人が用意したシナリオ・天が用意したシナリオ

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みなさん、あけましておめでとうございます(今さら……)。
執筆者が増えて、サボリが目立たなくなったのをいいことに、長い間、お休みしてしまってごめんなさい。
これからは! 定期的に原稿書き(たいと思い)ます!

なんて挨拶と決意表明はこの辺にしておいて……。

今回、本当は「ソチ五輪のアタシ的イケメンチェック」みたいな記事にしようと思っていたの。

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トリノ五輪の頃からオカマたちに騒がれていたスピードスケートの加藤条治くんとか

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スキーの清水礼留飛くんとか

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今回のアタシのイチオシ、ハーフパイプの平岡卓くん(平野くんもかわいいけど)とか。

でもね……女子フィギュアのフリーを観たとたん、全部吹っ飛んだわ。

いやあ、今回の闘いはすさまじかった。
ここ一番という時には必ず自爆していた性格美人・コストナーのほぼノーミスの演技。
大変なプレッシャーを抱えながらも、パワフルな演技を見せてくれたソトニコワ。
転倒はしてしまったけれど、柔軟性と可憐さで魅了してくれたリプニツカヤ。
いつもながらの省エネプログラムだけど、長いブランクがあったにもかかわらず、ほぼノーミスだったキムヨナの心臓の強さ。
あまり印象には残ってないけど、ワグナーとゴールドも素晴らしかった。
足の故障を抱えながらも入賞を果たした鈴木明子、五輪初出場の村上佳菜子も、よく頑張った!

だけどやっぱりね。
一日で、もはや語りつくされた感もあるけど、浅田真央は別次元だったわ。
アタシ、昨日はずっと、仕事の合間に真央の演技を観ては泣き、演技終了後の真央や佐藤信夫コーチの表情を見ては泣き、真央に声援を送る羽生くんの映像を見ては泣き、


ネットで「各国のスケーターが真央の演技を絶賛」とか「佐藤コーチが、『何かあったら先生が助けに行くから』と送り出した」とかいったエピソードを読んでは泣いていたわ(仕事に集中しろ)。
完全に感情と涙腺が崩壊……。

ここから先は、アタシの感情がほとばしりすぎて、松●修●並みに暑苦しい内容になると思うけど、勘弁してちょうだい!

「アタシがどれだけ真央を愛しているか」については、過去のコラムにも書かせていただいたけど、長年にわたって真央を愛し、何度も彼女が起こす奇跡を目の当たりにしてきたアタシでも、ショートの後、呆然自失の表情で「自分でもまだ……何もわからないです」と呟く真央を見た時には、大きなショック受けたわ。
そんな真央を見るのは初めてだったから。
最近、物忘れがどんどん激しくなってきて、何かに落ち込んでも一時間くらいしかもたないアタシだけど、もし真央と同じような状況に陥ったら、下手すると一生、引きずってしまうかもしれない。
それなのに、24時間も経たないうちに、あんな奇跡的な復活を遂げるなんて、ほんと、なんて娘なのかしら。アタシ、フリーは行きつけのバーで観ていたんだけど(一人で観る勇気がなかった)、真央の演技を観ながら何度も「すっげえ女だな」って呟いちまったわよ。

何もかもお膳立てされた状態で輝ける人は、いくらでもいる。
でも、絶望のどん底で輝きを放てる人は、そうはいない。
「どうにもならない状況に立たされても、とにかく目の前のことにベストを尽くす」って、言葉でいうのは簡単だけど、なかなかできることじゃないわよね。

アタシはちょっとした運命論者で、「この世での『成功』や『失敗』は、その人の成長にとって必要なら与えられる」と思っているの。それらはあくまでも成長のための材料にすぎなくて、生かすも殺すもその人次第。「成功」を淡々と謙虚に受け止めたり、「失敗」を反省材料として前向きに受け止めたりできれば、この上ない心の鍛錬になるけど、「成功」しておごり高ぶったり、「失敗」の責任を他人になすりつけたりすれば、せっかくの成長の機会を逃してしまう。
真央は本能的に、「成功」や「失敗」との付き合い方を知っているような気がするわ。

しかし真央ってつくづく、一筋縄でいかない人生を背負わされているんだなあと思うわ。
本人の意図しないところで、すべてがいちいちドラマチックになってしまうんだもの。
今回に関して言えば、「最後」と決めた五輪のフリーでトリプルアクセルを決め、久々に3-3を跳び、6種8トリプルという前代未聞の偉業を成し遂げ、順位を一気に10も上げた(しかも曲は、ラフマニノフが極度のスランプから抜け出すきっかけとなった『ピアノ協奏曲第2番』)というだけでも十分ドラマチックだけど、ショートであれほどのことがなければ、おそらくフリーでここまでの感動はなかった。
もし抽選でソトニコワの直後、しかもトリという最悪な滑走順をひきあてなければ、ショートであそこまで崩れることはなかったかもしれないし、万が一ショートでミスをせず、メダルが狙えそうな位置についてしまったとしたら、真央のことだからきっと萎縮してしまって、今回のような演技はできなかったかもしれない。
もっといえば、バンクーバーで完璧な演技をして、(いずれにせよ、政治的な力関係で無理だったかもしれないけど)金メダルを獲っていたら、おそらくみんながここまで心を震わされることはなかった。
なんかもう、すべてが今回の感動へ向かうための、天が用意した壮大なシナリオだったんじゃないかとさえ思うわ。
真央がこれだけ多くの人に、素直に「ああ、メダル獲れなくても、いいものはいいんだ」と感じさせたのは、ものすごい快挙じゃないかしら(もちろん、だからといってすぐに「メダル=目に見える結果」偏重の傾向が変わるとは思わないけど)。

