第21回 グッド・エイジング・ホーム!!

9月13日(金)
ついに!いよいよ!なんと!今日がオレゴン州ポートランドでの、そして3週間に渡るIVLPの最終日。10時からのアポイントメントが、研修最後の訪問先となります。明日の早朝にはチェックアウトして空港に向かうということで、早めに起きて荷物のパッキング。各訪問先からもらった大量の資料や街ごとのLGBTマップなどを整理しながら、「よく頑張ったね」と自分で自分を褒めてあげつつ、結局一度も活躍することのなかったランニングシューズとウェアをスーツケースの端っこに押し込みながら、「意志の弱い男だ」と自分で自分を蔑みつつ。ロビーに集合した井戸ママ、小野ちゃん、大悟さんも、最後の最後ということで感慨深いものもあり、ちょっと興奮気味の様子。バンに乗り込んだ後も、あれこれ4人でおしゃべりが盛り上がり、気づけば最後のミーティング先のFriendly Houseに到着していました。12年前からプログラムを開始した非営利サービス施設団体であるFriendly Houseは、質の高い教育、娯楽、生活支援サービスを様々な年齢やバックグラウンドの人々に対して提供することをモットーにしていて、子ども向けプログラムから高齢者向け、ホームレス向けプログラムまで取り揃えています。まずは、高齢者及びホームレス向けサービスディレクターのMyaさんが施設内の案内をしてくださいました。元々公民館だった場所を引き継いだ形となっているため、ジムや体育館、フィットネスセンターもあり、午前中が高齢者、昼が小さい子ども、放課後の時間に大きな子ども、というように時間帯をわけで利用しているとのこと。ちなみに施設利用料は、低所得者も考慮して変動式となっているそうです。

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Friendly Houseに到着。でかい!

「それでは具体的なお話をしましょう。」とMyaさんに案内されたのは大きな会議室。施設の歴史や方針の説明を一通り聞き終わった頃、大きな入り口のドアがあいて、ぞろぞろと白髪のおばあちゃんやおじいちゃんが入って来ました。Friendly Houseが連携をしている高齢者LGBT向け団体Services and Advocacy for GLBT Elders(SAGE)のポートランド支部のメンバーの方々とのこと。正直、研修の最後の最後で、LGBTトピックではないMyaさんからの説明を聞きながら、ちょっと残念な気持ちになりかけていたのですが、一気に吹き飛びました。「もともとは高齢者全般に向けてサービスを行っていたのですが、エグゼクティブディレクターがゲイであったこともあり、2年前からSAGEとアライアンスを組んで高齢者LGBTに特化したプログラムを提供し始めたんです。今では100名近くのボランティアの方々がいて、年に1回Gay and Grey Expoとうイベントも企画しているんですよ」とMyaさん。「そんな、私の話はつまらないので、ぜひ、皆さんに自己紹介がてら、これまでの人生について、さっとお話頂きましょう!」

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施設内の様子。この他、バスケットボールができる体育館もあったりします。

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アライアンス先のSAGEのメンバーと。

Grantさんは63歳の素敵なおじさま。弁護士とCPAの資格を持ち、大学卒業後から貿易関係の仕事に従事。日本にも30回近く出張で訪れたことがある国際派ビジネスマンは、47歳の時にFriendly Houseのエグゼクティブディレクターに出会ったことをきっかけにカミングアウトし、妻とも離婚。それ以降ずっとLGBTコミュニティに対して金銭的なサポートをしてきたが、ここ3年は実際にボランティアとしてSAGEに関わるようになったそうです。「自分が自分らしくある、ということは高齢になるにしたがって難しくなってきます。せっかく勇気を出してカミングアウトして頑張って生きて来たのに、またあの頃の自分に嘘をつく人生には二度と戻りたくありません。コミュニティに対して、お金だけでなく自分の手で何か役に立つことが、ゲイである自分にプライドをもって生きることにつながっていると思っています。」とGrantさんが語ると、続いてSharonさんが優しい笑顔で続きます。「SAGEの活動は、とてもとても大切なことだと思うの。世の中にアクセプタンスを作り上げることは、多くの人を救うことになるし、私自身、LGBTであることは人として生まれてきた中で大きな資産だと思っていて、全てのLGBTの人たちがそのように心から思える社会になるべきだと信じています。隣に座っているJoとは、46歳の時にカミングアウトして出会ってから30年いっしょに幸せに暮らしています。感謝してもしきれません。」目に涙をいっぱい浮かべ頑張って話終えるSharonさんの肩に優しく手をかけるパートナーのJoさん、SAGEにてHIVケアのボランティアをしているというゲイのDanさんも、それぞれのライフストーリーを語ってくれました。ボランティアとしてSAGEに関わり、コミュニティを作り上げてきたLGBTの人たちが、高齢期に入った今も活動を続けながら、そのSAGEを通して下の世代のLGBTやアライからサポートも受けているとのこと。年月を越えたギブアンドテイクの形が素晴らしいなと思いました。

