識が不足しているので、いくつかのNPO/NGOとも連携を積極的に行っているようでした。意識を変えること、法律をつくること、具体的に運用していくことは全く別の専門性が必要であり、同時に進めていくことが求められている、というGeorge Washington大学のKane教授の言葉を改めて思い出しました。

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Maryland Commission on Civil Rightsでのミーティング。

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スタッフのみなさんと。

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街中に見かけた養育費ポストに井戸ママも小野ちゃんも興味津々。

メリーランドからバンで戻り、ワシントンD.C.最後の夜ということで、思い残すことのないように、というか食べ残すことのないように、Dupont Circle付近で食い倒れツアーに。唯一の研修サバイバーの小野ちゃんは、ここにて電池切れ。大悟さん、井戸ママ、そして同時期に井戸さんについてワシントンD.C.に来ていた娘さんと4人で、アクセサリーショップLou Louにてショッピングをした後、アイスクリーム屋「Larry’s Ice Cream」へ。FacebookでワシントンD.C.にいることを知った豪州留学時代の友人がおすすめコメントを書き込んでくれた店は、なんとHuman Rights Campaignの下。灯台下暗し、ならぬ、レインボー下暗しでした。

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Lou Louの商品はレインボーにディスプレイされてました。

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楽しそうに買い物する井戸親子を見て、僕も家族が欲しいなとふと思ってみたり。

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僕は塩キャラメル味。僕の友人おすすめの抹茶味は、大悟さんいわくハズレだったみたい。ごめんなさい!

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HRCショップの下にあるLarry’s。

デザートでお腹をならした後、ワシントンD.C.で一番行列のできるピザ屋に向かうと1時間待ちということだったので、Waiting Listに入れ、道路を挟んで反対側のシーフードレストランへ。アペタイザーとして、ムール貝とタコとソフトクラブシェルを平らげます。最後のしめはピザ屋に戻り、クワトロフォルマッジと茄子とトマトのピザを制覇。はい、もう、食べ残したものはございません。。。いよいよ明日からニューヨーク!

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一回目の乾杯 with シーフード。

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二回目の乾杯 with ピザ。

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