そして今回、真央がやってのけたことが、もう一つあるの。

フィギュアファンならよくわかっていると思うけど、フィギュアの採点の不透明さはどんどんひどくなっているわ。そして真央は、まるで「他の選手に不可能な、難しいことはするな」と言わんばかりのジャッジやルール改正に、ずっと虐げられ続けてきた(あくまでもアタシの主観)。
だからアタシを含め、おそらく真央ファンの多くは「ソチ五輪では、点数なんてもう関係ない」「真央自身が納得のいく演技をしてくれればいい」「完璧な『ピアノ協奏曲』が観たい」と願っていたんだけど、でもショートが終わるまでは、アタシたちも(おそらく真央自身も)、やっぱり点数やメダルに縛られていたのよね。「完璧な演技が観られて、しかもメダルが獲れればいいなあ」と心のどこかで思ってた。実際アタシ、「ロシアのタラソワコーチにかわいがられている真央なら、勝機があるんじゃないか」と思ってたし。
でも、フリーの最終グループを観ているうちに、自分がいかに甘かったか、痛感したわ。

真央がメダル争いに巻き込まれておらず、冷静に観られた分、今回はアタシ、途中ではっきりわかった(気がした)のよ。「ソトニコワかリプニツカヤ、出来の良かった方に金」「銀と銅は、(平昌五輪やスポンサーのことを考慮して)キムヨナか、縁の深いヨーロッパのコストナー、あるいはロシアのもう一人の選手に」「アメリカはロシア以下、入賞できる順位に」「日本は、男子が金とったから、まあいいだろ」といったシナリオが、あらかじめ用意されていたんじゃないかって。そりゃロシアが、優秀な選手が何人もいるこのタイミングで、自国開催の五輪で外国選手に金メダルなんか与えるわけないわよね。国の威信にかけても。
つまり、真央がショートで失敗しようがしまいが、日本女子は最初から、メダル争いの蚊帳の外に置かれていた可能性が高いと思うのよ。

ところが、真央がまさかの神演技をし、ある程度の点数をあげなきゃいけなくなったもんだから、シナリオ通りに事を進めるには、最終グループの各選手(どの選手も、難易度は真央より低い)に、明らかに不自然な点数をつけざるをえなくなってしまった。真央が一ミスでもしていれば、少しは言い訳する余地があったんだけどね。
つまり真央は、人々を演技で感動させつつ、図らずも今のフィギュアの採点のあほらしさを白日の下にさらしてしまったわけ(まあ、気づいていない人も多いかもしれないけど)。
ほんと、恐ろしい娘よ。

素人のアタシでさえそんな風に思うんだから、真央を始め選手たちも当然、「フィギュアのルール改正は恣意的であり、(特に五輪での)採点は、実力よりも政治力や金に左右される」ってことを認識しているはず(まあ、あくまでも想像だけど)。
現在の女子フィギュアにおいて点数を稼ごうと思えば、バンクーバーのキムヨナのように、技の難度を落としてミスなく無難にまとめ、加点を多くつけてもらうという道を選ぶこともできた(実際、今回のショートの上位3人は、ほぼ同じような構成だったし)。でも真央はかたくなにトリプルアクセルにこだわり、自分の演技にこだわった。
それを「頑固」「馬鹿」という人もたくさんいたけど、相手の土俵に完全に乗ってしまったら、仮に表面的な成功を得られても、一人の「フィギュアスケート」技術者として、心が満たされることはない。バンクーバー五輪の前あたりから、真央はそう悟り、「自分の道をいく」と覚悟を決めたような気がするの。

そして、押し付けられたルールや点数に心を折られたり、あるいは「自分のやりたいこと」を抑えて、泣く泣く従ったりしてきた他の多くの選手たちにとって、どんなに点数を抑えられても、信じた道を突き進む真央は、自分の本心の代弁者であり、希望だったんじゃないかしら。
真央の演技に対して、海外の選手たちからあれほどの賛辞が送られたのは、その表れだと思うのよ。
ちなみに今、さっそくいくつかの国の間で「採点の公正さ」をめぐって議論が起きているようだけど、そんな争いに巻き込まれず、すがすがしい感動と勇気だけを受け取ることができて、申し訳ないけど、アタシたち(誰?)、ラッキーだわ。

真央。
長い間、お疲れ様。
もし引退を決めているなら、それは残念だけど、アタシはアンタをもう、これ以上あほらしい世界で戦わせたくない。
世界選手権も、もう出なくていいと思うわ(自分がチケット取り損ねたから言ってるわけじゃないのよ)。
娘ほどの歳のくせに、たくさんのことを教えてくれて、泣かせてくれて、本当にありがとう。
しばらくはゆっくり休んで、一人の人間として、今後の人生、幸せに生きてちょうだい!

 2014/02/23 08:00    Comment  コラム   オリンピック              
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