第19回 LGBT Youth Empowerment

9月11日(水)
IVLPの研修も、あと3日。オレゴン州ポートランドでの、最初の訪問先はQ Centerというコミュニティセンターです。アート、文化、各種コラボレーションプログラムを通して、ポートランドにおけるLGBTの認知拡大とコミュニティ内の交流促進を行うことを目的においたNPOが運営母体で、建物まるごとがセンター。まずは、マネージャーのPaulさんにご案内いただき、建物内をツアーしました。4年前まで地元の消費材メーカーの倉庫だったという場所には、幾つかの事務スペース、展示場、図書館兼打合せルーム、アイテムショップなどがつくられ、余った部屋はLGBT関連やHIV/AIDS関連の団体にレンタルスペースとして貸し出しているとのこと。「最近は寄付金等の資金繰りも大変で、外部の団体に貸すことにしたんですが、それでも何かしらLGBTにこだわって行きたいと思っています。」とPaulさん。ポリシーがしっかりしています。LGBTにゆかりのあるアーティストの方の作品が飾られたレセプション、ポートランドのLGBTコミュニティに貢献した多くの個人を讃える廊下を抜けると、アメリカにおけるLGBTコミュニティの歴史をレイアウトした大きなバナーがかかった展示スペースに。展示物の全ての費用をNikeがサポートしているそうで、彼らがNike Campusと呼んでいる本社にて社員教育イベントを使うものを制作し、年に1、2回あるイベント時以外は、Q Centerが保管している、という位置づけとのこと。「Nikeからは、Q Centerとしても相当の寄付を年間通して頂いているので、企業が税金控除を受けられる寄付限度額を超えてしまったそうなんです。Nike内には、寄付先に偏りがあってはならないという規定もあるようで。そんな中、このバナーシリーズの意義を伝えたところ、熱心な担当者の方が工夫してくれて、実質は寄付や寄贈状態なんですが、あくまでもQ CenterがNikeのモノを保管管理している、という覚え書を結んでくださって。。。」とPaulさん。ふむふむ、勉強になります。

館内ツアーをした後は、図書館兼打合せルームに移動し、PaulさんにスタッフのDanniさん、Addieさんが加わり、3人からお話を伺います。「LGBTのコミュニティだけでは発言力がないから、私たちは横で連携をとるようにしています。1992年に、アジア人系団体、ヒスパニック系団体などの6つのコミュニティといっしょに動き、警察署とのプロジェクトをスタートしました。マイノリティに対する差別や暴力になんとかコミュニティレベルで対抗しようというものです。残念ながら、6つのうち残っているのは私たちLGBTコミュニティだけですが。」と語るDannieさんは、元大学教授の64歳。女性と結婚して孫までいますが40代後半に自分のセクシュアリティに気づき、以降、MtFとして生きているとのこと。「昨年の2012年には、2つの大きな嬉しいことがあったの。一つは、ポートランド警察がIt gets betterのメッセージ映像も作ってくれたこと。もう一つは、警察での活動が波及して、消防署がPride paradeに参加してくれたこと。毎月、彼らとは会合を開いていて、話し合いの場を設けるようにしています。他の5つのコミュニティが途中で関係が希薄になってしまった原因は、継続的な関係作りにかけたことだと思っています。」

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図書館兼打合せルームの様子。

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Q Centerのスタッフ、元大学教授のDannieさん。

「ポートランドは、継続性も大切にしているけど、他の地域にはない新しい取組みをはじめる場所としても知られていると思います。」とAddieさん。「たとえば、LGBTの親や友人のためのグループPFLAGに黒人コミュニティ専門の支部を作ったり、みなさんがこの後訪問される、The Sexual & Gender Minority Youth Resource Center(SMYRC)という若者LGBT専門のセンターなども、アメリカの中でも最初に取組みをはじめたのではないかと。」Addieさんを含め、5名がパートタイム、5名がフルタイムという、たった10名にて運営するQ Centerですが、SMYRCでのプログラム連携も熱心に行っているとのこと。「とかくアメリカ全国から寄付が集まり予算化しやすい同性婚にフォーカスがあたりがちですが、特に、ポートランドにおける若者の課題は大きく、明日を生きるかどうか、という状態の子ども達がたくさん存在するんです。社会のシステムから漏れてしまう人たちこそ、本当にサポートが必要な人だと思っています。」と語るAddieさんに続き、Dannieさんからは、「LGBTの中でも、特にTに対するTransphobiaというものが大きいかもしれませんね。コミュニティ内のマイノリティというか。10年くらい前に、LGBTの人たちが参加できる演劇プロジェクトがあって、当事者同士が思っていても口にしていないお互いに対する気持ちや偏見をセリフにして演じる、というものでした。価値観の違いを共有する、とても良いプロジェクトでしたよ。」とのお話を伺いました。