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サービスディレクターのMyaさんと井戸ママ。

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30年いっしょに暮らしているという、Sharonさん(右)とJo(左)カップル。パープルはSAGEのイメージカラーとのこと。

「私を含め、ここにいるSAGEボランティアの皆さんの世代は、LGBTであるということを本当に苦しい思いをしながら受け止め、社会のStigmaと対峙しながら生きてきたと思います。あなたたちには、想像できないかもしれないくらい。」と語ってくれたのは、Pegさん70歳。「私の場合も衝撃的だったわ。医学学校に通い始めた最初のクラスで、同性愛は治療法のない精神疾患だと学んだの。脳みそに電気が走る感覚。だって、私自身が子どもの頃から女性のことが好きなんだと感じていたレズビアンだったから。心理療法を受けたりして、変わろうと努力したこともあったし、男の子ともつき合うことができたので彼氏をもったりもした。結婚もした。でも、どうしても女性が好きだという自分の気持ちに嘘はつけなくて、親友に恋をしてしまって。その頃から仲間の医者たちと、レズビアンという精神疾患を直そうとトレーニングをしたりしていたの。今思えば、なんて馬鹿げたことを、という感じだけど、当時は本気だった。そんな私のことに夫が気づいていると感じ、カミングアウトしました。夫は怒り心頭で離れて行ったけど、実は数年後、その夫からも自分もゲイだという告白を受けました。結果的には、レズビアンとゲイが惹かれ合ってたのね。不思議な話。」そんなPegさんの話に大きくうなずく、おじいちゃん、おばあちゃん達。「あなたたちが、こうして、遠い日本からやってきてくれて、私たちの話を聞いてくれるだけで、嬉しくて嬉しくて涙が止まりません。ぜひ、日本でやられている、それぞれの活動に自信と誇りを持ってください。」とSharonさん。その後は、日本のLGBTの状況、僕たち4人の日本での活動のこと、LGBTコミュニティ内での世代間の確執、LGBTの住宅事情、世の中に変化をもたらす鍵など、本当にたくさんのことを語りあいました。

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みんなで記念撮影。Grantさん、かっこいい!こんなおじいちゃんになりたい!

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自分のプロフェッショナルをコミュニティに活かしたい!というPegさんと意気投合。

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Pegさんとは、必ず再会しましょう、と約束しました。

ライフストーリーを語り合う場、それを次の世代に伝えて行く場、というものを日本にもつくりたい。グッドにて進めている高齢期LGBTのインタビュー調査を何らかの形でコミュニティに共有できるようにしたい。そして、グッドが目指している「グッド・エイジング・ホーム」づくりを必ず実現するために、もっと多くのことを具体的に学び、多様な人たち、団体、企業とつながって行きたい。IVLP最後の研修は、そんな思いをより強くするものとなりました。ランチの後は、ポートランドでのプログラムで唯一の文化体験ツアー。広大なコロンビア川沿いの高速道路を1時間ほどドライブし、毎年200万人が訪れるというMultnomah Fallsを見に行きました。189mの高さのあるところから一気に流れ落ちてくる滝からは、ひんやりしたマイナスイオン(だと思う)が溢れでて来ていて、目を閉じた顔にたんまり塗込みます。3週間の疲れが流れ落ちて行くイメージ。ふと横を見ると、Fredさん、Marieさんも、やっと長いお役目を終えることができて一安心、という顔で同じようにマイナスイオンのシャワーを心地良さそうに浴びていました。本当にお疲れさまでした。そしてありがとうございました。

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マイナスイオンたっぷりのMultnomah Falls。

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6人揃って、最後の記念撮影。お疲れさまでした!!

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観光で遊びにきていた高校アメフト部のみなさんと。大きくなれよ〜♥。

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高台から見下ろしたハドソン川。アメリカは広くて大きい。

滝を出発しホテルに戻る前にUnion Stationに立寄り、一足お先にポートランドを出てシアトルに向かうという井戸ママをお見送り。IVLPに参加する直前までオランダにて子ども達と数週間過ごしていたかと思えば、IVLP後もまだ旅を続けシアトルにて留学中の娘さんと再合流するというスーパーママっぷり。頭が下がります。残された3人は、ポートランド初日の夜に夕食を食べた「Jake’s」というシーフードレストランで、改めてお疲れさまでしたディナーを取り、大悟さんとのパトロール中に見つけたキャバレークラブで最後の乾杯を楽しむことにしました。ポートランドで1967年から続くというDarcelle XV Showplaceは、ポートランドで一番有名なドラァグクウィーンDarcelle XVが率いるショーで、彼女のパートナー以外の登場キャストは全員ドラァグクウィーン。1930年生まれ83歳!というDarcelle XVがMC的に舞台に登場して毒舌トークで会場を盛り上げつつ、若手からベテランまでのキャストが懐かしの曲から最新ヒットチャートまで様々な音楽に合わせてダンスやコメディショーを繰り広げるスタイルです。