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スタッフの皆さんと。

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LGBTの理解を求め活動する現役ドラァグクィーン修道女コンビ「Nuns N Roses」の、オリジナルTシャツを発見。「Guns N Roses」のアルバム、良かったなぁ。

続いて、バンに乗り込んで、話題にも出た若年層LGBT専門のセンター、The Sexual & Gender Minority Youth Resource Center(SMYRC)へ。12歳から23歳までのLGBTの子どもであれば、誰でも利用することができるというセンターの中は、さすがキッズスペースというだけあって、カラフルに壁が塗られていたり、あちこちにオモチャや遊び道具が転がっていて、楽しそうな雰囲気。「楽しそうな雰囲気は子ども達が自分たちの手で作っているんです。」と教えてくださったのは、スタッフのNeolaさん。「センターの使い方のルールなんかも、自分たちで決めて壁に貼り出したりしてもらっています。最初は親や里親といっしょに訪問することが多いですが、そのうち一人でやってきて友達たちと遊んで帰って行ったり。基本的には、安心できる空間の提供を第一に置いているので、仲良しの友人であったとしても当事者以外の入室は断っているので、気をつかわずにいられるようです。もちろん、アルコールもドラッグもNGです。」ふと壁際に置いてあるコンドームを見つけた井戸ママは、「セックスはどうなんですか?」と単刀直入に質問。「性教育にも力を入れています。大人になってから、いまは駄目、といっても、必ずセックスはしますよね?ある程度の年齢になれば。であれば、正しい知識を身につけて、自分たちでSTDやHIV/ADISから身を守れるようにしてあげなくてはならない。センターに長く通うお兄さん、お姉さんが、若い子に教えている姿もよく見かけますよ。」

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SMYRCのスタッフ、Noelaさん。

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カラフルなSMYRCのスペース。

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Pokemonならぬ、Condomon!君に決めた!

1年間に600名から700名の子ども達が訪れるというセンターですが、そのうち数割はホームレスとのこと。日本ではほとんど見かけない子どものホームレス問題はポートランドをはじめアメリカの都市部では深刻で、ポートランドのホームレスの45%がLGBTであると報告されています。特にLGBTのホームレスの子ども達は、アルコール、喫煙、ドラッグ、レイプ、犯罪などの危険の非常に近いところに晒されていて、センターがシェルターとしての役割も果たしているそうです。子ども達が自分の身の回りのものを入れておける20個弱のロッカーがあり、洋服のない子ども達が借りることのできるワードローブもあります。さらに、近々、シャワールームや洗濯乾燥機の導入も検討しているとのこと。「ワードローブと言えば、コーナーの部屋には別のワードローブもありますよ。子どもたちにも人気の場所です。ぜひ、トライしてみてください。」というNoelaさんに促され入った部屋は、大小さまざまなゴージャスドレスがぎっしり。ドレッサーも完備され、ウィッグやアクセサリーもあります。トランスジェンダーやクロスドレッサー、クエスチョニングの子ども達だけでなく、ゲイやレズビアンの子もいっしょになって、変身を楽しんでいるそうです。全てはセンターに寄付として届けられたものだそうで、年に1回、みんなが楽しみにする子ども達が参加のドラァグクィーンショーも開催されるとのこと。Noelaさんいわく、ここのセンター出身でコメディアンになったゲイの方がインタビューにて、SMYRCでのショーの経験が人前に出て誰かを喜ばせたい、と思うきっかけでした、と語っていたそうです。

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ホームレスの子ども達が利用するロッカー。

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僕も試着しようと思いましたが、3週間の暴飲暴食で肥大しててダメでした。