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Union Stationにてシアトルに向かう井戸ママとバイバイ。

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Darecelle XV Showplaceのショーがスタートです。

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お揃いのドレスで全キャストが並ぶと圧巻。

そんな老舗キャバレーは、仲間の誕生日お祝いのためにやって来た地元の若者グループや、ポートランド郊外の田舎から観光でやってきたノンケカップルがいたり、黄色いポロシャツとカットソーというペアルックで来店している白髪のご夫婦が、代わりばんこにドラァグクウィーンたちにおひねりを渡しにいったりと、とってもアットホームな雰囲気。お酒も進み、興奮した小野ちゃんは、「あたしも、行ってくる!」と1ドル札握りしめてステージ下に突撃し、ドラァグクウィーンの一人におひねりをプレゼント。僕も負けじとステージを降りて観客席にやってきた一人の胸におひねり!そんな二人を、笑顔で見守る大悟さん。Darcelle XVさんのトークは正直、早口すぎて、2割くらいしか中身がわかりませんでしたが、会場といっしょになってショーを楽しむスタイルに3人とも大満足でした。ショーの後に、ペアルック老夫婦とお話をしたところ、なんと二人のデートコースとして毎週のように通っているとのこと。グッドの目指す「グッド・エイジング・ホーム」にドラァグクウィーンショーのキャバレーを併設しましょう!ということではないですが、「Darcelle XV Showplace」のように地元の人たちに楽しみや何かしらの価値を提供もできる、そんな地域密着型の場づくりをできたらいいなと感じた、IVLP最後の夜でした。

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おひねり!ちょっとだけ胸に触れちゃいました。

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83歳現役ドラァグクウィーンのDarcelle XVと。

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毎週のように通っているという地元のおしどり夫婦と。

9月14日(土)
朝4時に起床。もう1日ポートランドに残るということで部屋で寝ているFredさんに心の中でバイバイし、朝4時半にホテルを出発してポートランド空港へ。登場ゲートにてワシントンD.C.に帰るMarieさんともバイバイ。United Airlines 367便にてサンフランシスコに到着し、あと2日延長してサンフランシスコに滞在するという小野ちゃん、大悟さんに大きなハグでバイバイ。そんな感じで、最後の最後は一人きりで成田行きのフライトに乗り込み、3週間の出来事を噛み締めながら帰路につくこととなりました。東京で僕のことを待ってくれている2匹のかわいいワンコ(1匹は多分ドラクエに夢中で、明日の朝に帰国だってことを覚えているかは怪しいですが。笑)にもやっと再会です。。。なんてゆっくり感慨に浸る間もなく、離陸する前に、席について3分で爆睡。機内食も食べることなく、気づいたのは成田到着まであと2時間というあたりでした。

21回に渡る短期集中レポートにお付合いいただきまして、ありがとうございました。他の連載陣の方々がウィットや学びに満ちた素敵なコラムを展開されている中、こんなもの食べました、こんな人に会いました、こんなパトロールしましたと、毎日ダラダラの稚拙な旅日記をお届けするかたちになってしまい、お恥ずかしい限りです。汗。ただ、今振り返ってみても3週間では本当にたくさんのことに触れさせていただき、学ばせていただくことができました。具体的にどんなお役に立てるかはこれからとはなりますが、できる限り多くの日本のLGBTコミュニティの皆さん、アライの皆さんに、今回の経験をシェアさせて頂ければなと思っています。

そこで、宣伝です!

そんなシェア企画の第一弾として、IVLPに参加した4人の研修報告会を兼ねたイベントの開催が決定しました。大阪大学の大北先生をはじめ、日高先生、大畑先生のご協力をいただき、11月2日(土)の夕方から、京阪電車なにわ橋駅構内にあるスペースにて、井戸ママ、小野ちゃん、大悟さん、松中ゴンの4名が勢揃いし、3週間の経験についておしゃべりします。2CHOPOでは書ききれなかった裏話や、小野ちゃんと大悟さんが延長滞在にてサンフランシスコで繰り広げた珍道中まで、盛りだくさんです。関西のみなさま、ぜひ、遊びに来てください!アメリカ大使館の方々とは、東京での報告会も現在計画中です。こちらも決定次第、何らかの形でお知らせさせて頂きます。どうぞ、宜しくお願いします!

【イベント概要】
タイトル:中之島哲学コレージュ「アメリカLGBT事情 国務省研修の報告をもとに」
http://artarea-b1.jp/
※大阪大学と京阪電車が連携して運営している施設となります。
内容:IVLP参加者(井戸まさえ、小野春、松浦大悟、松中権)による研修報告
および質疑応答を兼ねた来場者との対話企画
参加費:無料
事前登録:必要なし(どなたでもご参加頂けます)

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