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ということで、サングラスだけドラァグクィーン仕様に。

「このセンターにやってくる子どもたちの、一番の悩みは何なんでしょうか?」という井戸さんからの質問に対して、「本当にたくさんの悩みを抱えてやってくるのですが、一番は、LGBTは悪いものだ、というStigmaがあり、誰かに知られてしまうのではないか、知られたらいじめにあうのではないか、親から嫌われたり勘当されたりするのではないかと、常に心が休まるところがないこと。そのプレッシャーに耐えられず、命を絶つ子どもも少なくないんです。自殺の危険が、どの世代よりも高いと思います。」と答えるNoelaさんが、彼女の後ろの壁にかかっている写真を紹介してくれました。「彼ら、彼女らは、ここのセンターにやって来た後、自殺を図り、残念ながら亡くなってしまった子どもたちです。25人くらい子どもがいたとしたら、10人から15人は自殺の危機があるのではないでしょうか?危ない発言などを聞いた子どもに対しては、ケースマネージャーを必ずつけて、かならず話を聞く時間をたくさん持つようにしています。生きろ!というのは逆効果。辛さを受け止め、尊重し、とにかく聞く姿勢をもつこと、特に、当事者同士が支え合えることが大切だと思っています。アートや文化、イベント企画などは、単に子ども達が楽しめるという視点だけでなく、子ども達同士や先輩LGBTがお互いに近づき、若い世代のコミュニティ全体での連帯感やピアサポートのベースを作るという目的が大きかったりもします。」ちょうど、昨日9月10日は世界自殺予防デー。同じように命の危機にさらされている子どもは世界中に。「いのちリスペクト。ホワイトリボンキャンペーン」や「ハートをつなごう学校」など、日本のLGBTの子ども達のための活動が、もっともっとたくさんの人たちの力を集められて、悲しい自殺を無くすことができたらなと心から思いました。

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自殺して亡くなってしまった子ども達を偲ぶ、写真や寄せ書き。

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レインボーの腰掛け階段で、スタッフの方々と。

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ランチのオニオンスープが最高でした。

通訳のFredさんオススメの美味しいランチを挟んで、最後の訪問先は、ポートランド市の人権平等局のオフィスです。New Portlanders Programという、ポートランドに新しく移住して来た人たち、特にマイノリティの人たちのコミュニティをサポートするPoloさんから、プログラムの概要をお話いただきつつ、見るからに存在感もありパワフルな女性お二人のお話をお聞きすることに。一人目は、中国系アメリカンのAimeeさん。自分のことをLGBTQアクティビストと呼ぶ彼女は、女性パートナーと二人の子ども達と暮らすレズビアンで、ただただ自分たちらしく生きて行きたい、子どもの幸せを大切にしたい、という思いで、郡に対してパートナーとの婚姻届を提出し、その受理をめぐって裁判を起こしたそうです。Basic Rights Oregonという団体のサポートを受け、州憲法の改正に向け市民投票にまでこぎ着けたが、結果としては敗北。「それでも闘い続け、世の中に議論を巻き起こすことが、私のミッションだと思ったの。」と明るく語るAimeeさんは、この人ならついて行く!と思わせる、ものすごい人間力をもっています。「市民権に関しては、努力すればマジョリティから理解してもらえると期待しないことね。政治的な、法律的な作戦を練って臨んでいくことが大切なの。どの法律を、どのように変えたら良いか、という作戦がないと何事も前には進まない、というのが個人的な意見。民主的な社会においては、私はあなた達と同じなんです、というメッセージはあまり効かないかもしれません。場合によってアプローチを変える柔軟性がLGBTにも必要だと思います。」

もう一人のパワフルウーマンは、ポートランド市環境課の職員として、水関連のプロジェクトに関わっているというDebbieさん。普段の仕事に加え、Diverse and Empowered Employees of Portland(DEEP)という職員が中心となって立ち上げた団体と、Portland City’s LGBTQ & Friends Affinity Groupという団体、二つの代表を務めている彼女は、ポートランドのレズビアン&ゲイ映画祭の立ち上げメンバーの一人で10年以上役員を経験してきたという、LGBTコミュニティに人生を捧げてきたような方。18年前の1995年には、MTVにて放映され賞を幾つか獲ったというドキュメンタリー番組にて、レズビアンのシングルマザーとして密着取材を受け、公共放送で初めてレズビアンとしてキスをしたそうです。ちなみに、その撮影中に恋人ができ、その頃4歳だった娘が22歳になっているとのこと。そんなDebbieさんの最近の関心事は、若者のリーダーシップ育成。「どんどん時代が新しく変わって行く中で、その都度リーダーとなる人が必要だと思いますが、ポートランドのLGBTコミュニティの若者は、どこか「熱さ」がなくて。それって世界でも同じなのかしら?そろそろ世代交代したいのよね。」二人のパワーに圧倒されて、同じくNew Portlanders Programにも関わりつつ、日系ポートランド人コミュニティを牽引しているというJeffさん、全体進行のPoloさんの発言はほんのわずか。。。打合せが終わり、AimeeさんとDebbieさんと意気投合し熱いハグを交わす、井戸さんと小野ちゃん。どこか置いてけぼりの、その他男子4名。。。Human Rights の世界、どこに行ってもやはり、女性は強し、母は強し、です。

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AimeeさんとDebbieさんと。小さい小野ちゃんが、さらに小さく見えます。

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New Portlanders Programのみなさんと。

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夕食は、またもやシーフード。

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シュリンプカクテルが、本当に美味しかった!

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「Jake’s」は創業100年以上とのこと!

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